真菌感染症の病態解明及び検査・治療法の確立とサーベイランスに関する研究

文献情報

文献番号
201318042A
報告書区分
総括
研究課題名
真菌感染症の病態解明及び検査・治療法の確立とサーベイランスに関する研究
課題番号
H25-新興-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
河野 茂(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 感染免疫学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所 真菌部)
  • 三鴨 廣繁(愛知医大病院 感染制御部)
  • 谷口 修一(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 血液内科)
  • 渋谷 和俊(東邦大学医学部 病院病理学講座)
  • 槇村 浩一(帝京大学大学院医学研究科)
  • 比留間政太郎(御茶ノ水アレルギー研究所)
  • 望月 隆(金沢医科大学 医学部)
  • 亀井 克彦(千葉大学真菌医学研究センター)
  • 川上 和義(東北大学 大学院医学系研究科感染分子病態解析学分野)
  • 宮崎 泰可(長崎大学)
  • 山越 智(国立感染症研究所 真菌部)
  • 掛屋 弘(大阪市立大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
15,811,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における真菌症対策において、他先進諸国と比較して疫学情報や診療指針が不足している。したがって、本研究班では病態の解明や診断治療法の研究と共に情報発信のためのサーベイランスネットワークの構築・維持、ならびに、ガイドラインの充実によって真菌感染症の診断治療を充実させることを主たる目的とする。
研究方法
各分担研究者は、深在性真菌症や皮膚真菌症における、診断検査、病態解析、新規抗真菌薬開発のそれぞれの専門領域で問題となる課題に対し、臨床と基盤研究グループとが連携して、解決をはかるための研究を推進する。具体的には、疫学調査や、ガイドライン等に記載すべき診断・治療方法の確立を目指した応用研究を行いエビデンスの創成を図る。
結果と考察
疫学調査・サーベイランスネットワークの構築・維持として、(1) 輸入真菌症の発生動向調査を行った。(2) 造血幹細胞移植領域における侵襲性カンジダ感染症の調査研究を行った。(3) 病理組織診断ネットワークを運用し、真菌症診断支援を実施した。(4) 格闘技選手、学校内、家族、友人の間で流行しており、真菌症新興感染症の一つとして問題となっているTrichophyton tonsurans感染症に関して実態調査、追跡調査、集団検診を施行した。(5) Trichophyton tonsurans感染症に対して作成したガイドラインに基いた治療の成功率について検討した。
診断法の構築・検討として、(1) カンジダ血症におけるβ-D-グルカン値と予後との関連について検討した。(2) ISH (in situ hybridization) 法において、Pseudallescheria属の検出を目的としたFluorescein isothiocyanate (FITC) 標識 アンチセンスPeptide Nucleic Acid (PNA) プローブを新たに作成した。(3) 新規ヒストプラズマ抗原を用いたELISA法の有用性について、臨床検体を用いた検証を行った。(4) T. tonsurans特異的LAMP系を臨床検体に適用するために、反応時間の加速・感度向上などを目的としてLoop primerを開発した。(5) TOF-MSを用いたMalassezia属同定のためのデータベースを開発した。(6) T. tonsuransの迅速同定法としての硬膜胞子様構造物鏡検法の有用性を検討した。(7)新たに真菌として再分類されたMicrosporidia(微胞子虫)の培養・検出法を確立し、診断法・抗真菌薬感受性測定法および感染病態メカニズム解析の基盤構築した。
病態解析・開発研究として 、(1) 主要原因真菌であるAspergillus fumigatusの細胞外蛋白質のうち、病原性に関与し治療薬標的になる候補としてシグナルシークエンストラップ(SST-REX)法により網羅的に同定し、複数のタンパク質についてELISA検出方の評価を行った。(2) Cryptococcus neoformansの肺感染モデルを用いて免疫学的解析を行い、今年度はIL-17Aとtype ⅠIFNの役割についてそれぞれの遺伝子欠損マウスを用いた検討を行った。(3) クリプトコックス特異的T細胞抗原受容体遺伝子を発現するトランスジェニックマウスの作成を行い、並行してクリプトコックス感染免疫応答機序の解明を行った。(4)Candida glabrataにおいて多剤耐性を獲得する新たな遺伝子変異の同定を行った。(5)T. tonsurans感染症の発症機序に関する各種サイトカインの動態の解明を行った。(6)T. tonsurans感染症の臨床症状について解析を行った。
ガイドラインに関しては、(1) 深在性性真菌症診断・治療ガイドライン2014年版のパブリックコメントの募集を行い、2014年に出版を行ったした。(2) 2012年度に公表した「Trichophyton tonsurans感染症 ブラシ検査・治療・予防のガイドライン第5版」の評価を行った。
結論
深在性真菌症、皮膚真菌症共に発生動向や患者数などの疫学調査はサーベイランスネットワークを維持し、特に重篤な糸状菌感染症やトリコフィトン・トンズランス感染症など感染性の高い疾患について今後も継続する必要がある。
診断法として、ISH法を用いた診断法やT. tonsuransの迅速同定法として硬膜胞子様構造物の観察の有用性を検討するなど新たな診断法については今後も検討が必要である。
上記の調査・研究より得られた結果を基にガイドラインの改訂や評価を行っていく。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201318042Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,601,000円
(2)補助金確定額
16,601,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 11,770,270円
人件費・謝金 2,582,232円
旅費 951,620円
その他 509,221円
間接経費 790,000円
合計 16,603,343円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
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