精神障害者保健福祉手帳の判定マニュアルの作成及び実態把握に関する研究

文献情報

文献番号
201317057A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害者保健福祉手帳の判定マニュアルの作成及び実態把握に関する研究
課題番号
H24-精神-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
宮岡 等(北里大学 1)医学部精神科学 2)東病院精神神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 太田 順一郎(岡山市こころの健康センター)
  • 山崎 正雄(高知県立精神保健福祉センター)
  • 黒田 安計(さいたま市保健福祉局保健部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,800,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関変更 研究分担者3:黒田安計  H24年度/さいたま市こころの健康センター H25年度/さいたま市保健福祉局保健部

研究報告書(概要版)

研究目的
精神障害者保健福祉手帳の等級判定は、財団法人日本公衆衛生協会編の「精神障害者保健福祉手帳の手引き(診断書作成・障害等級判定マニュアル)」を参考にして行われている。この等級判定については従来から各自治体間の「差異」や、判定基準の曖昧さについて指摘があった。本研究は、昨年度実施した精神障害者保健福祉手帳に関するアンケート調査の結果、等級判定シミュレーションの結果、および従来の等級判定マニュアルや厚生労働省による通知などを解析、検討することにより、新たな等級判定マニュアルの雛形を作成することを目的としている。
研究方法
1.等級判定における判定基準に関する研究
各自治体における精神障害者保健福祉手帳の運用および精神障害者保健福祉手帳によって利用可能な各種制度の実態をまとめ、新等級判定マニュアルの第1章にあたる「精神障害者保健福祉手帳の概要」部分を作成した。次に、新等級判定マニュアルの第2章にあたる「等級判定の考え方」部分を作成した。また、第2章「等級判定の考え方」の「診断書の読み取り方」に示した、診断書内容から等級判定を実施していく基本的な方針を援用して、新等級判定マニュアルの第3章にあたる「診断書の書きかた」部分を作成した。
2.等級判定の具体的な運用に関する研究
主に昨年度実施した各自治体における等級判定シミュレーションの内容をもとにして、新等級判定マニュアルの第4章にあたる「精神障害者保健福祉手帳の障害等級判定のための参考症例集」を作成した。同時に各種精神疾患・精神障害ごとにその疾患特性・障害特性に配慮した等級判定の指針を示した。
3.手引き・指針に関する研究
他の2つの分担研究「精神障害者保健福祉手帳の等級判定における判定基準に関する研究」および「精神障害者保健福祉手帳の等級判定の具体的な運用に関する研究」の記載内容との整合性に留意しながら、「精神障害者保健福祉手帳Q&A」の作成を進めた。
結果と考察
1.等級判定における判定基準に関する研究
新たな等級判定マニュアルの中核部分である「障害等級判定の考え方」を作成した。また「精神障害者保健福祉手帳の概要」および「診断書の書き方」についてまとめた。新等級判定マニュアルの第1章に当たる「精神障害者保健福祉手帳の概要」においては、精神障害者保健福祉手帳の目的、概要、対象者、手続、支援策をまとめた。支援策は各自治体によって、さまざまなものが実施されており、特に税制措置については章末に一覧で示した。新等級判定マニュアルの第2章に当たる「障害等級判定の考え方」には新たな等級判定マニュアルの基本的な判定方針を示した。
2.等級判定の具体的な運用に関する研究
ICD-10のカテゴリーごとに、障害等級判定のための基本的な考え方を示し、参考症例の解説・参考症例の例示を行った。参考症例の解説では、「精神疾患(精神障害)の状態」、「生活能力の状態」を確認し、その結果による障害等級の「判定」を示した。また判定における「症例の留意事項」を示した。それぞれの疾患ごとの等級判定に関する基本的な考え方については、てんかん、アルコール依存症などに関して従来の考え方に修正を加え、また睡眠障害、知的障害、適応障害、摂食障害などの疾患に関して基本的な考え方を示した。
3.手引き・指針に関する研究
作成したQ&Aは、総論、各論併せて19項目となった。総論的事項としては、新等級判定マニュアルの基本的な考え方、診断名に関する考え方、服薬に関する考え方、診断書記載医師の要件などを取り上げた。また各論的事項としては、身体障害の合併に関する考え方や、個別の疾患における等級判定に関する基本的な考え方を質問―回答の形式で具体的に示した。
 新しい等級判定の考え方の中で中心となっているのは、旧等級判定マニュアルにおいて、「精神疾患(機能障害)の状態とそれに伴う生活能力障害の状態の両面から総合的に等級判定を行う」とされていたものを、「障害等級の判定に当たっては、まず一義的には生活能力の障害の程度、その態様により等級判定が行われるべきである」と明記したことである。これにより等級判定の基本的な考え方が整理された。また平成23年度からの新しい診断書様式に採用された⑦欄(生活障害の状態について具体的に記載する欄)の重視を打ち出し、診断書の記載内容から、生活障害の状態が具体的に読み取れるような記載を求めることとした。
結論
精神障害者保健福祉手帳の新しい等級判定マニュアルの雛形を作成した。本研究の最終年度に当たる来年度は、新しい等級判定マニュアル案を全国の精神保健福祉センターで実際に試用することで、等級判定の考え方の総論的部分、各論的部分、Q&Aに修正を加えて、実用に耐える新しい等級判定マニュアルを完成させる予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317057Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,640,000円
(2)補助金確定額
3,640,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 71,483円
人件費・謝金 138,379円
旅費 935,130円
その他 1,655,008円
間接経費 840,000円
合計 3,640,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
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