縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーに対するさらに高い効果の期待される治療薬の開発

文献情報

文献番号
201317089A
報告書区分
総括
研究課題名
縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーに対するさらに高い効果の期待される治療薬の開発
課題番号
H25-神経-筋-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
野口 悟(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 西野 一三(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第一部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本邦から世界に先駆けて報告された縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRV)を対象として、病気の進行を抑えつつ、罹患骨格筋を正常へ回復させる、より効果的な治療法の開発研究を行う。我々はモデルマウス(DMRVマウス)を独自に開発し、シアル酸の投与によって発症を予防することに成功し、シアル酸の低下こそが疾患原因であることを示し、根本的治療法の開発に成功した。本研究では、これまでの研究成果をさらに発展させ、DMRVマウスを用いて分子病態機構の詳細を明らかにすることで、治療の標的分子経路を具体的に設定し、さらなる効果的な治療薬の開発に取り組む。また、これまでの研究で全く行われていないような新たな治療法や治療薬の開発にも挑むことを目的とする。
研究方法
 DMRVのモデルマウスはGNE-KOマウスと変異GNEトランスジェニックマウスとの掛け合わせにより作製した。骨格筋特異的オートファジー欠損マウスは、Atg7floxマウスとMucreA Tgマウスを掛け合わせることで作製した。本研究では両者の掛け合わせを行った。In vitroでの単離骨格筋の収縮力テストは、単離腓腹筋および前頸骨筋を用いて、生理食塩水中で単収縮力及び強縮力を測定した。
 細胞への投与薬物として市販の薬物ライブラリー(1621化合物)を用いた。GNE遺伝子のナンセンス変異またはミスセンス変異をもつCHO細胞(Lec3.6F: および Lec3.4B)を無血清にて培養し、Lec3.6Fに対しては、0.1mMシアル酸とともに100倍希釈にて薬物を投与した。Lec3.4Bに対しては薬物のみを投与した。投与後、細胞を固定し、細胞シアリル化は2種類のビオチン化レクチンでの染色、または細胞毒性等を蛍光プレートリーダーにより測定した。
結果と考察
 DMRVモデルマウス(GNE-/-•hGNETg)と骨格筋特異的オートファジー欠損マウス(Atg7flox/flox•MucreATg)の掛け合わせを進めている。また、40週齢での骨格筋特異的オートファジー欠損マウス腓腹筋の単収縮力はDMRVモデルマウスとほぼ同様であったが、強縮力はDMRVモデルマウスを下回っていた。前頸骨筋においても同様の結果が得られた。予備的解析において、骨格筋特異的オートファジー欠損マウスは、8-9ヶ月齢において拡張型心筋症の症状を呈し、突然死した。野生型マウスとのバッククロス及び掛け合わせを繰り返した結果、8-9ヶ月齢における突然死は見られなくなった。40週齢における骨格筋特異的オートファジー欠損マウスの筋力は、DMRVマウスと同様か、少し弱い程度であったため、掛け合わせにより作製するマウスの表現型の解析には問題はないものと考えている。
 Lec3.6F細胞(p.E35stop)での一次スクリーニングにより、9種類の化合物が、低濃度シアル酸添加における細胞シアリル化の陽性を示した。また、Lec3.4B(p.G135E)での一次スクリーニングにより、シアル酸非添加において細胞シアリル化の陽性を示す17種類の化合物が同定された。このうち、4種の化合物は両方に含まれており、この4種類の化合物はシアル酸の代謝経路の修飾を行っている可能性を考えている。一方、DMRV患者はGNE遺伝子にミスセンスを持つが、このミスセンス変異は弱い活性を持つことが知られている。Lec3.4Bにて見つかった13種類の化合物は、活性部位の修飾またはその周りの構造変化によって、酵素活性を上昇させた可能性を考えている。また、この中には共通の骨格構造を持つ化合物が複数含まれており、このスクリーニングがうまく進んでいることが伺われた。今後は、2次スクリーニングを進めるとともに、ターゲット部位や作用機序の解明を目指して行きたい。一方、Lec3.6F細胞で同定された9種類の化合物が同定され、GNEタンパク質以外のシアル酸生合成の活性化と考えられた。今後は、活性化の標的、生合成過程の同定を行っていく。また、活性がある化合物に関しては、モデルマウスでの前臨床研究を視野に入れて解析を進めようと考えている。また、今回の解析では、特定のGNE変異をもつ細胞株を用いたが、Lec3.6F細胞に変異GNEを導入することで、DMRV患者で同定されているGNE変異への応用も可能である。
結論
発生工学的手法を用いて、DMRV骨格筋特異的オートファジー不全マウスを作製し、DMRV筋におけるオートファジーの役割の解明を目指した。
 市販の薬物ライブのスクリーニングでは、GNE遺伝子変異をもつ細胞のシアリル化の回復させる化合物が同定された。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317089Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
27,300,000円
(2)補助金確定額
27,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,299,487円
人件費・謝金 12,585,021円
旅費 881,112円
その他 5,234,380円
間接経費 6,300,000円
合計 27,300,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
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