文献情報
文献番号
201318016A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-1感染症の診断法の標準化と発症リスクの解明に関する研究
課題番号
H23-新興-一般-016
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
- 山口一成(熊本大学発生医学研究所)
- 渡邉俊樹(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
- 岡山昭彦(宮崎大学)
- 佐竹正博(日本赤十字社 中央血液研究所)
- 出雲周二(鹿児島大学 医歯学総合研究科)
- 鴨居功樹(東京医科歯科大学)
- 齋藤滋(富山大学大学院)
- 大隈和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
- 高起良(JR大阪鉄道病院)
- 内丸薫(東京大学医科学研究所)
- 山野嘉久(聖マリアンナ医科大学)
- 魚住公治(国立病院機構鹿児島医療センター)
- 緒方正男(大分大学医学部)
- 長谷川寛雄(長崎大学附属病院検査部)
- 宇都宮與(慈愛会今村病院分院)
- 岩永正子(帝京大学大学院)
- 相良康子(日本赤十字社 九州ブロック血液センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
30,679,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
HTLV-1検査は、2次検査のWestern Blotting検査の結果で判定保留となる場合が少なからず存在し、それらの判定保留の判定にHTLV-1核酸検査が期待されている。平成25年度は、①標準品細胞TL-Om1について、核酸検査標準品としての特性に関する解析を進める。②標準品と参照品を多施設で測定し、標準品と参照品の測定値をもとに施設の補正値を算出する。③妊婦検診のWestern Blotting 判定保留検体に対して核酸検査を行い、核酸検出率を解析し、判定保留対策として核酸検査の有用性を検討する。また、十分に解析が行われていないHTLV-1の水平感染の実態を明らかにする。さらに、JSPFADマテリアルバンクの検体を用いたキャリアからのATLの発症リスクの検討を行う。
研究方法
1)HTLV-1核酸検査の標準化
標準品はCFSE染色したTL-Om1をPBMC (AllCells)で希釈し、測定用検体を準備した。参照品はTL-Om1およびJurkatのゲノムDNAとした。また板橋班と協力して、妊婦検診の判定保留検体の核酸検査を行った。
2)HTLV-1の水平感染についての疫学調査
日本赤十字社で行っている献血時のHTLV-1検査の結果をもとに、検査において陽転化する症例の解析を行った。平成17-18年に検査を受けた全国330万人について後ろ向きコホートの手法で平成23年12月までの約6年の観察期間中の陽転化の比率を算出した。
3)JSPFADマテリアルバンクの検体を用いた発症リスクの検討
全国の協力医療機関から提供されたJSPFADマテリアルバンクの無症候性キャリア検体2180検体の中から、ATLへの進展する症例について解析した。
標準品はCFSE染色したTL-Om1をPBMC (AllCells)で希釈し、測定用検体を準備した。参照品はTL-Om1およびJurkatのゲノムDNAとした。また板橋班と協力して、妊婦検診の判定保留検体の核酸検査を行った。
2)HTLV-1の水平感染についての疫学調査
日本赤十字社で行っている献血時のHTLV-1検査の結果をもとに、検査において陽転化する症例の解析を行った。平成17-18年に検査を受けた全国330万人について後ろ向きコホートの手法で平成23年12月までの約6年の観察期間中の陽転化の比率を算出した。
3)JSPFADマテリアルバンクの検体を用いた発症リスクの検討
全国の協力医療機関から提供されたJSPFADマテリアルバンクの無症候性キャリア検体2180検体の中から、ATLへの進展する症例について解析した。
結果と考察
1)HTLV-1核酸検査の標準化
a) 核酸検査標準品細胞TL-Om1の解析
プロウイルスコピー数のさらなる確度の向上を目指してFISH, digital PCRおよびQ-PCRでTL-Om1細胞中のプロウイルス量を測定した。その結果、FISH解析結果が他の独立した2法でもほぼ一致したことから高い精度でコピー数を規定できていることを確認した。また、標準品とは別にTL-Om1とJurkatのgDNAを参照品として準備した。今回標準品と参照品を同時測定し参照品を値付けしたことによって、今後は比較的準備が簡単であるTL-Om1とJurkat細胞のgDNAも利用できると期待される。
b) 施設の補正係数の測定(多施設共同研究)
標準品(TL-Om1/PBMC希釈系列)および参照品(TL-Om1/Jurkat希釈系列)を各施設の方法に従い、HTLV-1のコピー数を測定し、標準品の理論値からの隔たりについて平行線定量法で測定した。算出された値を各施設の補正係数とし、参照品の測定値を補正することにより参照品の値付けを行った。各施設の補正係数は、前回の標準品測定の補正値から全体として大きな変化は認められなかった。
c) 妊婦WB判定保留検体の核酸検査
板橋班との協力で収集された妊婦WB判定保留検体でHTLV-1核酸検査を行ったところ、63検体中12検体(約20%)で核酸陽性となった。また陰性検体についても同様に多プライマーで測定したところ、すべて陰性となった。
2)HTLV-1の水平感染についての疫学調査
日本赤十字社で行っている献血時のHTLV-1検査の結果をもとに、検査において陽転化する症例の解析を行った。平成17-18年に検査を受けた全国330万人について後ろ向きコホートの手法で平成23年12月までの約6年の観察期間中の陽転化の比率を算出した。この結果、全国で年間に3000-4000人にHTLV-1の水平感染の発生が示唆された。水平感染の実態調査をさらに進め、キャリア再生産の根絶に繋げる方策の検討が必要である。
3)JSPFADマテリアルバンクの検体を用いた発症リスクの検討
平成25年度までにJSPFADマテリアルバンクの無症候性キャリア検体2180検体の中から、26例にATLへの進展が見られた。このうち、24例はウイルスコピー数が4%以上でATL発症リスクに大いに関連している事が明らかとなった。ウイルスコピー数の評価を取り入れたキャリアフォローの体制の構築が必要である。
a) 核酸検査標準品細胞TL-Om1の解析
プロウイルスコピー数のさらなる確度の向上を目指してFISH, digital PCRおよびQ-PCRでTL-Om1細胞中のプロウイルス量を測定した。その結果、FISH解析結果が他の独立した2法でもほぼ一致したことから高い精度でコピー数を規定できていることを確認した。また、標準品とは別にTL-Om1とJurkatのgDNAを参照品として準備した。今回標準品と参照品を同時測定し参照品を値付けしたことによって、今後は比較的準備が簡単であるTL-Om1とJurkat細胞のgDNAも利用できると期待される。
b) 施設の補正係数の測定(多施設共同研究)
標準品(TL-Om1/PBMC希釈系列)および参照品(TL-Om1/Jurkat希釈系列)を各施設の方法に従い、HTLV-1のコピー数を測定し、標準品の理論値からの隔たりについて平行線定量法で測定した。算出された値を各施設の補正係数とし、参照品の測定値を補正することにより参照品の値付けを行った。各施設の補正係数は、前回の標準品測定の補正値から全体として大きな変化は認められなかった。
c) 妊婦WB判定保留検体の核酸検査
板橋班との協力で収集された妊婦WB判定保留検体でHTLV-1核酸検査を行ったところ、63検体中12検体(約20%)で核酸陽性となった。また陰性検体についても同様に多プライマーで測定したところ、すべて陰性となった。
2)HTLV-1の水平感染についての疫学調査
日本赤十字社で行っている献血時のHTLV-1検査の結果をもとに、検査において陽転化する症例の解析を行った。平成17-18年に検査を受けた全国330万人について後ろ向きコホートの手法で平成23年12月までの約6年の観察期間中の陽転化の比率を算出した。この結果、全国で年間に3000-4000人にHTLV-1の水平感染の発生が示唆された。水平感染の実態調査をさらに進め、キャリア再生産の根絶に繋げる方策の検討が必要である。
3)JSPFADマテリアルバンクの検体を用いた発症リスクの検討
平成25年度までにJSPFADマテリアルバンクの無症候性キャリア検体2180検体の中から、26例にATLへの進展が見られた。このうち、24例はウイルスコピー数が4%以上でATL発症リスクに大いに関連している事が明らかとなった。ウイルスコピー数の評価を取り入れたキャリアフォローの体制の構築が必要である。
結論
最大5倍とされたHTLV-1コピー数測定の施設間差は、標準品や参照品を用いることで縮小することができた。また、妊婦WB判定保留検体の約20%で核酸検査陽性となったことから、核酸検査の追加実施は有効であると考えられる。また、献血血液を用いた疫学調査の結果、全国で年間に3000-4000人にHTLV-1の水平感染の発生が示唆された。水平感染の実態調査をさらに進め、キャリア再生産の根絶に繋げる方策の検討が必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-03-31
更新日
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