筋ジストロフィー患者のリハビリテーションに用いる尿中病態マーカー物質の測定法

文献情報

文献番号
201317084A
報告書区分
総括
研究課題名
筋ジストロフィー患者のリハビリテーションに用いる尿中病態マーカー物質の測定法
課題番号
H24-神経-筋-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
裏出 良博(筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構)
研究分担者(所属機関)
  • 松尾 雅文(神戸学院大学 総合リハビリテーション部)
  • 竹内 敦子(神戸薬科大学 薬学部)
  • 岩田 裕子(国立循環器病研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
12,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1) 病態の非侵襲かつ客観的評価
DMD患者の病態進行度の評価は運動機能や筋力測定以外になく、患者のモチベーションに左右される上、負荷が筋傷害を進行させる可能性もある。一方、尿中PGD2代謝物による進行マーカーが確立できれば、非侵襲的かつ迅速簡便に病態を定量的に評価できる。
(2) 治療方法選択、治療効果の検証
本申請の尿中代謝物評価は非侵襲的な試料採取方法であり、測定回数を制限されないため、詳細に効果検証が可能となる。
(3) リハビリテーションメニューの最適化
尿中PGD2代謝物の測定では、筋肉への負担とリハビリ効果について診断できるため、適切なリハビリが可能となる。将来治療法が確立されれば、病態の進行が大きく遅延されることが期待されるため、適切なリハビリメニューの確立は、患者のQOLの向上に役立つ。

研究方法
アスピリン、ステロイド薬、HPGDS阻害薬を投与して、投薬効果と尿中代謝物量との関係について精査し、薬剤効果評価マーカーとしての有効性を明らかにする。
DMDモデルラットを樹立し、ヒトDMDの特徴と類似する筋萎縮症状の発現について評価する。各種心筋症モデル動物に上記薬物を投与して、その治療効果と尿中代謝物の相関を精査する。
DMDを含む各種筋ジス患者の病態進行度との関係を経時的に追跡調査する。尿中代謝物量によるリハビリ運動量のコントロールを調査する。
PGD2代謝物に対する高親和性抗体産生株を2株以上樹立する。
(1)樹立した抗体を用いたELISA検出法を確立する。
(2)樹立した抗体を用いてイムノスティックを試作する。


結果と考察
生体内でPGD2を産生できないPGD合成酵素欠損マウス (Balb/c系) にPGD2代謝物(PGDM-t)とキャリアタンパク質KLHの複合体を免疫して、PGDM-tに対して特異性の高い5種類のモノクローナル抗体を得た。それらを用いたEIA測定系を開発して尿試料に用いたところ、LC-MS/MSと良い相関を示したが測定値に大きな隔たりがあり、PGDM-tと免疫交差性を示す化合物が尿中に存在する可能性が示された。
DMDのモデル動物であるmdxマウスにH-PGDS阻害薬を与えると、尿中PGDM-tの抑制と関連した行動量の増加と壊死の抑制が認められた。
DMD患者は尿中にPGDM-tを多量に排泄することを明らかにした。また、他の筋疾患患者のなかにも尿中PGDM-tの高い症例が認められた。
拡張型心筋症モデル動物(ハムスターとマウス)では、尿中PGDM-t量が高値を示し、H-PGDS阻害薬を投与すると、心臓組織の繊維化が抑制して心機能が改善し、尿中PGDM-tが低下した。
シクロオキシゲナーゼの作用阻害の目的でアスピリンをDMD患者に投与した結果、PGDM-tの産生が抑えられた。今後、アスピリン投与によるDMDの治療効果を検討する。

結論
(1)PGD2代謝物(PGDM-t)に対する高い特異性を示すモノクローナル抗体を作成し、それらを用いたEIA測定法を作成した。
(2)筋ジストロフィーモデルマウスへのH-PGDS阻害薬の投与による病態の軽減と相関する尿中PGDM-tの抑制を確認した。心筋症モデル動物においても尿中PGDM-tの上昇を見出した。さらに、H-PGDS阻害薬投与による尿中PGDM-tの減少と心機能の改善も確認した。
(3)DMD患者の尿中PGDM-t濃度は健常者より高く、8歳以上になるとさらに上昇する。尿中PGDM-tはDMDの方がBMDより高く、他の筋疾患でも著しく高値を示す疾患がある。アスピリンをDMD患者に投与すると尿中PGDM-tが減少する。
(4)尿中PGDM-t濃度の測定は、DMD患者の病態進行度の進行マーカーとして有効である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317084Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,170,000円
(2)補助金確定額
16,170,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,013,761円
人件費・謝金 6,803,356円
旅費 470,685円
その他 462,198円
間接経費 3,420,000円
合計 16,170,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
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