文献情報
文献番号
201318006A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における一類感染症の患者発生時に備えた診断・治療・予防等の臨床的対応及び積極的疫学調査に関する研究
課題番号
H23-新興-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 康幸(独立行政法人 国立国際医療研究センター 国際感染症センター国際感染症対策室)
研究分担者(所属機関)
- 西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
- 森川 茂(国立感染症研究所 獣医科学部)
- 中島 一敏(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
- 吉川 徹(労働科学研究所)
- 足立 拓也(東京都保健医療公社 豊島病院 感染症内科)
- 冨尾 淳(東京大学医学部附属病院 災害医療マネジメント部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,956,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
一類感染症(とくにウイルス性出血熱:VHF)の患者が発生した場合の臨床的対応,および積極的疫学調査に関して国の専門家レベルでの手引き(第一種感染症指定医療機関の医療関係者や保健所職員を主な対象)を初めて作成するとともに,一類感染症に関する医療関係者向け研修プログラムを開発する.さらに,第一種感染症指定医療機関のネットワークを作り,我が国における輸入感染症全般の医療・公衆衛生体制を強化することを目的とする.
研究方法
臨床的対応の手引き作成
研究分担者を中心に国外ガイドラインの参照,関連論文の検討,国内外関連機関の視察を通じてVHFに対する臨床的対応の手引きの素案を作成する.また,ワークショップおよび班会議を開催するなどして外部専門家の意見を反映させ,まとめることとした.
教育プログラム開発
全国の第一種感染症指定医療機関の医師・看護師を対象に質問票調査を行い,デルファイ法を用いて医療現場で必要と考えられている中核能力を定義し,パイロット研修会に反映させた.
デング熱迅速検査試薬の臨床性能試験
デング熱常在国に滞在後14日以内に38℃以上の発熱が出現し,国立国際医療研究センター病院及びがん・感染症センター都立駒込病院,都立墨東病院を受診した患者を対象とした.患者血液は,NS-1抗原,IgM/IgG抗体を免疫クロマトグラフィ法で検出する迅速検査試薬に使用され,国立感染症研究所ウイルス第一部において実施されるPCR法,ELISA法によるIgM抗体価と比較し,感度,特異度が算定された.
(倫理面への配慮)「臨床研究に関する倫理指針」を遵守し,研究実施機関の倫理審査委員会で承認を得た.症例登録は書面による同意を患者から取得した上で行った.連結可能匿名化された患者情報は研究実施機関で厳重に管理された.
研究分担者を中心に国外ガイドラインの参照,関連論文の検討,国内外関連機関の視察を通じてVHFに対する臨床的対応の手引きの素案を作成する.また,ワークショップおよび班会議を開催するなどして外部専門家の意見を反映させ,まとめることとした.
教育プログラム開発
全国の第一種感染症指定医療機関の医師・看護師を対象に質問票調査を行い,デルファイ法を用いて医療現場で必要と考えられている中核能力を定義し,パイロット研修会に反映させた.
デング熱迅速検査試薬の臨床性能試験
デング熱常在国に滞在後14日以内に38℃以上の発熱が出現し,国立国際医療研究センター病院及びがん・感染症センター都立駒込病院,都立墨東病院を受診した患者を対象とした.患者血液は,NS-1抗原,IgM/IgG抗体を免疫クロマトグラフィ法で検出する迅速検査試薬に使用され,国立感染症研究所ウイルス第一部において実施されるPCR法,ELISA法によるIgM抗体価と比較し,感度,特異度が算定された.
(倫理面への配慮)「臨床研究に関する倫理指針」を遵守し,研究実施機関の倫理審査委員会で承認を得た.症例登録は書面による同意を患者から取得した上で行った.連結可能匿名化された患者情報は研究実施機関で厳重に管理された.
結果と考察
臨床的対応の手引き作成
国内専門家(第一種感染症指定医療機関の医療従事者8名, 保健所1名,検疫所2名)および国外専門家(英国ロイヤルフリー病院Michael Jacobs医師)を招聘して班会議を開催し,意見集約を図り,本文と附録からなる臨床的対応の手引きを作成した.本文では,海外渡航歴のある発熱患者にVHFを疑う場合の4つのリスク分類を示し,リスク別に適切な感染防止策を取りながら診断を進める手順を提案した.附録では,これまでの法令や通知もまとめた資料集の役割も兼ねることとした.
教育プログラム開発
パイロット研修を開催し,第一種感染症指定医療機関13施設から26名(医師13名,看護師13名)の参加を得た. また,その内容を要約した動画教材を作成した.
デング熱迅速検査試薬の臨床性能試験
平成24年6月から平成26年3月までに178例が本試験に登録された. 感度・特異度は90%程度であり,今後解析を進める予定である.
作成した臨床的対応の手引きは,感染防止策,抗ウイルス療法,検体搬送,関係機関のコミュニケーション等について,現時点での情報が整理されたと考えられる.今後内容の周知を関係者に図るとともに,批判的な意見も取り入れながら改訂を図っていく必要がある.
医療従事者向けの研修会(一類感染症ワークショップ)は,全国に41ある第一種感染症指定医療機関のうち,3年間で32施設(78%)からの参加を得た.毎回多数の応募があり,ニーズは高いと考えられた.特に,看護師も対象とした全国規模の研修会は感染症法施行後初めての機会であり,国内ネットワーク構築上も有意義と考えられた.本研究班で作成した動画資料が今後第一種感染症指定医療機関等で活用されることが期待される.
国内専門家(第一種感染症指定医療機関の医療従事者8名, 保健所1名,検疫所2名)および国外専門家(英国ロイヤルフリー病院Michael Jacobs医師)を招聘して班会議を開催し,意見集約を図り,本文と附録からなる臨床的対応の手引きを作成した.本文では,海外渡航歴のある発熱患者にVHFを疑う場合の4つのリスク分類を示し,リスク別に適切な感染防止策を取りながら診断を進める手順を提案した.附録では,これまでの法令や通知もまとめた資料集の役割も兼ねることとした.
教育プログラム開発
パイロット研修を開催し,第一種感染症指定医療機関13施設から26名(医師13名,看護師13名)の参加を得た. また,その内容を要約した動画教材を作成した.
デング熱迅速検査試薬の臨床性能試験
平成24年6月から平成26年3月までに178例が本試験に登録された. 感度・特異度は90%程度であり,今後解析を進める予定である.
作成した臨床的対応の手引きは,感染防止策,抗ウイルス療法,検体搬送,関係機関のコミュニケーション等について,現時点での情報が整理されたと考えられる.今後内容の周知を関係者に図るとともに,批判的な意見も取り入れながら改訂を図っていく必要がある.
医療従事者向けの研修会(一類感染症ワークショップ)は,全国に41ある第一種感染症指定医療機関のうち,3年間で32施設(78%)からの参加を得た.毎回多数の応募があり,ニーズは高いと考えられた.特に,看護師も対象とした全国規模の研修会は感染症法施行後初めての機会であり,国内ネットワーク構築上も有意義と考えられた.本研究班で作成した動画資料が今後第一種感染症指定医療機関等で活用されることが期待される.
結論
我が国でVHF患者が発生した際に適切な医療を提供するため,臨床的対応の手引きを作成したほか,第一種感染症指定医療機関の医療関係者の研修プログラム開発,国内外関連機関との人的ネットワーク構築,デング熱迅速検査試薬の評価など,国外におけるVHFアウトブレイクにおける情報」発信など多面的な活動を行った.国際化時代における日本国民の健康危機管理のために寄与するものと期待される.
公開日・更新日
公開日
2015-03-31
更新日
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