医療観察法対象者の円滑な社会復帰促進に関する研究

文献情報

文献番号
201317069A
報告書区分
総括
研究課題名
医療観察法対象者の円滑な社会復帰促進に関する研究
課題番号
H25-精神-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
平林 直次(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 病院リハビリテーション部、第二精神診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 村上 優(独立行政法人国立病院機構 琉球病院)
  • 永田 貴子(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター)
  • 田口 寿子(東京都立松沢病院)
  • 村田 昌彦(独立行政法人国立病院機構 北陸病院)
  • 吉住 昭(独立行政法人国立病院機構 肥前精神医療センター)
  • 大橋 秀行(埼玉県立大学)
  • 村杉 謙次(独立行政法人国立病院機構 小諸高原病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
当班の研究期間は2年間であり、その1年目の研究結果の報告である。本研究班の主たる目的は、司法精神医療に関する基礎的データを収集・分析する欧米並みのシステムを構築すること、および質の高い社会復帰を促進することである。
研究方法
7つの研究分担班を組織し、6つの研究分担班で所属施設の倫理委員会の承認を事前に受けそれぞれ下記の研究を行った。
結果と考察
1. 医療観察法による医療情報等のデータベース構築に関する研究(村上優)
平成25年度には、全指定入院医療機関の全病床791床のうち434床(54%)でデータベース化が可能なネットワークシステム構築を完了した。厚生労働省および精神保健研究所とも協議し、平成26年度にはデータベース化を事業として着手する段階に到達した。また、基礎的データとして収集すべき項目を決定した。
2. 指定入院医療機関退院後の予後調査(永田貴子)
本予後調査により、通院処遇対象者の再他害行為、自殺、再入院の発生率が把握された。他害行為の発生は本法施行前の研究と比較すると低い水準に留まっていることが明らかとなった。
3. 再び重大な他害行為を行った対象者及び再入院者に関する調査(田口寿子)
平成25年度には、円滑な社会復帰を果たせなかった再入院群32例、再処遇群5例、処遇終了群34例について詳細な症例研究を実施し、入院処遇及び通院処遇における課題、医療観察制度をより有効なものにするための改善点を明らかにした。
4. 入院処遇から通院処遇を経ないで処遇終了となる事例の予後調査(村田昌彦)
平成25年度には、入院処遇となった対象者のうち、通院処遇に移行せず処遇終了した対象者(法施行後通算)227例のうち184例(81.1%)を把握し分析した。また、処遇終了が妥当であったかどうか検証するために、指定入院医療機関20施設の協力を得て処遇終了後の追跡調査体制を整えた。
5. 医療観察法による医療と精神保健福祉法による医療との役割分担及び連携に関する研究(吉住昭)
その1 医療観察法導入後における精神保健指定医の措置要否判断について(執筆者 瀬戸秀文)
措置要否判断の割合は、暴行のおそれと妄想の有無でまず分岐しており、症状や問題行動一方だけでなく問題行動と精神症状の両方が指定医の判断に影響していた。
その2 措置入院となった精神障害者の治療転帰に関する後ろ向きコホート研究 統合失調症患者の退院後転帰に関する予備的検討(執筆者 稲垣中)
平成25年度には、措置入院解除後の後ろ向きコホート調査として、全国の国公立病院40施設に研究依頼し、目標数300例を超え1,024例の質問票回収を終え、データ解析を進めた。平成25年度は統合失調症255例について解析し、退院1年後死亡率は2.64%、標準化死亡比は7.54と高値であることが明らかとなった。
その3 措置入院ガイドライン作成に関する予備的研究(執筆者 小口芳世)
措置入院の診療実績を持つエキスパートによる分担研究班会議を開催し、現状の措置入院の持つ問題や課題を抽出し、それらの解決を実現するための方策を組み入れ、医療観察法入院処遇ガイドラインに準じた措置入院ガイドライン案の基本的な考え方を示した。
6. 社会復帰の質の向上を目的とした就労支援プログラムの導入と普及に関する研究(大橋秀行)
就労支援の経験を持つ作業療法士によるエキスパートコンセンサスを形成し、「通院版就労準備プログラム」にとって不可欠な7つの要素を組み込み、同プログラムを完成させた。
7.入院期間の短縮と治療プログラムの効果的実施に関する研究(村杉謙次)
平成25年度には、全国すべての指定入院医療機関28施設に対し、治療プログラムや入院期間の短縮につながる試み、などに関するアンケート調査を実施し解析した(回答率100%)。外泊プログラムやCPA (Care Programme Approach) 会議の回数や頻度が多いほど、入院期間が短くなる傾向、および各治療プログラム間の連動性や導入時期、集団プログラムと個別プログラムの実施状況が入院日数に影響している可能性が示唆された。
結論
平成25年度、入院処遇に関してはデータベース構築の事業化の段階に到達した。退院後の通院処遇の予後調査、処遇修了者の予後調査、措置入院者の予後調査についても、現状の調査を実施するだけではなく、調査手法のマニュアル化や、ネットワーク及びシステム構築の基礎を作り、事業化の準備を進めた。当班の研究成果を基に事業化を進めれば、我が国の司法精神医療に関する基礎的データの収集・解析システムを構築することが可能となる。また、入院診療マニュアルの完成や、措置入院ガイドラインを作成することによって、司法精神医療の標準化を図ることができるであろう。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201317069Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
23,400,000円
(2)補助金確定額
23,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,735,298円
人件費・謝金 5,489,464円
旅費 3,707,424円
その他 3,067,958円
間接経費 5,400,000円
合計 23,400,144円

備考

備考
預金口座に144円の利息が生じたため、収入の「(2)補助金確定額」と支出の「合計」額に差異があります。144円については必要な消耗品があった為、その購入費用に充てました。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-