効果的かつ包括的リスクコミュニケーションの基盤構築に関する研究

文献情報

文献番号
201318049A
報告書区分
総括
研究課題名
効果的かつ包括的リスクコミュニケーションの基盤構築に関する研究
課題番号
H25-新興-一般-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
丸井 英二(順天堂大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀口 逸子(順天堂大学 医学部)
  • 吉川 肇子(慶應義塾大学 商学部)
  • 城川 美佳(富山大学 医学部)
  • 高木 彩(千葉工業大学 社会システム科学部)
  • 早坂 信哉(大東文化大学 スポーツ健康科学部)
  • 山崎 瑞紀(東京都市大学 メディア情報学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)行政が必要とする情報発信時のチェックリストやマニュアルの見直しおよび作成をすること。2)研究期間中のメディア報道を検証し問題点を把握すること。3)感染症のリスコミに必要不可欠な住民の知識やニーズ、リスク認知の把握すること。4)情報弱者である在日外国人の感染症情報ニーズとその対応の把握のための資料を収集すること。
研究方法
1)感染症リスクコミュニケーションの事例及び文献の検討を通して、感染症の専門家向けのリスクコミュニケーションの資料作成を行った。その際、感染症の専門家からのニーズ、また現場での活用方法について、専門家からヒヤリングを行いながら、実施した。
2)日経テレコンデータサービスを利用し、新聞4社(日経、朝日、毎日、読売)の9つの感染症に対する記事検索(見出し内容)を2013年4月1日(14週)から2014年3月2日(9週)にかけて週ごとに実施した。
3)平成26年1月及び2月に消費者パネル20~60歳台を対象に同一対象者約2000名の回収を見込みWebを利用した質問紙調査を実施した。内容は、感染症10疾患の危険性やイメージについてである
4)医学中央雑誌WEB版を用いて、「在日外国人」「感染症」をキーワードとして2009年以降に発表された論文を検索した。国際交流支援を目的とした自治体担当部署および民間組織5団体の相談窓口担当者を対象に、過去1年間における在日外国人からの感染症に関する相談・問合せの有無とその傾向、および相談対応の概要、各団体で実施している感染症情報の提供の手段および情報についてインタビュー調査を実施した。
結果と考察
1)感染症の専門家が、リスクコミュニケーションを行うにあたって必要となるコミュニケーション心理学の基礎知識を啓発する資料を作製した。特に危機的な状況におけるクライシスコミュニケーションの手引きを、感染症のクライシスに適合するように作成した。食品由来の感染症のリスクコミュニケーションを学ぶための教材を作成した。
2)感染症別の新聞記事分析によって、各感染症とも流行だけでなく、議会等で対策が予算化される際に報道が見られることがわかった。RSウィルスに関しては、報道は見られなかった。
3)感染症の用語を知らないのは「手足口病」「ダニ媒介感染症」が3.2%から3.7%の範囲であった。「危険である」とされたのは、HIV/AIDSが最も多く40%を超えていた。一方、「手足口病」「風疹は」第1回、第2回ともに20%を下回っていた。2回にわたる調査では、1か月間の間隔で、イメージ等が劇的に変化する傾向は見られなかったが、「感染症で死に至る」の割合は低く、現実と感覚(認知)とのかい離が見られたと思われる。また、「HIV/AIDS」に対する「死に至る」イメージが他の疾患よりも高く、それよりもリスクが高い疾患に対する認識と異なっており、各々の感染症のリスクを相対的に情報提供していく必要があるのではないかと考えられた。
4)文献は、実態を把握したもの、知識・理解を把握したものに2群された。多くの文献は結核、およびHIV/AIDSに関連したものであった。また、寄生虫疾患に関連するものも散見された。1地域以外では過去1年間に在日外国人からの感染症に関する相談を受けた経験を持たなかった。そのため、相談があった際の対応は検討されていなかった。他方、能動的な情報提供は、日本人向けの情報を多言語化しているとの回答が得られ、また年に1回程度、広報誌に掲載するとの回答であった。在日外国人の感染症に対する知識は、日本人のそれとは異なっている可能性がある。しかし、能動的に提供されている情報から、感染症に対する認識や理解が日本人と同様と考えていることが推察された。
結論
教材によって、感染症情報提供者である自治体、研究者のリスクコミュニケーション能力の向上につながり、基盤が構築される。情報を継続的に精査することが危機管理の一助となる。また感染症のリスクと認知とのかい離がみられたことから、情報提供の在り方について再考しなければならない。在日外国人への情報提供については更なる研究が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201318049Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,048,000円
(2)補助金確定額
5,048,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 296,668円
人件費・謝金 2,077,011円
旅費 1,452,551円
その他 73,770円
間接経費 1,148,000円
合計 5,048,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2014-05-30
更新日
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