文献情報
文献番号
201318014A
報告書区分
総括
研究課題名
顧みられない寄生虫病の効果的監視法の確立と感染機構の解明に関する研究
課題番号
H23-新興-一般-014
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
野崎 智義(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究分担者(所属機関)
- 渡辺 恒二(国立国際医療研究センター 戸山病院 エイズ治療研究開発センター)
- 濱野 真二郎(長崎大学 熱帯医学研究所)
- 井上 幸次(鳥取大学 医学部)
- 八木田 健司(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 中野 由美子(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 津久井 久美子(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 永宗 喜三郎(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 平井 誠(群馬大学 大学院医学系研究科)
- 丸山 治彦(宮崎大学 医学部)
- 北 潔(東京大学 大学院医学研究科)
- 河津信一郎(帯広畜産大学 原虫病研究センター)
- 山崎 浩(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 杉山 広(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
32,048,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国で問題となる寄生虫症の発生・まん延を防止するには、起因生物の生物学的特質・感染機構の理解、検査・診断・監視体制の確立、予防・治療法の開発が不可欠である。同時に、新興寄生虫症の出現に即座に対応出来るように、寄生虫症研究基盤の底上げと次世代の研究者育成が必要である。本研究では、国内で問題となる代表的な顧みられない原虫・蠕虫症に対して、分子疫学的手法・検査・診断法・監視システムを確立することを目的とした。更に、研究者育成と基礎研究レベルの底上げを目指し、予防・治療法の確立に繋がる原虫・蠕虫症の感染・病理・病原・薬剤耐性機構に関する基盤的研究を行った。
研究方法
腸管原虫症・アカントアメーバ症の継続的な発生動向調査、分離株の型別を行った。ジアルジア症・住血吸虫症、顎口虫・条虫・アニサキス症等の免疫診断法・キットの確立し、キットの有効性に関して検証した。赤痢アメーバと三日熱マラリア原虫の薬剤耐性モニタリング法を確立した。赤痢アメーバ・アカントアメーバ等の病原機構を統合的に解明した。マラリア原虫・赤痢アメーバにおける薬剤耐性機構を解明した。新種腸管アメーバの病原機構・病態形成を解明した。トキソプラズマの感染における宿主調節因子注入機構を解明した。マラリア原虫等の高速な変異体作成を可能とする遺伝学手法を確立し応用した。ブタ回虫等の幼虫特異的タンパク質の病態形成における機能解明を行った。エキノコックス呼吸鎖の解明と阻害剤探索を行った。
結果と考察
感染実態調査では、HIV感染者における赤痢アメーバ症に関して多くの臨床疫学的な知見が得られた。赤痢アメーバのHIV陽性コホート集団での陽性率が20%と極めて高いこと、更に血清抗体陽性で無症候感染者の中に、無症状性の潰瘍が多く潜在的に存在すること、血清抗体陽性が潰瘍発症の予測因子となること、HIVに伴う虫垂炎の原因に赤痢アメーバが潜在すること等の重要な臨床知見が得られた。ジアルジア症・クリプトスポリジウム症の罹患率は過小評価されており、国内発の診断キットの創成が望まれる。アメーバ角膜に関しても、主要な医療機関と関連学会と連携し、監視体制が構築された。また、幼虫移行症等の蠕虫症の感染実態も確実に蓄積されたが、感染実態調査は今後も継続的に運用される必要がある。
診断法の開発に関しては、ジアルジア検出を目的としたイムノクロマトキットが完成し、臨床検体を用いて評価を通じて有用性が確認された。今後、更にクリプトスポリジウム・赤痢アメーバとの統合キットとなって、臨床診断援助と国内の診断ネットワーク強化につなげることが求めらる。アカントアメーバ角膜炎の簡便病原体診断キットも作成・評価され、今後臨床の場で用いられることが期待される。イヌ・ブタ回虫、マンソン狐虫、顎口虫等幼虫移行症・アニサキス・肺吸虫症の診断に関しても、免疫診断法の開発、鑑別診断の手法が確立した。今後幼虫移行症を中心として複数の蠕虫種をまとめたキット及びアニサキスの重症化の予測に資する血清診断法の確立が求められる。住血吸虫症の診断ではヒト・動物いずれにも使用可能なユニバーサルな診断抗原が得られ、感染浸淫地における感染実態調査に大規模に利用することが可能となった。
基盤的研究では、赤痢アメーバの新規リソソーム酵素輸送体ファミリー(CPBF)を発見し、CPBFタンパク質群のリソソーム輸送における特殊性・選択性・生理的機能に関して堅牢な意義を提示した。CPBFは赤痢アメーバ選択的タンパク質であり、新規の治療薬・ワクチン等の合理的な標的のひとつである。更に、マラリアの薬剤耐性の分子疫学的解析により、世界的な伝播に関して既知の報告を裏付けた。赤痢アメーバのメトロニダゾール耐性化に伴う遺伝子発現プロファイルの変化等薬剤耐性の出現に備えて不可欠な理解が達成された。蠕虫の複合体IIの構造を明らかにするとともに、エキノコックスの複合体IIのSQR活性を阻害する薬剤から低IC50、高選択性を示す優れた化合物を複数発見した。更に、マラリア原虫の高度変異体作製、薬剤耐性原虫における変異導入の確認を行い、薬剤耐性機構理解に不可欠な新規遺伝学ツールを準備したトキソプラズマの宿主適応機構や線虫のステージ変移の分子機構に関しても、今後確実に優れた成果に結びつきうる結果を生んだ。
診断法の開発に関しては、ジアルジア検出を目的としたイムノクロマトキットが完成し、臨床検体を用いて評価を通じて有用性が確認された。今後、更にクリプトスポリジウム・赤痢アメーバとの統合キットとなって、臨床診断援助と国内の診断ネットワーク強化につなげることが求めらる。アカントアメーバ角膜炎の簡便病原体診断キットも作成・評価され、今後臨床の場で用いられることが期待される。イヌ・ブタ回虫、マンソン狐虫、顎口虫等幼虫移行症・アニサキス・肺吸虫症の診断に関しても、免疫診断法の開発、鑑別診断の手法が確立した。今後幼虫移行症を中心として複数の蠕虫種をまとめたキット及びアニサキスの重症化の予測に資する血清診断法の確立が求められる。住血吸虫症の診断ではヒト・動物いずれにも使用可能なユニバーサルな診断抗原が得られ、感染浸淫地における感染実態調査に大規模に利用することが可能となった。
基盤的研究では、赤痢アメーバの新規リソソーム酵素輸送体ファミリー(CPBF)を発見し、CPBFタンパク質群のリソソーム輸送における特殊性・選択性・生理的機能に関して堅牢な意義を提示した。CPBFは赤痢アメーバ選択的タンパク質であり、新規の治療薬・ワクチン等の合理的な標的のひとつである。更に、マラリアの薬剤耐性の分子疫学的解析により、世界的な伝播に関して既知の報告を裏付けた。赤痢アメーバのメトロニダゾール耐性化に伴う遺伝子発現プロファイルの変化等薬剤耐性の出現に備えて不可欠な理解が達成された。蠕虫の複合体IIの構造を明らかにするとともに、エキノコックスの複合体IIのSQR活性を阻害する薬剤から低IC50、高選択性を示す優れた化合物を複数発見した。更に、マラリア原虫の高度変異体作製、薬剤耐性原虫における変異導入の確認を行い、薬剤耐性機構理解に不可欠な新規遺伝学ツールを準備したトキソプラズマの宿主適応機構や線虫のステージ変移の分子機構に関しても、今後確実に優れた成果に結びつきうる結果を生んだ。
結論
本邦で問題となりうる原虫・寄生虫症の発生・まん延を防止するために不可欠な、検査・診断法の確立、治療法の開発等に貢献した。更に、上記に不可欠な基盤的な病原機構等の理解に資する成果を収めた。以上、本研究班は幅広い原虫・蠕虫による顧みられない寄生虫症対策に資する多面的な研究を展開し、原虫・寄生虫症の発生動向の正確な把握とそれに基づいた感染症対策に大いに資する成果を達成した。
公開日・更新日
公開日
2015-03-31
更新日
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