予防接種後副反応サーベイランスの効果的な運用とその行政的な活用のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201318012A
報告書区分
総括
研究課題名
予防接種後副反応サーベイランスの効果的な運用とその行政的な活用のあり方に関する研究
課題番号
H23-新興-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 永井 利三郎(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 安井 良則(大阪府済生会 中津病院)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 齋藤 昭彦(新潟大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 田中 敏博(JA静岡厚生連 静岡厚生病院)
  • 落合 雅樹(国立感染症研究所 検定検査品質保証室)
  • 新井 智(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 佐藤 弘(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,279,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成25年に予防接種法が一部改正され、副反応報告がすべての医師に義務づけられた。本研究班では紙媒体の予防接種後副反応報告書を電子媒体にすることで、記載する医師の省力化と、届出後の集計を容易にし、必須項目のチェック機能を搭載することで、効果的な解析に繋げることを目的とした。一方、わが国の予防接種制度は複雑で、0~1歳で受けるワクチンが増加したことから、接種間違いが報告されている。そこで、誤接種の実態を調査し、予防法を考案する。また、国内では同時接種に対して不安を感じる保護者や医師がいること、BCGとの同時接種が行われている国は少なく、海外で使用されているワクチンと国内で使用されているワクチンの種類や接種方法が異なるため、国内で同時接種の安全性についてエビデンスを蓄積することを目的とする。平成25年は成人が麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を接種する機会が増加した。これまで成人の予防接種後健康状況調査は行われていなかったため、成人のMRワクチン接種後の健康状況調査を実施し、エビデンスをもって接種前の説明ができる基盤を構築することを目的とする。接種前の説明は成人のみならず小児でも同様であるが、保護者がどのようなことを不安に思っているか、どのようなことを知りたいと思っているかを明らかにすることを目的に調査を行う。また、接種後に発生した症状をワクチンに起因するものかあるいは別の疾患の紛れ込みであるかを鑑別するための検査診断体制を構築することを目的とした。わが国独自の予防接種後有害事象報告システム (Vaccine Adverse Events Reporting System:VAERS)を実施していくためには、海外の様々な国のVAERSを調査することも重要であることから、海外のVAERSを調査し、わが国に適したシステムを構築することを目的とする。
研究方法
1)平成25年4月からすべての医師に義務づけられた予防接種後副反応報告に関して、必要事項が漏れないチェック機能を搭載した電子媒体報告書様式を作成する。2)全国の市区町村を対象に誤接種の実態調査を実施し、間違いを予防するための啓発資料の作成・普及を行う。3)BCGを含めて同時接種後の健康状況調査を行い、単独接種と比較して検討する。4)成人のMRワクチン接種後の健康状況調査を実施する。5)予防接種に対する保護者の意識調査を実施する。6)紛れ込みを鑑別し、正しく検査診断するための方法を作成する。7)海外のVAERSを調査する。
結果と考察
平成26年3月19日に本研究班で作製した電子媒体(エクセル版)副反応報告書が厚生労働省と国立感染症研究所のホームページに公表され、ダウンロード可能となった。また、集計解析を実施するための様々なツールを作製した。誤接種の実態を調査するとともに、予防を目的として、「予防接種における間違いを防ぐために~接種前の確認がとても大切です~」の冊子を作成した。全国の市区町村に送付し、国立感染症研究所のホームページにも公表した。同時接種後の健康状況調査を行い、単独接種と比較して検討したが、重篤な有害事象は報告されなかった。保護者へのアンケート調査から接種前の説明は十分とは言えないことが明らかとなった。副反応解析のための実験室診断の方法を検討した。WHO/WPROが発行しているImmunization Safety Surveillance ver.2を和訳した。
結論
電子媒体予防接種後副反応報告書を全国の医師に使用してもらえるよう普及啓発に努める必要がある。将来的には、電子媒体のまま厚生労働省に送付可能な体制の構築が必要である。また、今後は予防接種を受けた分母情報をリアルタイムに収集する方法(予防接種記録の電子媒体全国相互乗り入れシステム等)を確立するとともに、副反応の異常を迅速に探知する機能が搭載された副反応サーベイランスシステムの構築が必要である。保護者へのアンケート調査から接種前の説明は十分とは言えず、説明のためのツールが必要であることが明らかとなった。国民の安心・安全に繋げるためには、誤接種を可能な限りなくせるような工夫も重要である。そこで研究班で作成した「予防接種における間違いを防ぐために~接種前の確認がとても大切です~」の積極的な活用が期待される。VAERSが有効に機能して、異常の早期探知や、必要に応じてワクチンの品質や検査診断も含めた副反応検討をするなど、包括的な解析が重要である。WHO/WPROが発行しているImmunization Safety Surveillance ver.2を参考にして、わが国の実情にあったVAERSの導入が重要である。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201318012B
報告書区分
総合
研究課題名
予防接種後副反応サーベイランスの効果的な運用とその行政的な活用のあり方に関する研究
課題番号
H23-新興-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所 )
  • 永井 利三郎(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 安井 良則(大阪府済生会 中津病院)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター )
  • 齋藤 昭彦(新潟大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 田中 敏博(JA静岡厚生連 静岡厚生病院)
  • 落合 雅樹(国立感染症研究所 検定検査品質保証室)
  • 新井 智(国立感染症研究所 感染症疫学センター )
  • 佐藤 弘(国立感染症研究所 感染症疫学センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)チェック機能を搭載した電子媒体副反応報告書を作成して、記載医師の省力化、報告後の集計解析を容易にし、必須項目の漏れや誤記載がない報告書の送付、その後の解析に資するシステムの構築について検討する。2)ワクチンに起因するか別の疾患の紛れ込みであるかを鑑別するための検査診断体制を構築し、症状とワクチンロット情報とを関連させた集計解析・原因究明が実施できる体制を構築する。3)予防接種の理解を深め、安心して受けられる体制を構築するために、保護者の予防接種に対する意識調査を実施し、同時接種後の健康状況調査、成人の予防接種後健康状況調査を行ってエビデンスを構築する。4)誤接種の実態を調査し、間違い防止のための啓発資料を作成する。5)海外の予防接種後副反応(Adverse Event Following Immunization: AEFI)サーベイランスについて調査し、わが国の実情にあったサーベイランスを構築する。7)予防接種に対する国民の理解を深め、国民の安心安全に繋げることを目的とする。
研究方法
1)AEFI報告書の電子媒体と解析ツールを作成する。2)接種の種類や順番について検討し、アレルギー疾患との関連について検討する。3)米国Vaccine Adverse Event Reporting System (VAERS)の情報収集と血小板減少性紫斑病に関して論文調査を行う。4)保護者の副反応に対する不安や要望を明らかにし、接種前の説明の重要性について検討し、養育者が求めている内容を調査する。5)急性脳炎および急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の自然発生と予防接種後副反応による発生頻度について検討する。6)予防接種後副反応に関連した疾患の自然発生率、接種後の発生率について国内外の論文を調査する。7)成人のMRワクチン接種後健康状況調査を実施する。8)WHO、EU、英国、韓国、台湾等、AEFIサーベイランスが実施されている国に赴き、現地調査を実施する。9)WHO/WPROのImmunization Safety Surveillance Ver2ndを和訳する。10)遅延型過敏反応に関する実験室内診断法を研究する。11)自治体の予防接種担当者を対象に、アンケート調査を実施する。12)BCGを含めた乳幼児期の予防接種について、同時接種後の健康状況調査を行い、単独接種と比較検討する。13)副反応の症状とロット情報を連携させた原因究明を行い、新たな動物実験代替試験法の国際的な状況について調査する。14)副反応情報を効率的に収集し、発疹症の鑑別に資する実験室内診断法の確立を行う。15)誤接種の実態調査と間違い防止のための啓発資料を作成する。
結果と考察
作成した電子媒体副反応報告書は、2014年3月19日に厚生労働省のHPに公表された。接種前に行う被接種者への説明の重要性が明らかとなった。誤接種を予防するために、「予防接種における間違いを防ぐために~接種前の確認がとても大切です~」の冊子を約2万冊作成し全国の市区町村に送付し、HPに公表した。乳幼児の同時接種後と成人の予防接種後の健康状況調査を実施し、エビデンスに基づいて説明できるように、日本のワクチン・接種方法においての接種後健康状況調査を実施した。ワクチンの品質について検討するために動物実験の代替え法について検討し、百日咳毒素のBinding活性がマウスモデルに見られる追加接種時の局所反応原性及び百日咳毒素活性の減毒に影響する主要な因子の1つであることが示唆された。発疹症と遅延型過敏反応について実験室内診断法を確立した。予防接種後の血小板減少性紫斑病について、国内外の論文検索を行った。疫学研究を含めて、更なる調査が必要である。世界各国のAEFIサーベイランスについて、国に赴いて調査し、WHO/WPROが作成したAEFIサーベイランスについての冊子、副反応に関する様々な論文を和訳して、わが国の実情に応じたAEFIサーベイランスシステムの構築について検討し、提言を行った。
結論
副反応を迅速に報告し、効率的に解析するシステムの開発と、被接種者数を迅速に把握するしくみが必要と考えられた。国内エビデンスを蓄積し、わが国オリジナルのAEFIサーベイランスの構築と、4本柱(シグナル探知を目的としたpassive surveillance、そのシグナルに対して迅速に対応するRapid Response Team :RRTと仮説を証明するデータベース、整った補償制度)の実施が望まれる。国民の安心安全に繋がる予防接種制度の構築には、接種前の説明用のツールの作成、誤接種の予防、副反応の原因究明、国内でのエビデンスの確立が重要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201318012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
予防接種後副反応(遅延型過敏反応)を診断するための検査方法を考案した。エンドトキシン試験を適用する際の注意点を明らかにした。アレルギー疾患とワクチンの接種順序、アルミニウムアジュバントとの関連について検討した。ワクチン接種後に認められる免疫性血小板減少性紫斑病、脳炎、ADEM等について国内外の論文を調査検討した。予防接種後副反応サーベイランスについて世界の動向を把握し、WHOが作製した予防接種安全性サーベイランス第2版を翻訳した。
臨床的観点からの成果
予防接種に対する保護者・医療関係者の意識調査を実施し、課題点を明らかにした。成人のMRワクチン接種後の健康状況調査を実施した。同時接種後の健康状況調査を実施し、単独接種と比較検討した。予防接種に際して時に発生する誤接種の実態について全国市区町村を対象に調査を行い、誤接種を予防するための啓発資料を作成した。医師の報告を省力化し、受け取った後の解析に資する電子媒体副反応報告書を作成した。
ガイドライン等の開発
「予防接種における間違いを防ぐために」という啓発資料を作成し、全国の市区町村に配布した。また、平成26年5月13日に開催された第9回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会で紹介し、現在、厚生労働省のホームページに掲載されている。http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000045750.pdf
その他行政的観点からの成果
予防接種後副反応報告書(紙媒体:PDF)を電子化し、エクセル形式で入力可能なチェック機能搭載の電子媒体報告書を作成した。厚生労働省のホームページに掲載されていたが、http://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/tp250330-1.html研究班で検討した電子媒体の作成経験を活かして、厚生労働省の事業として電子媒体を作る方向で検討が進み、政令改正ののち、本報告書(アプリで作成した報告書)でも法律に基づく届出ができるようになった。
その他のインパクト
日本ワクチン学会(三重:平成25年)のシンポジウムで予防接種後副反応サーベイランスについて研究班の成果を発表した。平成26年5月13日の医療介護CBニュースbyキャリアブレインに誤接種予防の啓発資料が取り上げられた。平成26年6月10日の読売新聞夕刊で、誤接種の全国調査、「予防接種における間違いを防ぐために」の啓発資料を紹介する記事が掲載される予定である。予防接種間違いが厚生労働省に報告されたときは、この冊子が各市区町村に送付されている。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
46件
(うち書籍:12)
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
43件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Naito S, Ito Y, Kiyohara T, et al.
Antigen-loaded dissolving micro- needle array as a novel tool for percutaneous vaccination.
Vaccines , 30 , 1191-1197  (2012)
原著論文2
Kataoka M, Ochiai M, Yamamoto A, et al.
A need for careful evaluation of endotoxin contents in acellular pertussis- based combination vaccines
Biologicals , 40 , 49-54  (2012)
原著論文3
Ochiai M, Horiuchi Y, Yuen CT, et al.
Investigation in a murine model of possible mechanisms of enhanced local reactions to post-primary diphtheria-tetanus toxoid boosters in recipients of acellular pertussis-diphtheria-tetanus vaccine.
Hum Vaccin Immunother , 10 (7) , 2074-2080  (2014)

公開日・更新日

公開日
2014-06-10
更新日
2018-06-07

収支報告書

文献番号
201318012Z