在宅介護者のストレス自己診断テストおよびストレス・マネジメント・プログラムの開発

文献情報

文献番号
199800238A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅介護者のストレス自己診断テストおよびストレス・マネジメント・プログラムの開発
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 昌久(早稲田大学)
研究分担者(所属機関)
  • 児玉桂子(日本社会事業大学)
  • 小林能成(上智大学)
  • 城佳子(早稲田大学)
  • 椎原康史(群馬大学)
  • 藤原真理(国立精神・神経センター・精神保健研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
7,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ディケアセンターや在宅介護支援センターを利用する在宅高齢介護者に、環境条件、要介護者の状態を含め、介護者のストレスに関する面接調査を行い、介護に携わる過程で生じるストレスの内容や程度を、自分で把握でき、かつそれに対する対処方法を指示できる自己診断テストを作成した。このテスト結果に連動する、基づいた在宅高齢介護者用のストレス・マネジメント・プログラムの開発を試みた。刺激次元のマネジメント法として、児玉らの研究(児玉・筒井,1993,児玉他,1994,児玉・児玉1995)に基づく環境調整による効果の検討を、主として認知評価次元の手法として、城・児玉(1998)による情動調整による効果を検討した。短期的変化次元では自律神経系活動のリラクセーション手法として呼吸調整法を,体性神経系活動のリラクセーション法として筋緊張の調整法を、バイオフィードバックあるいは漸進的筋弛緩法などの観点から、自分自身での実施容易性を検討した。長期的変化次元では生活習慣の改善に結びつけやすい軽運動を用いた運動調整法を検討の対象とした。
研究方法
1. 在宅介護者のストレス自己診断テストの開発前年度のテスト試案に修正を加え、在宅介護者を対象に妥当性、信頼性の検討を行って、テストを完成させた、対象者の地域的文化差を考慮して、北海道地区(札幌)、東北地区(秋田)、東京、関東地区(水上)、東海地区(名古屋)、近畿地区(神戸)、四国地区(松山)、九州地区(熊本)、南西諸島(沖縄)で在宅介護者に面接調査を行い、データを補った。これらの地区の一部では、ストレスマネジメント技法の実行可能性の検討のため、実験的にマネジメントを実施した。
2. ストレス・マネジメント各手法は、1)先行研究からマネジメントに有効で、かつ、在宅介護者が自宅で独力で実践することの可能な方法を抽出する文献研究、2)面接あるいは質問紙による問題点抽出の調査研究、3)実施による実行可能性の検討、4)マネジメント効果の測定、のプロセスを通してプログラム化を試みた。
結果と考察
面接調査を行ったストレス自己診断テストは、調査対象の地域文化的偏りを是正したデータに基づき、妥当性、信頼性の検証、因子構造の確認が行われ、在宅介護者の属性によるストレス反応の特異性の抽出力も検証された。
ストレス・マネジメント・プログラムを構成する諸方法として選択された技法に関する研究の進捗状況は、以下のとうりである。
1) 環境調整によるストレス・マネジメントは、在宅介護者の居住環境とストレス反応との調査を行い、介護者にとってストレスと関連する環境条件を抽出した。これらの調整により期待できるストレス反応の軽減の確認が、次年度の課題である。
2) 情動調整によるストレス・マネジメントは、ReversalTheory に基づく情動調整のマネジメント効果の、在宅での実行可能性について検討した。実践可能な調整法試案が構成され、次年度の効果検証の準備ができている。
3) 呼吸調整によるストレス・マネジメントは、すでに定評を得ているリラクセーション法である。自宅で容易に継続実行できるプログラムにまとめられるか否かがこの研究の課題である。基礎的な実験データは得られたので、次年度は在宅介護者での検証に取り掛かることになる。
4) 緊張調整によるストレス・マネジメントの手法としてすでに評価を得ているものには、バイオフィードバック法と、漸進的筋弛緩法とがある。Jacobsonによって提唱された漸進的筋弛緩法は簡便で容易な優れた方法であるが、自身での効果の確認が、ことに開始期には困難である。この点で優れているバイオフィードバック法は、器具の使用、操作の習熟が必要である点が在宅介護者にとっての問題点である。この問題の解明と、両方法の連携が分担研究のポイントであった。本年度は介護者自身のみならず、介護者が要介護者に対して緊張調整を行うことにより、介護者のストレス軽減に有効となるかについても検討した。マネジメント手法としての有効性は、十分に示唆されたといえよう。
5) 運動が気分の転換やストレスの解消、体力、健康の増進に有効であることはすでに明らかであるが、個人が自宅で、ことに多忙な在宅介護者が生活様式を変えて継続することは大変困難である。日常の介護活動の合間に短時間で行える、簡便有効なプログラムを設定できるかが、この研究の狙いであった。北欧で開発、普及している体操を部分的に修正したものを考案し、在宅介護者に実施を試みた。運動そのものの効果は確認されたが、実施に協力した在宅介護者は、自発的に参加した高動機群であるため、継続容易性までは検討できず、次年度の課題となった。 
結論
1.3つの下位尺度で構成されるストレス自己診断テストが作成された。2.在宅介護者のストレス源となる環境要因が抽出され、改善のポイントが明確にされた。3.在宅介護者の気分の切り替えの重要性およびそれを操作する方法が明らかにされた。4.呼吸調整のストレス軽減効果が確認され、在宅介護者用のプログラム試案が作成された。5.バイオフィードバック法および漸進的弛緩法の在宅介護者に対する適用可能性が検討され、同時に効果が確認された。6.在宅介護者用の軽運動プログラムが作成され、実施の結果、効果が確認された。

公開日・更新日

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