早期遺伝子診断後の臨床応用を目指した遺伝性難聴の高効率内耳細胞治療法の開発

文献情報

文献番号
201317098A
報告書区分
総括
研究課題名
早期遺伝子診断後の臨床応用を目指した遺伝性難聴の高効率内耳細胞治療法の開発
課題番号
H23-感覚-若手-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 和作(順天堂大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 美野輪 治(理化学研究所バイオリソースセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,086,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝性難聴は約1,600出生に1人と高頻度に発症し聴覚と言語発育障害の極めて高度なQOLの低下をもたらす。遺伝性難聴の根本的治療法は未だ存在しないが、我々は骨髄間葉系幹細胞を使って蝸牛線維細胞損傷モデルの聴力を改善させる方法を開発し報告している。本研究では我々の開発した内耳への幹細胞移植法を応用し、遺伝性難聴、特に同疾患で最も高頻度に発生するコネキシン26(Cx26)遺伝子のモデル動物による治療標的解明のための分子病態解析とその結果に基づくiPS細胞等の幹細胞治を用いた聴力回復実験により未だ存在しない遺伝性難聴の根本的治療法を開発することを目的とした。
研究方法
遺伝性難聴モデルとしては我々が開発した1.Cx26欠損マウス、2.Cx26優性阻害変異マウス、3.Brn4欠損マウス(ヒトDFN3難聴モデル)、4.Barttin変異導入マウス(Bartter症候群モデル)を用い治療標的探索のための分子病態解析を行った。幹細胞治療では、内耳への移植細胞として骨髄間葉系幹細胞、人工多能性幹(iPS)細胞由来内耳前駆細胞、生体内耳幹細胞を用いた。移植細胞は半規管の外リンパ液還流法によって内耳に投与し、聴性脳幹反応(ABR)によってモニタリングした。
結果と考察
本研究では臨床において重要度の高い遺伝性難聴のための独自の疾患モデルを用いた治療法開発を目的とした研究を行った。これらの疾患モデルは全て蝸牛イオン輸送に機能障害を有する共通点を持ち、これらの分子病態解析での標的探索により治療法開発が大きく進展した。特に近年各種臓器において明らかとなった幹細胞ホーミングの分子機構に関しては、内耳において初めて蝸牛組織への幹細胞誘導機構が明らかとなった。この方法を発展させたiPS由来内耳前駆細胞、骨髄間葉系幹細胞、Cx26を搭載したアデノ随伴ウイルス(AAV)を混合治療液とした遺伝子・細胞混合治療実験では、高周波数(40kHz)において治療後1週間で20db SPL程度の聴力回復効果が確認され長期的に更なる聴力回復が期待できる。同モデルにおける我々の遺伝子治療実験では、成熟個体に関してはウイルス単独での聴力回復は不可能であったが、iPS細胞等の幹細胞治療を混合することにより相乗的効果が得られたと考えられる。これまで遺伝子改変‐遺伝性難聴モデルの聴力回復に成功した例はなく幹細胞治療での遺伝性難聴治療の初めての成功例である。移植後の幹細胞の生体イメージングにも成功しており、同方法を発展させ多量の多能性幹細胞を蝸牛組織内へ誘導し、これまで不可能であった遺伝性難聴の聴力改善を現実化させることが大いに期待できる。
結論
本研究では臨床において重要度の高い遺伝性難聴のための独自の疾患モデルを用いた治療法開発を目的とした研究を行った。これまで遺伝子改変‐遺伝性難聴モデルの聴力回復に成功した例はなく幹細胞治療での遺伝性難聴治療の初めての成功例である。移植後の幹細胞の生体イメージングにも成功しており、同方法を発展させ多量の多能性幹細胞を蝸牛組織内へ誘導し、これまで不可能であった遺伝性難聴の聴力改善を現実化させることが大いに期待できる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201317098B
報告書区分
総合
研究課題名
早期遺伝子診断後の臨床応用を目指した遺伝性難聴の高効率内耳細胞治療法の開発
課題番号
H23-感覚-若手-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 和作(順天堂大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝性難聴は約1,600出生に1人と高頻度に発症し聴覚と言語発育障害の極めて高度なQOLの低下をもたらす。遺伝性難聴の根本的治療法は未だ存在しないが、我々は骨髄間葉系幹細胞を使って蝸牛線維細胞損傷モデルの聴力を改善させる方法を開発し報告している。本研究では我々の開発した内耳への幹細胞移植法を応用し、遺伝性難聴、特に同疾患で最も高頻度に発生するコネキシン26(Cx26)遺伝子のモデル動物による治療標的解明のための分子病態解析とその結果に基づくiPS細胞等の幹細胞治を用いた聴力回復実験により未だ存在しない遺伝性難聴の根本的治療法を開発することを目的とした。
研究方法
遺伝性難聴モデルとしては我々が開発した1.Cx26欠損マウス、2.Cx26優性阻害変異マウス、3.Brn4欠損マウス(ヒトDFN3難聴モデル)、4.Barttin変異導入マウス(Bartter症候群モデル)を用い治療標的探索のための分子病態解析を行った。幹細胞治療では、内耳への移植細胞として骨髄間葉系幹細胞、人工多能性幹(iPS)細胞由来内耳前駆細胞、生体内耳幹細胞を用いた。移植細胞は半規管の外リンパ液還流法によって内耳に投与し、聴性脳幹反応(ABR)によってモニタリングした。
結果と考察
遺伝子発現解析により蝸牛組織から分泌されるホーミングリガンド因子としてMCP1およびSDF1が同定された。更に移植幹細胞においても、これらの受容体CCR2、CXCR4の発現を大きく上昇させることに成功した。同方法でCx26cKOマウスにおけるホーミングリガンドと移植細胞のホーミング受容体を同時に惹起して内耳細胞移植を行ったところ、無処置条件に比べ蝸牛への細胞導入効率が約66倍に上昇し、標的とした蝸牛ラセン靭帯や血管条へも幹細胞導入が可能となった。
また蝸牛組織由来生体内耳幹細胞とiPS由来細胞を共培養する条件検討により移植用内耳前駆細胞を樹立した。
移植幹細胞の生体内での可視化(in vivoイメージング)にも初めて成功した。更にCx26欠損モデルに対し、前述のiPS由来内耳前駆細胞、骨髄間葉系幹細胞、Cx26を搭載したアデノ随伴ウイルス(AAV)を混合治療液とした外リンパ液還流法を試みた。この遺伝子/細胞混合治療実験では、高周波数(40kHz)において治療後1週間で20db SPL程度の聴力回復効果が確認された。
結論
本研究では臨床において重要度の高い遺伝性難聴のための独自の疾患モデルを用いた治療法開発を目的とした研究を行った。これまで遺伝子改変‐遺伝性難聴モデルの聴力回復に成功した例はなく幹細胞治療での遺伝性難聴治療の初めての成功例である。移植後の幹細胞の生体イメージングにも成功しており、同方法を発展させ多量の多能性幹細胞を蝸牛組織内へ誘導し、これまで不可能であった遺伝性難聴の聴力改善を現実化させることが大いに期待できる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201317098C

収支報告書

文献番号
201317098Z