文献情報
文献番号
201318020A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-1感染拡大を阻止するワクチンならびに抗体医薬等の開発基盤の確立
課題番号
H23-新興-一般-027
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
田中 勇悦(国立大学法人 琉球大学 大学院 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 長谷川温彦(東京医科歯科大学 大学院 医歯学総合研究科)
- 藤猪英樹(国立大学法人 琉球大学 大学院 医学研究科)
- 伊藤 守(公益財団法人 実験動物中央研究所 )
- 上里 博(国立大学法人 琉球大学 大学院 医学研究科 )
- 松崎 吾朗(国立大学法人 琉球大学 大学院 医学研究科)
- 新川 武(国立大学法人 琉球大学 大学院 医学研究科)
- 樋口 雅也(国立大学法人 新潟大学 医歯学総合研究科)
- 前田 洋助(国立大学法人 熊本大学 大学院 医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
23,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、我が国におけるHTLV-1感染拡大を阻止するための政策に寄与するため、“ワクチンや抗体医薬等によるHTLV-I感染防御法の開発基盤”を確立することを目的とする。現在、我が国のHTLV-I感染者数は未だ100万人を超え、特に大都市部では感染者の増加が問題視されている。主に母乳を介する母子感染の他にも水平感染感染に対する対策が早急に必要である。しかし、HTLV-I感染拡大を阻止するワクチンや医薬は未だに開発されていない。このような背景において、本研究班員らがこれまで蓄積してきたHTLV-I感染防御に関するノウハウと他の研究領域の専門家の経験と知恵を生かし、“HTLV-I感染拡大阻止の実現”のためHTLV-I感染防御ワクチン、抗体医薬等の開発基盤を確立する基礎研究を行うことで目的を達成しようとしている。HTLV-Iの感染拡大阻止を実現するワクチンや抗体医薬等の開発基盤を確立する本研究の成果は、現在日本が進めるHTLV-I感染症対策に大きく貢献することと期待される。
研究方法
班員全員がそれぞれの研究機関において、試験管内および実験動物を用いてHTLV-I感染実験やワクチンによる免疫誘導実験を行った。全ての研究は各研究機関のバイオハザード委員会、動物実験委員会、遺伝子組換え生物等使用実験安全委員会、臨床試験倫理委員会等の承認を得て行った。ヒトの細胞材料入手は提供者の同意を得て、その人の利益ならびに人権保護につとめるようサンプルとデータの取り扱いに十分配慮した。
結果と考察
本研究目標を実現するために、ワクチンの標的とすべきHTLV-I抗原はHTLV-Iのエンベロープgp46であるという結論に到達しそれを動物実験レベルで検証した。能動ワクチンの作出研究は現在も進行中であるが、受動免疫ワクチン候補として、HTLV-I特異的中和活性とADCC活性を同時に有するラット由来単クロン抗体LAT-27のヒト化を試み、HTLV-I感染防御能を有するヒト化抗体 (hu-LAT-27)の開発に成功した。全で中和能の高い中和抗体を誘導できる能動ワクチン候補の作出については今後も継続した研究が必要である。本研究で新規に開発したヒト型抗HTLV-Igp46中和/ADCC抗体(hu-LAT-27抗体)を用いて動物をHTLV-I感染から完全に防御できることを検証できた。
結論
HTLV-I感染抑制には、HTLV-I envelope gp46に対する中和抗体とADCC抗体がそれぞれ第1次エフェクターそして第二次エフェクターとして協調的に働くことが分かってきた。このような抗体を効率良く誘導できる能動ワクチンについてはgp46のアミノ酸配列191-196を含むペプチドワクチンが候補として挙げられる。また、受動ワクチンとしてはヒト化LAT-27が現在のところ最も有力な候補である。したがって、hu-LAT-27をHTLV-Iキャリア妊婦やハイリスクの未感染者への受動ワクチン応用を想定した動物実験や臨床試験を目指した研究が今後の新たな課題となる。
公開日・更新日
公開日
2015-03-31
更新日
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