TGF-βシグナルに注目したCARASILの画期的治療方法の開発

文献情報

文献番号
201317108A
報告書区分
総括
研究課題名
TGF-βシグナルに注目したCARASILの画期的治療方法の開発
課題番号
H24-神経-筋-若手-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
野崎 洋明(新潟大学 医歯学系)
研究分担者(所属機関)
  • 小野寺 理(新潟大学 脳研究所)
  • 佐藤 俊哉(新潟大学 脳研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
CARASILはHTRA1遺伝子の変異によって発症する,劣性遺伝性の血管平滑筋変性を主体とする脳小血管病であり,HTRA1の機能低下によるTGF-βシグナルの亢進によって引き起こされる.申請者は,同遺伝子変異のヘテロ接合体でも脳小血管病を呈すること,それはHTRA1のプロテアーゼ残存活性と関連することを見出した.このことから,従来の想定より多くのCARASIL患者がいる可能性がある.しかし有効な治療方法は開発されていない.
CARASILと同様にTGF-βシグナルの亢進によって引き起こされるMarfan症候群は,TGF-βシグナルを抑制するアンギオテンシンI型受容体拮抗薬が奏功する.申請者は,22ヵ月齢以降のHtra1欠損マウスの脳小血管では,CARASIL患者と同様に血管平滑筋の変性がおこることをすでに明らかにした(未発表データ).この病態はCARASILに類似しており,Htra1欠損マウスは理想的な疾患モデル動物である.本研究では,同マウスを用いて,脳内移行が良好でTGF-βシグナルの阻害作用を有するアンギオテンシンI型受容体拮抗薬candesartanの効果を検討する.
研究方法
CARASILのモデル動物であるHtra1欠損マウスを用いて,16ヵ月齢から24ヵ月齢まで,placebo,candesartan 3.0 mg/kg/day, amlodipine 10.0 mg/kg/dayをそれぞれ内服投与した群を用意し,脳小血管の血管平滑筋細胞とペリサイトの変性を定量化した指標を使用して,薬剤の治療効果を検討した.
結果と考察
Placebo投与群に比べて,candesartan投与群,amlodipine投与群のいずれにおいても,ペリサイト被覆率,血管平滑筋細胞面積ともに,有意に高値であった.このことは,candesartanとamlodipineのいずれも脳小血管の変性を抑制することを示している.
CandesartanはTGF-βシグナルの亢進を抑制することによって,脳小血管の病理変化を軽減することが想定される.しかし,本年度の研究結果からは,candesartan群だけでなく,対照薬剤のamlodipine投与群でもHtra1欠損マウスにおける脳小血管変性の抑制効果を認めた.このことは,両薬剤がTGF-βシグナルを抑制することによってではなく,降圧作用によって,脳小血管変性の抑制効果を示した可能性を示唆している.この検証のため,来年度は新たなTGF-βシグナルの検出方法を用いて,薬剤が効果を示す分子病態機序についても明らかにする方針である.
結論
Candesartanとamlodipineは,CARASILモデルマウスにおける脳小血管の変性を抑制する.

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-05-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317108Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,870,000円
(2)補助金確定額
0円
差引額 [(1)-(2)]
4,870,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,275,778円
人件費・謝金 0円
旅費 311,107円
その他 1,163,115円
間接経費 1,120,000円
合計 4,870,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
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