精神保健医療制度に関する法制度の国際比較調査研究

文献情報

文献番号
201317072A
報告書区分
総括
研究課題名
精神保健医療制度に関する法制度の国際比較調査研究
課題番号
H25-精神-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
山本 輝之(成城大学 法学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 平成25年の精神保健福祉法の改正により、保護者制度が廃止され、それにともなって、医療保護入院の要件から保護者の同意を削除し、それに代わって、「その家族のうちのいずれかの者の同意」を要件とすることに改められた(法33条1項)。このような改正の背景には、さまざまな理由が存在すると考えられるが、その1つとして、保護者の同意を要件としない入院形態を新たに導入する場合、精神障害者の権利を擁護するための仕組みを新たに構築することが必要となるが、そのための十分な検討が未だなされていないということがあるように思われる。他方、このような改正に対しては、①精神障害者家族の負担を軽減するということが、保護者制度を廃止する大きな理由の1つであったにもかかわらず、今回の改正は、それを解消することにならない、②保護者制度の廃止の基礎には、地域精神医療の推進があったにもかかわらず、今回の改正は、依然として家族を精神障害者の医療とケアの責任者とする思想を維持するものであり、地域精神医療の実現を阻害することになるなどの多くの問題点も指摘されている。
 そこで、本研究は、諸外国における精神医療制度に関する法制度、とりわけ、非自発入院及び精神障害者の人権擁護に関する法制度を調査・研究し、その成果を踏まえて、わが国の法制度の新たな構築に向けて現実的で実現可能な具体的な提言を行うことを目的とするものである。本研究における調査・研究の期間として3年を予定しており、1年目である平成25年度は、①アメリカ(カリフォルニア州、ニューヨーク州)、②フランス、③イギリス、④韓国について調査・研究を行った。
研究方法
研究1年目である平成25年度は、①アメリカ(カリフォルニア州)(2013年10月27日~10月30日)、②フランス(2013年9月8日~9月12日)、③イギリス(2013年10月27日~11月2日)、④韓国(2013年10月13日~10月16日)に、分担研究者、研究協力者を派遣し、法執行機関、精神医療の現場等を訪問し、それぞれの担当者に面接・インタビューを行った。
結果と考察
(1)アメリカ―サンフランシスコ市の非自発入院の特徴は、第1に、入院期間が短いこと、第2に、非自発入院の定義や手続きが整備されていること、第3に、その手続きに法律家が関与すること、である。また、基本的に家族に責任を負わせず、行政が責任を負う制度が採用されている。(2)フランス―非自発入院の手続きに裁判所が関与し、精神障害者に限らずすべての患者について、信頼できる人を指名し、後見的役割を負わせており、患者の権利擁護も充実している。(3)イギリス―精神障害者の治療やケアに、患者にとって一番身近な存在である家族が一定の役割を果たすことが期待されている。患者の権利擁護者としての位置づけが明確にされている「最も近い関係者(Nearest relative)」の機能は、わが国の医療保護入院における「家族等」の機能を考えるうえで貴重な示唆を与えるものである。(4)韓国―保護義務者入院について、その対象を、重度精神障害者に限定し、その要件である自傷他害の危険には、患者自身の健康への危険を含むこととし、保護義務者の第1順位を後見人にするなどの改正が行われることになっている。
 以上のような調査結果は、わが国における新たな法制度の構築を考えるうえで参考になるものである。
結論
 平成25年度は、①アメリカ、②フランス、③イギリス、④韓国における、非自発入院に関する法制度の概要や運用実態、精神障害者、とりわけ非自発入院患者の人権を擁護するための制度、精神障害者の医療・ケアに関する家族の役割等について訪問調査を行った。それらの調査結果を詳細に分析・検討し、その成果を踏まえて、わが国の法制度の新たな構築に向けて具体的な提言を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201317072Z