医療機関における感染制御に関する研究

文献情報

文献番号
201318039A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関における感染制御に関する研究
課題番号
H25-新興-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
八木 哲也(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 荒川 宜親(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 中澤 靖(東京慈恵会医科大学 感染制御科)
  • 柴山 恵吾(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 荒川 創一(神戸大学 大学院医学系研究科)
  • 中村 敦(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 村上 啓雄(岐阜大学医学部附属病院 生体支援センター)
  • 飯沼 由嗣(金沢医科大学 臨床感染症学)
  • 藤本 修平(東海大学医学部 基礎医学系生体防御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)カルバペネマーゼ耐性腸内細菌科細菌(CRE)などの多剤耐性菌、クロストリジウム・ディフィシル強毒株は、国内での検出事例はまだ少ないものの、適切な感染対策についての情報の普及は喫緊の課題であり、内外の疫学情報や感染対策についての知見を集約して医療機関で活用できる資料集を作成する。
2)こうした耐性菌対策において、保健所や地方衛生研究所などの行政機関も含めた連携の強化、加算1-1、1-2連携強化につながる補助ツールの作成を行う。
3)2007 年に起案した「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(案)」の改訂を行う。
4)毎年流行がありアウトブレイクの報道も見られる、インフルエンザ(INF)、ノロウイルス感染症(NVI)に対する対策について内外の知見をまとめ、医療施設で活用できる資料を作成する。

研究方法
1)多剤耐性菌については、地域連携において検出された耐性菌の耐性機序解析支援を行うと共に、海外における感染対策やアウトブレイク事例の知見を集約する。クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)については、国公立大学附属病院感染対策協議会(国公大協)を基盤として、CDIの疫学研究を行うと同時に、国内外での感染対策についての知見を調査した。
2)地方衛生研究所等における薬剤耐性菌の検査体制は他の病原体にくらべ体系化されていないため、その原因について検討を行った。また、高水準の地域連携を実現している岐阜県での活動を調査し、感染制御地域連携サーベイランスシステムの仕様を考案した。
3)新しい知見を取り入れ加筆した。
4)INF研究では、国内の加算1、2施設でのINF院内感染対策の現状について調査を行った。NVI研究では、迅速診断検査法の開発及び地域における流行状況の情報共有システムを構築した。
結果と考察
1)CREについての海外からの報告例をまとめ、疫学・検出等についてのFact sheetを作成した。また海外でのアウトブレイク事例を集約すると重要な感染対策は、積極的保菌調査、保菌者と医療従事者の厳密なコホーティング、手指衛生の強化、環境消毒の強化、スタッフ教育と感染対策遵守率の継続的モニタリング、患者のクロルヘキシジン浴、環境培養の実施、適切な洗浄・消毒管理に集約された。地域連携活動としての耐性菌解析支援により、血液培養から検出された多剤耐性菌を解析し、2種類のカルバペネマーゼを産生するAcinetobacter soliであることが判明した。CDI研究では、国公大協の27施設の参加を得て、CDIの発生率、リスク因子の探索、菌株の分子疫学的調査を目的とした我が国初の前向き疫学研究が開始された。また、強毒型CDIを想定した感染対策について、重症化因子や新しい治療法も含め海外での知見の集約を開始した。
2)地方衛生研究所は歴史的に見て、医療法が基礎となり医療安全の中に含まれる院内感染とは異なり、感染症法に基づいた市中感染症に対する検査体制を整備してきたことが判明した。公衆衛生学的にも大きな問題である薬剤耐性菌問題に柔軟に対応できるよう、希望する研究所には検査の技術的な支援を行った。岐阜大学の活動調査に基づき、加算1-1、1-2施設間で連携活動に必須である感染対策のプロセスとアウトカムを評価するサーベイランス項目を抽出し、集計作業を軽減でき、地域から全国規模でも適用が可能なシステム仕様を設計し、構築のための費用概算を行った。
3)近年の新たな知見と、感染制御の地域連携ネットワークについての項目を加え改訂作業を継続し、次年度完成を目標とした。
4)INF院内感染対策としてワクチン接種はほぼ全ての施設で実施されていたが、曝露後患者や職員への予防投薬基準、INF様症状を呈した職員の就業制限や勤務状況、集団発生の判断基準や保健所への届出基準、近隣施設への援助要請基準にはばらつきを認めた。対策の均てん化に向けた資料作りが必要と考えられた。NVIの迅速診断法として、LAMP法と組み合わせる遺伝子抽出法を改良した。また、地域連携を活用した情報共有システムを構築し、流行状況に合わせた段階的な感染対策について情報収集した。
結論
 CREを含めた多剤耐性菌対策・強毒型CDI対策については、疫学研究も進めながら、内外の知見を集約する資料作成作業を開始、継続した。同時に薬剤耐性菌対策への地方衛生研究所等の行政機関の参加への支援を行い、感染対策の地域連携ネットワーク活動を支援するサーベイランスシステムの仕様を構築した。さらに「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(案)」も改訂作業を継続した。INF・NVI対策については、適切な感染対策の標準化を行うことが重要と考えられ、そのための資料作成と普及を目指して作業を開始した。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201318039Z