文献情報
文献番号
201318010A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国への侵入が危惧される蚊媒介性ウイルス感染症に対する総合的対策の確立に関する研究
課題番号
H23-新興-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
高崎 智彦(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
- 小西 英二(大阪大学微生物病研究所)
- 森田 公一(長崎大学 熱帯医学研究所)
- 高橋 和郎(大阪府公衆衛生研究所)
- 永田 典代(国立感染症研究所 感染病理部)
- 沢辺 京子(国立感染症研究所 昆虫医科学部)
- 濱田 篤郎(東京医科大学 渡航者医療センター)
- 鈴木 隆二((独)相模原病院 臨床研究センター)
- 江下 優樹(大分大学医学部 感染分子病態制御講座)
- 梅 敏苓 (モイ メンリン)(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
- 倉根 一郎(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
18,408,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
デングウイルス(DV)、チクングニアウイルス(CHIKV)はネッタイシマカとヒトスジシマカを媒介としてヒトに感染する。デング熱は地球温暖化と流行地の都市化により流行拡大が最も危具され、日本の輸入症例も年々増加している。また、2005年に西インド洋諸国で大流行したチクングニア熱は、南アジアや東南アジアに流行が拡大、2013年にはカリブ海諸国に侵入した。このような状況で、より迅速な実験室診断法を開発し地方衛生研究所、検疫所、主要感染症病院等に技術移転する。海外渡航者への啓発法、海外での感染防止策を確立する。媒介蚊対策は、国内のヒトスジシマカがCHIKV、DV媒介能があるため、国内蚊の両ウイルス感受性を検討する。また、細胞培養日脳ワクチンを旅行者ワクチンとして評価する。
研究方法
現場で迅速に対応できる前処理簡略化検査法確立のためにLAMP法のDV、CHIKV検出法(ヒト検体および蚊)を改良した。また1回感染性粒子産生系日本脳炎ウイルスレプリコンを用いて、中和試験に利用できるかを患者血清により検討した。免疫学的背景は不明な部分が多いマーモセットの免疫関連遺伝子発現量を評価できる定量リアルタイムPCRを確立しDV感染マーモセットに適用し評価した。国内ヤブカのCHIKV感受性に関して検討した。海外渡航者や海外派遣企業の健康管理担当者を対象に、蚊媒介感染症に関する意識調査や知識レベルをアンケート調査、e-learning Webサイトを通じて調査し、その結果からホームページ、パンフレット、ポスターなどによる情報提供、動画DVD「デング熱の予防対策」を作製し公開した。また、2013年8月に日本を旅行して直行便で帰国後デング熱を発病したドイツ人症例に鑑み、国内発生を迅速に探知するため輸入症例の多い府県の感染症中核病院にNS1抗原キットを配布する。ジカ熱、ロスリバー熱のウイルス遺伝子検出法およびIgM抗体捕捉ELISA法を確立する。
結果と考察
1)1回感染性フラビウイルス粒子産生系をデング熱患者血清を用いて中和抗体測定への応用できることを明らかにした。2)デング非構造蛋白NS1抗原検出イムノクロマトキットを評価し特異性が高く感度面でも十分であり、臨床現場で使用可能であることを確認した。3) 国内ヤブカのCHIKV感受性に関してリーバースシマカ、ヤマダシマカにも感受性があることが明らかになった。また、国内ヒトスジシマカはデングウイルス1型に高い感受性が認められた。4)健常成人への細胞培養日脳ワクチンの1回接種による有効率は88%であったが、接種1年後、2年後には抗体価は有意に低下し、陰転率は21.4%であった。旅行者ワクチンとしての使用法を考える必要がある。4)媒介蚊に関する啓発ツールの開発として蚊対策の動画を制作した。7)開発したマーモセットの免疫学的ツールをDV、CHIKV感染実験において評価し実用性を確認した。8) CHIKV感染マーモセットの病理学的に解析し、脾臓,リンパ節,肝臓のマクロファージや内皮系細胞にウイルス抗原や遺伝子を検出した。9)ロスリバー熱、ジカ熱の本邦初輸入症例を確認し、遺伝子検出法およびIgM抗体検査法を確立した。10)デング熱輸入症例の多い不県の感染症中核病院にNS1抗原キットを配布し、国内発生が発生した場合に備えて対応マニュアル案を作成した。
結論
1回感染性JEV粒子産生系を確立し、それらは中和アッセイ等機能的検査法にも使用できる。DV感染動物モデルとして有用なマーモセットのサイトカイン、T細胞関連の遺伝子など免疫学的測定系を確立した。細胞培養日本脳炎ワクチンの旅行者ワクチンとしての有効性は、2回接種が望ましいがその防御抗体の維持能が長くないという問題点が明らかになった。デング熱流行地の在留邦人の認識度調査を行った結果、媒介蚊に関する知識が不足していることが判明した。日本人海外旅行者向け感染症に関するホームページ、ポスター、動画を作成した。 デング熱国内発生時の迅速検出体制を準備し、対策ガイドライン案を策定した。流行が拡大しつつあるジカ熱、ロスリバー熱の国内発輸入症例の確認検査を実施し、実験室診断法を確立した。
公開日・更新日
公開日
2015-03-31
更新日
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