骨粗鬆症治療薬の開発に関する基礎的研究

文献情報

文献番号
199800234A
報告書区分
総括
研究課題名
骨粗鬆症治療薬の開発に関する基礎的研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
須田 立雄(昭和大学歯学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山口朗(長崎大学歯学部)
  • 田中栄(東京大学医学部)
  • 堀正幸(旭化成工業株式会社骨代謝研究所)
  • 久保田直樹(中外製薬株式会社創薬研究所)
  • 田村誠(科研製薬株式会社中央研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成8(1996)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨粗鬆症は、骨の形成と吸収の平衡が乱れ、骨量が減少する代謝性骨疾患である。我々は骨芽細胞と破骨細胞の分化と機能を解析できる実験系を確立し、その調節機構の解析を進めてきた。本研究では、骨芽細胞と破骨細胞の分化と機能の調節機構の解明を目的とした。また、開発途上にある骨粗鬆症治療薬の作用メカニズムの解析を試みた。
研究方法
(1)マウスの骨芽細胞と骨髄細胞の共存培養系にIL-17を添加して破骨細胞の形成を観察した。また、慢性関節リウマチ(RA)患者より関節液と滑膜組織を集め、そのIL-17産生と産生細胞を解析した。(2)Cbfa1欠損マウス(Cbfa1-/-)の頭頂骨形成予定域より遊走した細胞の性状を検索した。さらにCbfa1-/-の頭蓋冠由来細胞よりクローン化細胞株(C2細胞、C6細胞)を分離した。(3)破骨細胞にアデノウイルスベクターを用いてCsk遺伝子を導入し骨吸収能を解析した。(4)ラットの大腿骨および脛骨より集めた骨髄細胞を培養し脂肪細胞への分化に及ぼす各種薬剤の効果を解析した。(5)卵巣摘出したラットにED-71を投与し、骨密度測定及び骨形態計測を行った。(6)ラットにデキサメタゾンを投与した後、腓骨を切断し、その回復に及ぼすbFGFの効果を解析した。
結果と考察
(1)RAの滑膜組織で産生されるIL-17は、強力に破骨細胞の形成を促進した。Tリンパ球が産生するIL-17により、破骨細胞の分化が惹起される可能性が示された。(2)骨芽細胞前駆細胞はCbfa1が存在しなくても、BMPで誘導される他の因子を介してオステオカルシンを産生する段階までは分化できた。Cbfa1以外で骨芽細胞の分化に関与する転写因子がBMP処理により誘導される可能性が示された。(3)Csk遺伝子の導入に伴って、破骨細胞のc-Srcのチロシンキナーゼ活性と骨吸収能の著明な低下が認められた。また。IL-1によって誘導されたin vivoでの骨吸収をCskウイルスは著明に抑制した。c-Srcをターゲットとした遺伝子治療の可能性が示された。(4)ヒトPTH(1-34)は骨髄中の未分化間葉系細胞の脂肪細胞への分化を抑制した。また、PTHのin vivo投与は卵巣摘出ラットの脛骨の脂肪組織量の増加を抑制した。PTHは脂肪組織の進展を抑制し、骨髄環境を改善することが示された。(5) ED-71は低用量で骨吸収抑制作用が、至適用量以上においては骨形成促進作用を発揮した。ED-71は骨吸収抑制作用と骨形成促進作用を併せ持つ薬物であることが示された。(6)bFGF投与は遅延型の骨折モデルの回復を促進した。bFGFはオートクリン的に作用し骨折治癒を促進するものと考えられた。
結論
RAにおける骨破壊にTリンパ球が産生するIL-17が関与する可能性が示された。Cbfa1以外で骨芽細胞の分化に関与する転写因子がBMP処理により誘導される可能性が示された。アデノウイルスベクターを用いてc-Srcをターゲットとした遺伝子治療の可能性が示された。また、OCIGFは慢性関節リウマチの、PTHとED-71は骨粗鬆症の、そしてbFGFは骨折の治療薬として有効であることが示された。

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