文献情報
文献番号
201318001A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における効果的な結核対策の強化に関する研究
課題番号
H23-新興-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
石川 信克(公益財団法人結核予防会 結核研究所 )
研究分担者(所属機関)
- 御手洗 聡(公益財団法人結核予防会 結核研究所 )
- 岡田 全司(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター)
- 阿彦 忠之(山形県健康福祉部(兼)山形県衛生研究所)
- 内村 和広(公益財団法人結核予防会 結核研究所 )
- 大角 晃弘(公益財団法人結核予防会 結核研究所 )
- 吉山 崇(公益財団法人結核予防会複十字病院(兼)公益財団法人結核予防会結核研究所)
- 伊藤 邦彦(公益財団法人結核予防会 結核研究所 )
- 松本 健二(大阪市保健所)
- 貞升 健志(東京都健康安全研究センター)
- 下内 昭(公益財団法人結核予防会 結核研究所 )
- 加藤 誠也(公益財団法人結核予防会 結核研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
20,612,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国の結核は、漸次低まん延化に向けて進んでいるが、罹患状況は複雑化しており、高齢者、都市、社会経済的弱者、医学的リスク者などに偏在化しつつある。これらに対しては一律の対策でなく、地域や集団の特性に対応した対策への移行が重要になってきている。本研究は各地域での結核対策のあり方に寄与しようする総合的対策研究である。
研究方法
対策立案上の基礎となる「各地域での感染・疫学(主にサーベイランス)に関する研究」と、「具体的な介入手法に関する研究」の2つの柱で構成され、菌に関する細菌学的研究に加え、文献レビュー・サーベイランスデータ分析・実地介入調査・アンケート調査等様々な手法を組み合わせて行った。
結果と考察
病原体サーベイランスでは、県衛生研究所を中心にした病原体サーベイランス体制構築の試行を行い、システム構築過程についての知見を集積するとともに、収集した菌についての分子情報の解析を行い、集団感染の探知やその否定、東京圏からの新型北京株の拡散の可能性などが示された。また全国で分離され結核研究所菌バンクに収集された結核菌のVNTR解析により、新たな効率的遺伝子型別の可能性が示された。更に、従来困難であったピラジナミド(PZA)感受性試験の精度保証のための検討を行い、現行法の問題点や新遺伝子の発見、パネルテストのための菌株確保などを行った。低まん延地域の山形県では前年までの研究により、VNTR分析と保健所実地調査による各クラスタ内患者間の関連性の分析で高齢者間でも最近の感染や再感染があることが明らかになったことから、高齢者でのIGRA検査の検討を行い、同集団でのIGRAの有用性を示した。またこれらの知見等を取り入れ国の「接触者検診の手引き第5版」を公開した。疫学的サーベイランスにおける精度分析では、一定の割合で届出されていない結核患者の存在が推定され、菌情報等からの2重チェック体制の必要性が示唆された。疫学的サーベイランスを用いた詳細解析の実例としては、結核患者の死亡と経済社会的要因との関連の検証を行い、無保険、無職・臨時日雇いの治療後の死亡が高いなど、社会経済的支援の有無が治療予後に影響することを示した。新宿区でのGIS(地理情報システム)を用いた解析では、一般患者、外国人、住所不定者ともに地域的集積性があること、菌株クラスタに属する患者が多く感染の場と推定される地域として新宿駅周辺、遊興飲食店、宿泊、娯楽業などが考えられることを示した。またGISの応用として結核病床と新規結核患者間の需給バランスを分析し、他の感染症病床等の活用が需給バランス是正に有効である可能性を示した。介入手法研究分野では、様々な医学的・社会的リスク要因に関し、相対危険度、人口寄与割合を本邦で初めて推定した。本研究での介入試行として、高齢者施設、刑事施設、喫煙、糖尿病などいくつかの要因に対する対策の手引きを作成した。院内感染対策としては、全国国立病院機構施設の職員の結核発症の実態調査により、結核診療施設でなくても感染が起こっていること、定期検診の不備や結核への関心度の低さなどが関係あることを示した。MDR/XDR患者への新薬の適用への準備として、慢性排菌患者の実態の全国調査を行い、毎年20例ほどの発生があることを推定、その多くは、合併症等で治療が困難であり、新薬一剤が登場しても課題が残ることを示した。大阪におけるホームレス集団の重症化要因の検討からは、ホームレス健診が結核患者の重症化を防ぐ早期発見に寄与していることを示した。潜在結核感染LTBIの登録に関し、最近の増減に対する分析を行い、多種要因の関与を示した。結核医療の質評価の面では新たな治療成績指標候補の一つとして治療開始後1年以内治療完了率の妥当性を示しさらに非典型的治療例での治療完了次期算出方法の開発を行った。
結論
今後の地域における結核対策における、病原体サーベイランスを含む疫学状況の分析と一般的対策および各リスクグループへの個別対策の立案実施に直接寄与し得る成果を得た。また、これらに関して「接触者健康診断」をはじめ「刑事施設における結核対策」等、複数の手引きを作成した。
公開日・更新日
公開日
2015-03-31
更新日
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