感染症の予防、診断・治療又は医療水準の向上のための臨床的研究

文献情報

文献番号
201318004A
報告書区分
総括
研究課題名
感染症の予防、診断・治療又は医療水準の向上のための臨床的研究
課題番号
H23-新興-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
影山 努(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 中内 美名 (国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 高山 郁代 (国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 高橋 仁(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 久保 英幸 (大阪市立環境科学研究所 微生物保健グループ )
  • 大場 邦弘 (公立昭和病院 小児科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
16,903,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、蛍光Direct RT-LAMP法とマルチウェル搭載のマイクロ流路チップを組み合わせ、季節性インフルエンザウイルス(A/B/C型およびH1pdm/H3N2亜型)および世界で初めてヒト感染を引き起こした中国で2013年3月に報告されたH7N9亜型鳥インフルエンザウイルスの型・亜型診断を同時に行う事ができるPoint of care (POC)遺伝子検査システムの開発を行う事を目的とした。
 また、H7N9亜型インフルエンザウイルスを同定できるリアルタイムRT-PCR 法を用いた検査法を新たに開発し、全国の地方衛生研究所(74カ所)および検疫所(16カ所)で、全国規模で精度の高い検査が行える事を目的とした、診断技術の移転、検査の精度管理強化を行った。
研究方法
 蛍光Direct RT-LAMP法とマルチウェル搭載のマイクロ流路チップを組み合わせた季節性インフルエンザウイルスおよびH7N9亜型鳥インフルエンザウイルスの型・亜型同定キットと10種類の呼吸器感染症ウイルスの同定キットの開発を行い、ウイルスおよび臨床検体を用いて検出系の感度や特異性の評価および本システムの有用性に関する臨床的評価を行った。
 また、地方衛生研究所が行っているRT-PCR法によるインフルエンザウイルスの遺伝子同定検査の検査精度の維持向上を図るため、H7N9亜型鳥インフルエンザウイルスの識別マーカー付き陽性コントロールの開発および地方衛生研究所への配布およびこれを利用した検査の精度管理強化を行った。
結果と考察
 季節性インフルエンザウイルスおよびH7N9亜型鳥インフルエンザウイルスの型・亜型同定が行えることで、本システムにより迅速診断キット並の操作で病院等の臨床現場でこれらウイルスの同定を行えることが可能になった。本方法は臨床現場でも煩雑な操作なしに高感度な遺伝子検査を行う事が可能なため、診断のみならず感染予防や適切な診療といった医療水準の向上にも有用であると考えられる。また、呼吸器感染症ウイルスの同定についても同様に、本システムを用いる事で、臨床現場でも煩雑な操作なしに高感度な遺伝子検査を行う事が可能となり、新型インフルエンザや新興ウイルスが出現した直後の検査法が無い状況においても、既存ウイルスとの鑑別診断を迅速に行えることができ、既存ウイルスの感染を否定することで、これら新興ウイルスの感染を疑うことなどの除外診断も行えるため、新興再興感染症対策にも有用である。
 また、リアルタイムRT-PCR法によるH7亜型同定検査用の識別マーカー付き陽性コントロールおよびリアルタイムPCR法を用いた簡便な陽性コントロール識別法の開発を行い、全国の地方衛生研究所(75カ所)にこの陽性コントロールを配布し、精度管理の強化を行うなどして、H7N9亜型鳥インフルエンザウイルスに対する全国的な検査対応強化が図られた。
結論
 本システムは核酸精製が不要でコンタミネーションリスクも無く、迅速診断キットと同等の簡便操作で検体採取から短時間で、高感度マルチプレックス遺伝子検査ができるという点で、また同時に複数の遺伝子を検出する事ができるという点から、インフルエンザのみならず他の呼吸器感染症を含むあらゆる遺伝子診断を高感度、特異的、迅速かつ簡便にベットサイドで行う事も可能で、感染症の予防、診断・治療といったわが国の感染症対策に大きく貢献する事が期待できる。
 また、本システムはインフルエンザウイルスの型(A、B、C 型)だけでなくインフルエンザウイルスの亜型(H1pdm09、H3、H7)や呼吸器感染症ウイルスの同定ができ、H7N9亜型を含むインフルエンザウイルスとの鑑別診断が可能なため、これらMERSなどの新興ウイルスが流行した直後において検査法が構築できていない状況でも、既存ウイルスとの鑑別診断を検体採取も含め短時間に行えるため、新興再興感染症対策にも有用である。
 さらに、本システムが全国的に拡充されれば、臨床現場においてリアルタイムな病原体ウイルスサーベイランスが実現可能となり、行政による発生動向の迅速かつ正確な把握を行う事で、地域レベルでの感染症対策にも有用となる。新型インフルエンザ等の新興感染症の出現に備えるためにも、本システムの様な安価で短時間に簡単に遺伝子検査を行えるマルチプルベッドサイド遺伝子検出系の開発は重要である。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201318004B
報告書区分
総合
研究課題名
感染症の予防、診断・治療又は医療水準の向上のための臨床的研究
課題番号
H23-新興-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
影山 努(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 中内 美名(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 高山 郁代(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 高橋 仁(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター )
  • 久保 英幸(大阪市立環境科学研究所 微生物保健グループ)
  • 大場 邦弘(公立昭和病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替 松井清彦(平成23年4月1日~24年3月31日)→高橋仁(平成24年4月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、蛍光Direct RT-LAMP法とマルチウェル搭載のマイクロ流路チップを組み合わせ、季節性インフルエンザウイルス(A/B/C型およびH1pdm/H3N2亜型)および世界で初めてヒト感染を引き起こした中国で2013年3月に報告されたH7N9亜型鳥インフルエンザウイルスの型・亜型診断を同時に行う事ができるPoint of care (POC)遺伝子検査システムの開発、ウイルス性呼吸器感染症を簡便に鑑別診断できる呼吸器ウイルス感染症のPOC遺伝子検査システムの構築、薬剤耐性株サーベイランスのさらなる強化を目的としたS247N変異株の迅速、簡便な検出法の構築を行い、季節性インフルエンザや鳥インフルエンザの鑑別診断あるいは新型インフルエンザや新興・再興感染症発生時における病原体診断への活用、ウイルス性呼吸器感染症診断への活用、リアルタイムサーベイランスへの活用を目的とした研究評価を行った。
研究方法
 蛍光Direct RT-LAMP法とマルチウェル搭載のマイクロ流路チップを組み合わせたC型インフルエンザを含む季節性インフルエンザウイルス(A型・B型)の型およびH1pdm09、H3、H7亜型鳥インフルエンザウイルスの亜型同定キットと10種類の呼吸器、感染症ウイルスの同定キットの開発を行い、ウイルスおよび臨床検体を用いて検出系の感度や特異性の評価および本システムの有用性に関する臨床的評価を行った。
 また、H275Y変異と同時に変異が起きるとオセルタミビルに対して非常に強い耐性能を獲得するS247N変異検出系の構築をduplex one-step RT-PCR法を用いた方法で構築し、薬剤耐性株サーベイランスのさらなる強化を行うための方法の構築を行った。
結果と考察
 C型インフルエンザを含む季節性インフルエンザウイルスおよびH7N9亜型鳥インフルエンザウイルスの型・亜型同定が行えることで、本システムにより迅速診断キット並の操作で病院等の臨床現場でこれらウイルスの同定を行えることが可能になった。本方法は臨床現場でも煩雑な操作なしに高感度な遺伝子検査を行う事が可能なため、診断のみならず感染予防や適切な診療といった医療水準の向上にも有用であると考えられる。また、呼吸器感染症ウイルスの同定についても同様に、本システムを用いる事で、臨床現場でも煩雑な操作なしに高感度な遺伝子検査を行う事が可能となった。新型インフルエンザや新興ウイルスが出現した直後の検査法が無い状況においても、既存ウイルスとの鑑別診断を迅速に行える事が可能となり、既存ウイルスの感染を否定することで、これら新興ウイルスの感染を疑うことなどの除外診断も行う事ができるため、新興再興感染症対策にも有用である。
 また、H275Y変異と同時に変異が起きるとオセルタミビルに対して非常に強い耐性能を獲得するS247N変異検出系を構築した。本方法は薬剤耐性株サーベイランスのさらなる強化を行うために有用である。
結論
 本システムは核酸精製が不要でコンタミネーションリスクも無く、迅速診断キットと同等の簡便操作で検体採取から短時間で、高感度マルチプレックス遺伝子検査ができるという点で、また同時に複数の遺伝子を検出する事ができるという点から、インフルエンザのみならず他の呼吸器感染症を含むあらゆる遺伝子診断を高感度、特異的、迅速かつ簡便にベットサイドで行う事も可能で、感染症の予防、診断・治療といったわが国の感染症対策に大きく貢献する事が期待できる。
 また、本システムはインフルエンザウイルスの型(A、B、C 型)だけでなくインフルエンザウイルスの亜型(H1pdm09、H3、H7)や呼吸器感染症ウイルスの同定ができ、H7N9亜型を含むインフルエンザウイルスとの鑑別診断が可能なため、これらMERSなどの新興ウイルスが流行した直後において検査法が構築できていない状況でも、既存ウイルスとの鑑別診断を検体採取も含め短時間に行えるため、新興再興感染症対策にも有用である。
 さらに、本システムが全国的に拡充されれば、臨床現場においてリアルタイムな病原体ウイルスサーベイランスが実現可能となり、S247N変異の検出と共に行政による発生動向の迅速かつ正確な把握を行う事で、地域レベルでの感染症対策にも有用となる。新型インフルエンザ等の新興感染症の出現に備えるためにも、本システムの様な安価で短時間に簡単に遺伝子検査を行えるマルチプルベッドサイド遺伝子検出系の開発は重要である。

公開日・更新日

公開日
2015-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201318004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本システムは核酸精製が不要でコンタミネーションリスクも無く、迅速診断キットと同等の簡便操作で検体採取から短時間で、高感度マルチプレックス遺伝子検査ができるという点で、また同時に複数の遺伝子を検出する事ができるという点から、インフルエンザのみならず他の呼吸器感染症を含むあらゆる遺伝子診断を高感度、特異的、迅速かつ簡便にベットサイドで行う事も可能で、感染症の予防、診断・治療といったわが国の感染症対策に大きく貢献する事が期待できる。
臨床的観点からの成果
本システムを使用する事により、臨床現場において診断のみならず、リアルタイムな病原体ウイルスサーベイランスが実現可能となる。
ガイドライン等の開発
全国の地方衛生研究所および検疫所で鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの検査を行うための鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス検出マニュアルを作成して配布した。
その他行政的観点からの成果
行政による発生動向の迅速かつ正確な把握を行う事で、地域レベルでの感染症対策にも有用となる。また、短時間に簡単に遺伝子検査を行えるマルチプルベッドサイド遺伝子検出系は、新型インフルエンザ等の新興感染症が出現した際にも、感染症対策に有用である。
その他のインパクト
2014年1月28日 読売新聞に記事掲載。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nobuhiro Takemae, Tung Nguyen, Long Thanh Ngo, et al.
Antigenic variation of H1N1, H1N2 and H3N2 swine influenza viruses in Japan and Vietnam
Archives of Virology , 158 (4) , 859-876  (2013)
原著論文2
Ikuyo Takayama, Mina Nakauchi, Seiichiro Fujisaki, et al
Rapid detection of the S247N neuraminidase mutation in influenza A(H1N1)pdm09 virus by one-step duplex RT-PCR assay.
Journal of Virological Methods , 188 (1-2) , 73-75  (2013)
原著論文3
Miho Kobayashi, Ikuyo Takayama, Tsutomu Kageyama, et al
Novel Reassortant Influenza A(H1N2) Virus Derived from A(H1N1)pdm09 Virus Isolated from Swine, Japan, 2012.
Emerg Infect Dis , 19 (12) , 1972-1974  (2013)
原著論文4
Tsutomu Kageyama, Seiichiro Fujisaki, Emi Takashita, et al
Genetic analysis of novel avian A(H7N9) influenza viruses isolated from patients in China, February to April 2013.
Euro Surveill. , 18 (15) , 20453-20468  (2013)
原著論文5
Atsushi Yamanaka, Akira Iwakiri, Kouji Sakai, et al
Acute respiratory tract infection caused by a novel orthoreovirus classified into the Nelson Bay orthoreovirus group.
PLoS ONE , 9 (3) , e92777-  (2014)
原著論文6
Tetsuo Nakayama, Akihito Sawada, Hideyuki Kubo, et al
Simple method for differentiating measles vaccine from wild-type strains using loop-mediated isothermal amplification.
Microbiogy and Immunology , 57 (3) , 246-251  (2013)
原著論文7
Mina Nakauchi, Ikuyo Takayama, Hitoshi Takahashi, et al.
Development of a reverse transcription loop-mediated isothermal amplification assay for the rapid diagnosis of avian influenza A (H7N9) virus infection.
Journal of Virological Methods  (2014)
原著論文8
Mina Nakauchi, Ikuyo Takayama, Hitoshi Takahashi, et al.
Real-time RT-PCR assays for discriminating influenza B virus Yamagata and Victoria lineages.
J Virol Methods  (2014)
原著論文9
Mie Kobayashi-Ishihara, Hitoshi Takahashi, Kazuo Ohnishi, et al.
Broad Cross-Reactive Epitopes of the H5N1 Influenza Virus Identified by Murine Antibodies Against the A/Vietnam/1194/2004 Hemagglutinin
Plos One  (2014)
原著論文10
Kazuo Ohnishi, Yoshimasa Takahashi, Naoko Kono, et al.
Newly established monoclonal antibodies for immunological detection of H5N1 influenza virus
Japanese Journal of Infectious Diseases  (2012)
原著論文11
大場邦弘, 影山 努
インフルエンザウイルス型・亜型同定検査-既存の検査法と新規マイクロ流路チップを用いたポイント・オブ・ケア遺伝子検査法の臨床的有用性の比較について-.
小児科臨床 , 2641 (12) , 2635-2641  (2012)
原著論文12
大場邦弘, 小林 匠, 甘利昭一郎, 他
Reverse transcription-Loop-mediated Isothermal Amplification(RT-LAMP)法を用いたA型およびH1 pdm 2009インフルエンザウイルス検出キットの臨床的有用性の検討
小児科臨床  (2012)
原著論文13
田中智子, 大場邦弘, 小田智三, 他
A/H3亜型,B型インフルエンザウイルス重複感染により中枢神経症状をきたした2例
感染症学雑誌  (2013)

公開日・更新日

公開日
2014-06-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201318004Z