文献情報
文献番号
201317096A
報告書区分
総括
研究課題名
向精神薬の処方実態に関する研究
課題番号
H25-精神-指定-011
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
中込 和幸(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 臨床研究推進部)
研究分担者(所属機関)
- 三島 和夫(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神生理研究部)
- 中川 敦夫(慶應義塾大学医学部クリニカルリサーチセンター)
- 稲垣 中(青山学院大学国際政治経済学部)
- 伊藤 弘人(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会精神保健研究部)
- 奥村 泰之(一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
職名変更
研究代表者 中込和幸
職名 トランスレーショナル・メディカルセンター 臨床研究支援部長 → 病院 臨床研究推進部長(平成25年10月1日以降)
所属機関異動
研究分担者 稲垣 中
所属機関 公益財団法人神経研究所臨床精神薬理センター 副センター長 → 青山学院大学国際政治経済学部 教授(平成25年9月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、既存の疫学研究、臨床研究のデータを用いてわが国の向精神薬の処方実態を明らかにすることを目的とする。とくに、平成22年度データと比較することによって、わが国における向精神薬の近年の処方動向を明らかにするとともに、20歳未満の若年者における向精神薬の処方の実態および薬物相互作用の観点から向精神薬の併用療法を見直すことを目的とする。
研究方法
平成22年度と同様に、経年診療報酬データおよび診療録などの既存資料を用いて、向精神薬処方に関する実態調査研究を行い、平成22年度調査結果と比較を行い、処方動向を明らかにする。さらに、小児神経、児童精神を専門とする医療機関の診療録データを用いて20歳未満の若年者における向精神薬処方の実態調査を行う。また、向精神薬同士の併用に関する実態調査も併せて行う。新たに社会医療診療行為別調査や医療扶助実態調査などの大規模データを活用して、より一般化可能性の高い患者層に対する向精神薬の処方状況を解析する。さらに未成年の向精神薬の処方件数なども明らかにする。また、抗精神病薬の主な代謝酵素であるCYPとQTc延長との関連、抗精神病薬、従来型抗うつ薬、新規抗うつ薬がQTc延長のリスクファクターとなるか、について検証する。
わが国では、米国と比較して抗うつ薬の処方率が低い、向精神薬の多剤併用が多いなど、処方パターンがガイドラインで示される指針と異なる場合が少なくない。そこで日本のA大学および米国のB大学C総合病院のそれぞれ精神科専修医の間で、共通のケースビネットを用いて処方選択について比較を行い、その選択に影響を及ぼす要因について検証する。
わが国では、米国と比較して抗うつ薬の処方率が低い、向精神薬の多剤併用が多いなど、処方パターンがガイドラインで示される指針と異なる場合が少なくない。そこで日本のA大学および米国のB大学C総合病院のそれぞれ精神科専修医の間で、共通のケースビネットを用いて処方選択について比較を行い、その選択に影響を及ぼす要因について検証する。
結果と考察
経年データの検証の結果、睡眠薬、抗うつ薬の処方率は2010年度以降、同水準ないしは低下傾向にあることが明らかにされた。とくに抗うつ薬では単剤化が進んでおり、過剰な処方が抑制される方向に向かっている可能性が示唆された。小児への向精神薬の使用については、成人に対する処方と比べて併用率は低く、また約1/4のケースは薬物を使用せずに受療している。一方、より大規模なデータベースを用いた検証から、小児において抗精神病薬の使用量が増加している傾向が認められており、どのような疾患に対して使用されているのか、より詳細な情報が必要である。QTc延長のリスクとして、男性であること、加齢、エスシタロプラム投与、リチウム投与、ドネペジル投与、徐脈、高齢女性におけるハロペリドールとゾテピンの併用療法、などいくつかの要因が示唆されたが、服用量、CYPの基質及び阻害薬の併用による影響については明らかにされなかった。
日本の精神科医師は、薬物選択において診療ガイドラインを情報源とするのに対して、米国では上級医からのスーパービジョンを重視する傾向が認められた。また、日本人医師はベンゾジアゼピン使用に寛大であること、治療が奏功しない場合、薬物の変薬より上乗せを好むこと、「軽症うつ」に対して「特異的な精神療法(CBT、IPT、力動的精神療法など)」を選択する率が低いこと等が両国間の差異として認められた。薬物選択において、診療ガイドラインを情報源として重視しながら、「軽症うつ」に対する治療法に関しては必ずしも診療ガイドラインとは一致しない回答がみられるなど、わが国での実施可能性に配慮したガイドライン作りが望まれる。
日本の精神科医師は、薬物選択において診療ガイドラインを情報源とするのに対して、米国では上級医からのスーパービジョンを重視する傾向が認められた。また、日本人医師はベンゾジアゼピン使用に寛大であること、治療が奏功しない場合、薬物の変薬より上乗せを好むこと、「軽症うつ」に対して「特異的な精神療法(CBT、IPT、力動的精神療法など)」を選択する率が低いこと等が両国間の差異として認められた。薬物選択において、診療ガイドラインを情報源として重視しながら、「軽症うつ」に対する治療法に関しては必ずしも診療ガイドラインとは一致しない回答がみられるなど、わが国での実施可能性に配慮したガイドライン作りが望まれる。
結論
1.睡眠薬、抗うつ薬の処方率は2010年度以降、同水準ないしは低下傾向にある。抗うつ薬については、単剤化率が上昇している。
2.小児への向精神薬の使用については、成人に対する処方と比べて併用率は低く、また約1/4のケースは薬物を使用せずに受療している。
3.より大規模なデータベースを用いた検証から、小児において抗精神病薬の使用量が増加している傾向が認められた。
4.QTc延長のリスクとして、男性であること、加齢、エスシタロプラム投与、リチウム投与、ドネペジル投与、徐脈、高齢女性におけるハロペリドールとゾテピンの併用療法、などいくつかの要因が示唆されたが、服用量、CYPの基質及び阻害薬の併用による影響については明らかにされなかった。
5.日本の精神科医師は、薬物選択において診療ガイドラインを情報源とするのに対して、米国では上級医からのスーパービジョンを重視する傾向が認められた。また、日本人医師はベンゾジアゼピン使用に寛大であること、治療が奏功しない場合、薬物の変薬より上乗せを好むこと、「軽症うつ」に対して「特異的な精神療法(CBT、IPT、力動的精神療法など)」を選択する率が低いこと等が両国間の差異として認められた。
2.小児への向精神薬の使用については、成人に対する処方と比べて併用率は低く、また約1/4のケースは薬物を使用せずに受療している。
3.より大規模なデータベースを用いた検証から、小児において抗精神病薬の使用量が増加している傾向が認められた。
4.QTc延長のリスクとして、男性であること、加齢、エスシタロプラム投与、リチウム投与、ドネペジル投与、徐脈、高齢女性におけるハロペリドールとゾテピンの併用療法、などいくつかの要因が示唆されたが、服用量、CYPの基質及び阻害薬の併用による影響については明らかにされなかった。
5.日本の精神科医師は、薬物選択において診療ガイドラインを情報源とするのに対して、米国では上級医からのスーパービジョンを重視する傾向が認められた。また、日本人医師はベンゾジアゼピン使用に寛大であること、治療が奏功しない場合、薬物の変薬より上乗せを好むこと、「軽症うつ」に対して「特異的な精神療法(CBT、IPT、力動的精神療法など)」を選択する率が低いこと等が両国間の差異として認められた。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
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