成人の重症肺炎サーベイランス構築に関する研究

文献情報

文献番号
201318055A
報告書区分
総括
研究課題名
成人の重症肺炎サーベイランス構築に関する研究
課題番号
H25-新興-指定-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大石 和徳(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 青柳 哲史(東北大学病院)
  • 石岡 大成(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 大日 康史(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 笠原 敬(奈良県立医科大学 感染症センター)
  • 木村 博一(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 金城 雄樹(国立感染症研究所 真菌部)
  • 高橋 弘毅(札幌医科大学 医学部)
  • 武田 博明(済生会山形済生病院)
  • 田邊 嘉也(新潟大学医歯学総合病院)
  • 常 彬(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 西 順一郎(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 藤田 次郎(琉球大学大学院)
  • 丸山 貴也(独立行政法人国立病院機構三重病院)
  • 山崎 一美(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター)
  • 横山 彰仁(高知大学 医学部)
  • 渡邊 浩(久留米大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
29,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、1)全国的に均一性の高い侵襲性肺炎球菌感染症(IPD), 侵襲性インフルエンザ菌感染症(IHD)のサーベイランス体制を構築し、小児及び成人の発生動向、病態を明らかにし、2)成人における人口ベースのIPDの罹患率を算出する体制を構築し、分離菌株の血清型決定を行い、IPDの血清型分布を明らかにする。さらには、IPDサーベイランスから今後の小児及び成人における肺炎球菌ワクチン接種による影響を評価し、3)成人における人口ベースのIHDの罹患率を算出する体制を構築し、IHD患者の原因菌の莢膜血清型と莢膜遺伝子を決定し、莢膜株か、true non-typable H. influenzae (NTHi)かを明らかにすることである。
研究方法
平成25年4月から平成26年3月までの感染症発生動向調査の届出症例情報から、疫学的情報を解析し、さらに本研究班に参加する10道県の代表性を検証した。
結果と考察
期間中の総報告症例数は侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal diseases: IPD)は 1,481例、侵襲性肺炎球菌感染症(invasive Haemophilus influenzae diseases: ここではIHDとする)は159例であった。致命率はIPDが7.4%、IHDが6.9%であった。
総人口に対するIPDの罹患率(10万人年)は1.15であるが、5歳未満の小児においては6.13、65歳以上の高齢者では2.43であった。一方、総人口に対するIHDの罹患率(10万人年)は0.12であるが、5歳未満の小児においては0.51、65歳以上の高齢者では0.29であった。IPD, IHDのいずれも人口当たり罹患率は5歳未満の小児が高いものの、致命率は高齢者に多い傾向であった。また、IPDは小児では菌血症が多かった。高齢者では菌血症を伴う肺炎が多く、髄膜炎は若年成人~壮年層(15歳以上65歳未満)に多く見られた。IHDは小児では菌血症が多かった。また、高齢者における菌血症を伴う肺炎例が多いことが初めて明らかになった。
発症時期はIPD、IHDいずれも4~5月と11~12月に多く見られた。本研究班に参加する10道県は、その他の37都府県と比較して罹患率、臨床像の分布、性別や年齢の構成において、全国を代表していると考えられた。
上五島コホートでは、人口21,000人の唯一の有床医療機関である上五島病院において、平成25年9月~12月に28例の成人肺炎症例を登録し、うち1例のIPD(菌血症を伴う肺炎)、4例の菌血症を伴わない肺炎球菌性肺炎を検出した。1例のIPD, 2例の肺炎球菌性肺炎の原因菌はそれぞれ血清型3と血清型3,11A/Eであった。
平成25年度の10道県におけるIPDの原因菌の61株、IHDの原因菌の4株が収集され、血清型を決定した。成人IPD 64例 (うち髄膜炎 16 症例) から分離された肺炎球菌のうち、血清型3が17例、22Fが7例、15A 6例、6C 5例,19A, 23Aはそれぞれ4例、10A, 11A/E, 19F, 24F,35B,38による症例はそれぞれ2例で、15B, 15C,23F, 33F, による症例がそれぞれ1例であった。成人用23価肺炎球菌ワクチン(PPV23)によるカバー率は65.6%であり、小児用7価(PCV7)及び13価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV13)のカバー率はそれぞれ10.9%, 45.3%と低率であった。成人のIPDにおいても小児におけるPCV7の公費助成及び定期接種化に伴う集団免疫効果の影響が示唆された。
成人のIHD 4例(いずれも菌血症を伴う肺炎)から分離されたインフルエンザ菌は、抗血清による凝集試験、PCRによるbexBの検出から、いずれもtrue NTHi株と判明した。小児におけるHibワクチンの公費助成及びその後の定期接種化に伴う集団免疫効果によりインフルエンザ菌の血清型の変化が起こっていることが示唆された。
結論
今回、平成26年度に得られた分離菌の血清型検査成績は、未だ予備的調査結果であることから、次年度以降の成人におけるIPD及びIHDの患者発生動向並びに原因菌の血清型の変化の推移を監視する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201318055Z