文献情報
文献番号
201318008A
報告書区分
総括
研究課題名
潜在性抗酸菌感染症の病態機構の解明及び診断・治療・予防に関する研究
課題番号
H23-新興-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
阿戸 学(国立感染症研究所 免疫部)
研究分担者(所属機関)
- 御手洗 聡(結核予防会結核研究所 抗酸菌部)
- 松本 壮吉(新潟大学大学院 医歯学総合研究科)
- 杉田 昌彦(京都大学 ウイルス研究所)
- 小出 幸夫(浜松医科大学)
- 前倉 亮治(国立病院機構 刀根山病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
18,350,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者松本壮吉の所属機関が、大阪市立大学大学院から新潟大学大学院に変更になった。
研究報告書(概要版)
研究目的
世界で約20億人(総人口の約1/3、日本:0.25億人)が結核菌に無症候・潜在性既感染、年間860万人(日本:2.1万人)が結核を発病、130万人(日本:0.21万人)が死亡し、結核は甚大な健康被害を与え続けている(2012年)。既感染からの発病(内因性再燃)は約10%である。多くの抗酸菌感染症の発病は内因性再燃(約70%)に起因しているが、潜在性感染―>発病に至る機構はほとんど不明である。結核制圧において活動性結核の発生母体である潜在性結核菌感染対策は重要課題であり、無症候性・感染機構の解明は潜在性抗酸菌感染症の新規診断法、抗微生物薬やワクチン開発、さらに、発病予知因子の探索を推進し、従来の活動性結核・抗酸菌症を中心とした対策を目的とした。
研究方法
1.休眠抗酸菌の性状解析:休眠結核菌の各種性状に関し、相互の関連性や発病予知菌因子の探索
2.潜在性結核菌感染小動物モデルモデルの樹立:発病予知(潜在性―>活動性)に関与する宿主因子の探索
3.休眠抗酸菌由来物質と宿主応答:効果的なワクチン候補の選択
4.潜在性抗酸菌感染の臨床体外診断法の臨床的有用性:臨床的有用性の優れた抗酸菌抗原を選択
5.休眠抗酸菌と薬剤標的探索:創薬シーズの探索とニトロイミダゾール系薬の効果を総括
2.潜在性結核菌感染小動物モデルモデルの樹立:発病予知(潜在性―>活動性)に関与する宿主因子の探索
3.休眠抗酸菌由来物質と宿主応答:効果的なワクチン候補の選択
4.潜在性抗酸菌感染の臨床体外診断法の臨床的有用性:臨床的有用性の優れた抗酸菌抗原を選択
5.休眠抗酸菌と薬剤標的探索:創薬シーズの探索とニトロイミダゾール系薬の効果を総括
結果と考察
結核を制圧するため、活動性結核の発生母体である無症候潜在性結核菌感染対策は必須となるが、病態の把握、診断、治療や予防は不十分である。基礎研究成果として、潜在性(休眠)結核菌の生物学的特性、遺伝子発現、イソニアチドに対する低感受性の分子機構、宿主免疫応答を解明し、潜在性結核菌感染動物モデルを開発した。橋渡し研究成果として、ヒト潜在性結核菌感染の免疫血清診断でマーカー分子候補を同定し、本研究班の研究者らが開発した結核と近縁Mycobacterium avium complex感染症の血清診断キットキャピリア® MAC抗体ELISA タウンズ)の体外診断用医薬品製造販売が承認・上市(保険点数:120点)され、保険医療として、臨床使用を開始し、民間臨床検査機関の受諾項目となった。この診断キットの感度:84%、特異度:100%、所要時間の大幅短縮:3時間(従来法:約1か月)、かつ、非侵襲性であり、今後、MAC感染症の診療に威力を発揮することが期待される。この診断キットの臨床的有用性は、国内外で多数例示された。
結論
1.長期培養株に特異的な発現を示す遺伝子と特徴ある形態が同定された。
2.ヒト潜在性結核感染症血清ではAg85AおよびMDP1抗原に対する高い抗体応答が認められ、これらの因子をもちこれらの因子を用いた潜在性感染血清診断開発の可能性が示唆された。
3.休眠菌が産生するGroMMはヒト自然免疫受容体Mincleに認識され、Th2応答を誘導し、潜在性抗酸菌感染の維持に重要である。
4.結核菌感染樹状細胞では、オートファジーが殺菌と抗原提示に影響を及ぼす因子とである可能性が示唆された。
5.キャピリアMAC抗体ELISA検査を非結核性抗酸菌症の診断•治療ガイドラインに反映することが期待される。
6.結核菌の休眠菌と増殖菌感染に由来する抗原を使って、潜在感染から発病の危険が高い前発病状態を正確に診断できるキットを開発し、結核のより明確な予防内服基準の作成に寄与することが期待される。
2.ヒト潜在性結核感染症血清ではAg85AおよびMDP1抗原に対する高い抗体応答が認められ、これらの因子をもちこれらの因子を用いた潜在性感染血清診断開発の可能性が示唆された。
3.休眠菌が産生するGroMMはヒト自然免疫受容体Mincleに認識され、Th2応答を誘導し、潜在性抗酸菌感染の維持に重要である。
4.結核菌感染樹状細胞では、オートファジーが殺菌と抗原提示に影響を及ぼす因子とである可能性が示唆された。
5.キャピリアMAC抗体ELISA検査を非結核性抗酸菌症の診断•治療ガイドラインに反映することが期待される。
6.結核菌の休眠菌と増殖菌感染に由来する抗原を使って、潜在感染から発病の危険が高い前発病状態を正確に診断できるキットを開発し、結核のより明確な予防内服基準の作成に寄与することが期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-03-31
更新日
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