医療観察法制度の鑑定入院と専門的医療の適正化と向上に関する研究

文献情報

文献番号
201317051A
報告書区分
総括
研究課題名
医療観察法制度の鑑定入院と専門的医療の適正化と向上に関する研究
課題番号
H23-精神-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
五十嵐 禎人(千葉大学 社会精神保健教育研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 平田 豊明(千葉県精神科医療センター)
  • 松原 三郎(社会医療法人財団松原愛育会松原病院)
  • 菊池 安希子(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
  • 安藤 久美子(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
  • 岡田 幸之(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療観察法(心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律)の鑑定入院制度とモニタリング体制について、その現状と問題点を把握し、これらの具体的な改善策を検討し、医療観察法制度の完成度を高めることを目的として研究を行った。
研究方法
本研究を以下の6項目に分け、各々を分担研究者に割り当てた。各分担研究は相互に関連性のある内容であり各研究分担者と密に経過等の情報交換を行いながら進めた。
「鑑定入院制度のモニタリングに関する研究」では、医療観察法鑑定入院医療機関205施設を対象に、施設概要調査、鑑定事例調査、困難事例調査の3つの調査を行った。
「鑑定入院医療機関における医療の均てん化に関する研究」では、実際に医療観察法鑑定や審判を行う上での問題点を明確にし、現状を把握することを目的として、精神保健判定医等養成研修会を受講した判定医679名を対象に、医療観察法鑑定の実施や審判員としての業務を行う上での問題点について調査を行った。
「鑑定入院における医療の適切性に関する研究」では、全国の鑑定入院医療機関205施設を対象に、先行研究において策定した「医療観察法鑑定入院における対象者の診療に関する指針」の普及度と鑑定入院医療機関における多職種協働チームの現状を把握するための調査を行った。また、デルファイ法によって、鑑定入院が適切に行われたかを精確に評価するための指標(鑑定入院のアウトカム指標)を明らかにするための研究を行った。
「指定入院医療機関モニタリング調査研究」では、2011年7月15日時点で医療観察法指定入院医療機関であった全26施設から対象者に関するデータを匿名化して収集し、データベース化し、対象者の概要に関する基礎集計を行い、さらに転院に関する分析を行った。
「指定通院医療機関モニタリング調査研究」では、全国の指定通院医療機関のうち、本研究に対して協力が得られた388施設を対象として、医療観察法が施行された2006年7月15日から2013年7月15日の8年間の通院処遇中の対象者の状況に関する情報を収集し、分析を行った。
「医療観察法対象者のモニタリング体制の確立に関する研究」では、将来的な医療観察法の総合的なモニタリング調査を念頭に、悉皆性と精度を高めたデータ収集の方法について検討を行った。

結果と考察
「鑑定入院制度のモニタリングに関する研究」では、鑑定入院医療機関の施設概要および治療・処遇内容は、全体としては、定常状態にあることを明らかにした。「鑑定入院医療機関における医療の均てん化に関する研究」では、医療観察法鑑定においては、鑑定医業務を行う時間的な余裕がないこと、治療反応性や責任能力の判断、前医の鑑定に対する疑問、審判日程の調整が、精神保健審判員の業務に関しては、医療観察法鑑定に対する疑問と審判日程の調整が問題となっていることを明らかにした。「鑑定入院における医療の適切性に関する研究」では、先行研究で作成された指針は、鑑定入院の質の向上に一定の成果を上げていることを明らかにし、医療観察法鑑定入院制度の適切な運用のために、デルファイ法を用いて鑑定入院のアウトカム評価指標を作成することを試みた。「指定入院医療機関モニタリング調査研究」では、居住地から遠方の病院で入院処遇開始となった対象者では転院が有意に多く、また通常退院者のうち、転院歴を有する者は有しない者に比して在院期間が有意に長いこと、遠方で入院処遇を開始した対象者に限っても、近隣の病院へ転院した対象者では、転院せずに退院した対象者より通算在院期間が有意に長く、転院が本来の機能を果たしていない可能性があることを明らかにした。「指定通院医療機関モニタリング調査研究」では、対象者の高齢化に伴い身体合併症や認知症などの併存疾患に関する問題が大きくなっていること、通院対象者の約半数が精神保健福祉法による入院治療を受けていること、一般精神科医療に移行された事例の86%が処遇終了後も同じ医療機関で治療が継続されていることなどを明らかにした。「医療観察法対象者のモニタリング体制の確立に関する研究」では、医療観察法のモニタリン研究に必要な情報の収集に関して、「医療観察法情報統合分析システムMTSA-Information Integration and Analysis Network System(仮称)」を提案した。
結論
以上、医療観察法の鑑定入院制度とモニタリング研究に関して、その現状と問題点を明らかにし、その具体的な改善策について報告した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201317051B
報告書区分
総合
研究課題名
医療観察法制度の鑑定入院と専門的医療の適正化と向上に関する研究
課題番号
H23-精神-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
五十嵐 禎人(千葉大学 社会精神保健教育研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 平田 豊明(千葉県精神科医療センター)
  • 松原 三郎(社会医療法人財団松原愛育会松原病院)
  • 伊豫 雅臣(千葉大学大学院医学研究院)
  • 岡田 幸之(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
  • 安藤 久美子(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
  • 菊池 安希子(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療観察法(心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律)の鑑定入院制度とモニタリング体制について、その現状と問題点を把握し、これらの具体的な改善策を検討し、医療観察法制度の完成度を高めることを目的として研究を行った。
研究方法
本研究を以下の7項目に分け、各々を分担研究者に割り当てた。各分担研究は相互に関連性のある内容であり各研究分担者と密に経過等の情報交換を行いながら進めた。「鑑定入院制度のモニタリングに関する研究」では、医療観察法鑑定入院の実態を明らかにし、その質の均てん化を促すために、全国の鑑定入院医療機関205施設に対して、施設概要調査、鑑定事例調査などを行った。「鑑定入院医療機関における医療の均てん化に関する研究」では、医療観察法における鑑定医の資質を向上させ、ひいては、鑑定の精度を向上させることを目的として、鑑定入院医療機関や判定医等養成研修の受講者を対象とした調査を行った。「鑑定入院における医療の適切性に関する研究」では、全国の鑑定入院医療機関205施設を対象に指針の普及度と鑑定入院医療機関における多職種協働チームの現状を把握するための調査を行い、また、デルファイ法を用いて、鑑定入院が適切に行われたかを精確に評価するための指標(鑑定入院のアウトカム指標)を明らかにするための研究を行った。「医療観察法における鑑定精度向上のための画像診断等の応用に関する研究」では、治療反応性が限定的である、統合失調症の欠陥症候群の局所脳血流量の変化について評価を行った。「指定入院医療機関モニタリング調査研究」では、指定入院医療機関の協力を得てモニタリングデータを収集し、対象者の状況を分析した。「指定通院医療機関モニタリング調査研究」では、医療観察法の通院医療の実態について探り、本制度の医療と処遇に関する課題を明らかにすることを目的として、全国の指定通院医療機関のうち、本研究に対して協力が得られた施設を対象として、医療観察法通院処遇中の対象者の状況に関する情報を収集し、分析を行った。「医療観察法対象者のモニタリング体制の確立に関する研究」では、将来的な医療観察法の総合的なモニタリング調査を念頭に、悉皆性と精度を高めたデータ収集の方法について検討を行った。
結果と考察
「鑑定入院制度のモニタリングに関する研究」では、鑑定入院医療機関の施設概要および治療・処遇内容は、全体としては、定常状態にあることを明らかにした。「鑑定入院医療機関における医療の均てん化に関する研究」では、精神鑑定の質の向上を図るためには、多職種チームが加わった鑑定、あるいは、同僚医師らによる鑑定会議の実施などが重要な要素であり、さらに、拠点的な医療機関と連携を持ちながら、質の向上を図っていくことが必要であることを明らかにした。「鑑定入院における医療の適切性に関する研究」では、先行研究で作成された指針は、鑑定入院の質の向上に一定の成果を上げていることを明らかにした。「医療観察法における鑑定精度向上のための画像診断等の応用に関する研究」では、SPECTによる安静時脳血流測定が抗精神病薬への治療反応性が限定的と考えられている統合失調症欠陥症候群診断の補助診断として有用であることを明らかにした。「指定入院医療機関モニタリング調査研究」では、すべての指定入院医療機関から入院処遇対象者に関するデータを収集し、入院処遇の実態と経時的な変化を明らかにした。「指定通院医療機関モニタリング調査研究」では、9割以上の通院処遇対象者に関するデータを収集し、通院処遇対象者の特徴や経時的変化を明らかにした。「医療観察法対象者のモニタリング体制の確立に関する研究」では、悉皆性と正確性を高めた「医療観察法情報統合分析システムMTSA-Information Integration and Analysis Network System(仮称)」の提案を行った。
結論
以上、医療観察法の鑑定入院制度とモニタリング研究に関して、その現状と問題点を明らかにし、その具体的な改善策について報告した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201317051C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全国の鑑定入院医療機関を対象とした調査を行い、鑑定入院医療機関の施設概要、鑑定入院における医療や処遇の実態を明らかにした。すべての指定入院医療機関の入院対象者に関するデータを収集・解析し、入院処遇の実態と経時的変化を明らかにした。9割以上の通院処遇対象者に関するデータを収集・解析し、通院処遇対象者の特徴と経時的変化を明らかにした。
臨床的観点からの成果
精神鑑定の質の向上を図るためには、多職種チームや同僚医師による鑑定会議の実施が重要であること、先行研究で作成した「医療観察法鑑定入院における対象者の診療に関する指針」が鑑定入院の質の向上に一定の成果をあげていることを明らかにした。入院処遇対象者については入院処遇期間の長期化傾向を明らかにした。通院処遇対象者については、早期に通院処遇を終了する事例が多いこと、半数の事例では精神保健福祉法による入院治療を受けていること、身体的暴力に関するリスクファクターなどを明らかにした。
ガイドライン等の開発
全指定入院医療機関において通常の臨床業務のなかで蓄積されている情報のなかから、モニタリングに必要な指標を得るために必要な一定の規格にそったデータセットを定期的、ないし随時に、高規格のセキュリティを確保したうえで、インターネット経由でデータセンター(ないしクラウドセンター)に集積し、これを統合、分析するシステムとして「医療観察法情報統合分析システムMTSA-Information Integration and Analysis Network System(仮称)」の提案を行った。
その他行政的観点からの成果
鑑定入院に関する研究の成果は、医療観察法鑑定入院制度の適正に運用し、鑑定入院中の対象者の治療・処遇の均てん化を図るための方策を検討するための基礎資料として活用されることが期待される。「医療観察法情報統合分析システムMTSA-Information Integration and Analysis Network System(仮称)」は、制度施行以来課題とされてきた医療観察法対象者のモニタリング体制の確立を意味するものといえ、行政施策の推進に活用されるべきものと思われる。
その他のインパクト
本研究の成果は、鑑定入院、入院処遇、通院処遇という医療観察法の各段階における対象者の特性を明らかにしたものである。本研究の成果を鑑定入院医療機関や指定医療機関にフィードバックすることにより鑑定入院医療機関・指定医療機関における対象者の治療・処遇の向上に活用されることが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
24件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
2018-06-05

収支報告書

文献番号
201317051Z