専門的医療の普及の方策及び資質向上策を含めた医療観察法の効果的な運用に関する研究 

文献情報

文献番号
201317062A
報告書区分
総括
研究課題名
専門的医療の普及の方策及び資質向上策を含めた医療観察法の効果的な運用に関する研究 
課題番号
H24-精神-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
伊豫 雅臣(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 三澤孝夫(国立精神・神経医療研究センター医療連携福祉部)
  • 八木 深(独立行政法人国立病院機構花巻病院)
  • 角野文彦(滋賀県健康福祉部)
  • 松原三郎(社会医療法人財団松原愛育会松原病院)
  • 山本輝之(成城大学)
  • 椎名明大(千葉大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(以下、医療観察法)による審判や医療には人材育成や質の向上、地域格差の是正等が必要であり、また本法による医療の一般精神医療への汎化が期待されている。本研究の目的は、医療観察法における鑑定及び審判、退院・社会復帰、指定通院医療、地域精神保健福祉への移行という各ステージにおける人材育成や体制構築に関わる課題並びにそれに伴う法的課題を明確にし、その解決方法を考察することである。
研究方法
目的を達成するために以下の6つの課題に分けて研究を行った。
①全国の関係機関をWEBで結んだ会議及び若手精神科医へのモデル研修を実施することにより、医療観察法医療に携わる人材の確保と地域特性を踏まえた専門家の育成に関する研究を行った(研究分担者:椎名明大先生)。
②精神保健判定医等養成研修会にて受講者へのアンケート調査並びに、研修等で使用するケースブック事例の作成を通して、精神保健判定医の質の担保に関する研究を行った(研究分担者:八木深先生)。
③英国における司法精神医療・保健・福祉システムなどの調査検討並びに研修及び業務支援のためのツールの開発を通して、司法精神医療における退院調整・社会復帰援助を行う関係機関職員の支援と研修方法の開発に関する研究を行った(研究分担者:三澤孝夫先生)。
④治療観察法通院処遇対象者における死亡事例に関する調査並びに指定通院医療機関を中心とした研究会を通して、指定通院医療機関の治療機能の向上と多職種・多機関の連携を効果的に行う方策に関する研究を行った(研究分担者:松原三郎先生)。
⑤全国の保健所を対象とした、医療観察法の処遇ケースに関する司法精神医療と地域精神保健福祉との連携に関する意識調査並びに、保健所において医療観察法施行後に支援を行ったケースについての調査を行い、司法精神医療における行政機関の役割に関する研究を行った(研究分担者:角野文彦先生)。
⑥法律研究者に実際に医療観察法における地域処遇に携わっている精神医療関係者を加えた研究会を頻繁に開催し、また、①通院処遇・地域処遇における情報の取り扱いの問題、②他害行為のおそれがある場合の情報提供の許容性とその義務の問題について、整理・検討を行うことにより、地域における処遇を含めた医療観察法制度に対する法学的視点からの研究を行った(研究分担者:山本輝之先生)。


結果と考察
web会議を通して指定入院医療機関ではクロザピン導入や身体合併症への対処などの平準化が進んでいた。また、若手精神科医の司法精神医学に対する意欲を高めるには、リエゾン・コンサルテーション精神医学などの周辺領域との関連性を考慮したプログラムが必要であると示された。精神保健判定医等養成研修会では事例についてのグループ検討や模擬審判の評価が高かった。ケースブック事例は判定医へのアンケートにより有用であることが明らかとなった。一方で、経験ゼロと多数経験に二極化しており審判員などの経験の均霑化が望まれた。司法精神医療における退院調整・社会復帰援助を行う関係機関職員の支援と研修では、司法精神医療・保健・福祉に活用しやすいマネジメント手法の整備と司法精神医療の社会的な意義や倫理観の共有が重要であることが明らかとなった。また、被害者には対象者の尊属が多く、自殺は移行段階での問題や病識の欠如、家族との問題が関与していた。さらに対象者の自殺事例に遭遇した通院処遇関係スタッフの多くが大きなダメージを受けている事が明らかとなった。保健所の地域処遇事例が増加しており、特に指定医療機関から同様の行為の再発に影響する疾患や行動についての情報が重要と考えられた。また暴力行為や医療への不遵守などの問題行動が増加しており、支援者の不安が大きく、保健所のマンパワー不足、被害者への配慮、法処遇終了後の支援に対する課題が明らかとなった。さらに通院処遇・地域処遇における個人情報の取り扱いにおける対象者からの同意取得の必要性についてと、他害行為のおそれがある場合の情報提供の許容性とその義務の問題について整理・検討を行われた。
結論
若手精神科医の司法精神医学への意欲向上を目指した研修や精神保健判定医等養成研修会の運営の向上に関する研究やケースブックを作成した。また退院調整・社会復帰援助を行う職員の支援と研修ではマネジメント手法の整備と一般の精神医療・福祉関係者による共有が重要であった。通院処遇対象者の自殺等の予防における入院機関とのさらなる密接な連携の必要性が示唆された。地域移行では保健所の地域処遇事例が増加しており、対象者の再犯に影響する疾患や行動についての情報が重要と考えられていた。通院処遇・地域処遇における対象者の情報提供の許容性とその義務の問題について整理・検討を行われた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201317062Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,320,000円
(2)補助金確定額
8,320,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,121,755円
人件費・謝金 1,121,338円
旅費 1,917,028円
その他 2,240,030円
間接経費 1,920,000円
合計 8,320,151円

備考

備考
利息151円

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-