中枢性脱髄障害の神経組織修復に関する研究

文献情報

文献番号
201317111A
報告書区分
総括
研究課題名
中枢性脱髄障害の神経組織修復に関する研究
課題番号
H25-神経-筋-若手-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
村松 里衣子(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
.研究目的
本研究の目標は、中枢性脱髄疾患に対する新規治療標的分子を発掘し、臨床応用への展開への足がかりを構築することである。炎症・外傷・代謝異常・感染症・血管障害などにより、有髄神経の髄鞘が障害される。髄鞘は、神経活動電位の伝導速度の維持や、髄鞘内部の軸索の恒常性の維持に寄与するため、髄鞘の傷害は様々な神経機能障害をもたらすと考えられている。髄鞘は、オリゴデンドロサイトから構成される。成体の脳脊髄には、オリゴデンドロサイトの前駆細胞 (oligodendrocyte precursor cell, OPC) が広く配置しており、脱髄後の髄鞘修復は、OPCが脱髄領域へ遊走した後に成熟オリゴデンドロサイトへと分化することで完成する。従って、OPCの遊走を促すメカニズムを解明し、その作用を高めることで、中枢性脱髄疾患に対して治療効果が発揮されると考えられる。しかし、OPCの遊走機構については、不明な点が多かった。
我々はこれまでに、脱髄領域において旺盛な血管の増生を観察しており、ここで新たに形成した血管に由来するプロスタサイクリンという生理活性物質が、傷ついた神経軸索を修復させることを報告している (Muramatsu et al., Nature Med. 2012)。プロスタサイクリンの受容体は、循環系ではIP受容体と知られているが、我々は中枢神経系の神経細胞にもIP受容体が発現しており、プロスタサイクリンはIP受容体に働きかけることで神経回路の修復を導くことがわかった。この研究を進めて行く中で、中枢神経系におけるIP受容体の発現解析を行ったところ、OPCにもIP受容体が発現していることがわかった。このことから、プロスタサイクリンはOPCにも作用し、中枢性脱髄疾患における組織修復に対して治療効果を発揮すると考えた。
研究方法
プロスタサイクリンによる培養OPCの遊走に対す効果を検証した。
中枢性脱髄モデルを作成し、プロスタサイクリン類似体処置による髄鞘修復効果を検討した。
中枢性脱髄モデルを作成し、プロスタサイクリン類似体処置による神経機能障害に対する治療効果を検討した。
結果と考察
プロスタサイクリンはOPCの遊走を促進させることが示された。脱髄モデルマウスへプロスタサイクリン類似体を処置すると、髄鞘の修復が促進した。また脱髄に伴う運動機能障害が、プロスタサイクリン類似体処置により改善した。
結論
本研究によって、中枢性脱髄障害後の髄鞘の自然修復に、プロスタサイクリンが関与すること、またプロスタサイクリンの作用を高めることで、髄鞘の修復が促進することが明らかになった。今後、プロスタサイクリンが中枢性脱髄障害にいかにしてはたらきかけるか、詳細な解析を進めることで、治療薬剤としての可能性を高めることに繋がると期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317111Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,800,000円
(2)補助金確定額
3,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,800,000円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 1,140,000円
合計 4,940,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-