大規模災害や犯罪被害等による精神疾患の実態把握と対応ガイドラインの作成・評価に関する研究

文献情報

文献番号
201317042A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模災害や犯罪被害等による精神疾患の実態把握と対応ガイドラインの作成・評価に関する研究
課題番号
H23-精神-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
金 吉晴(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健所 成人精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加茂 登志子(東京女子医科大学付属女性生涯健康センター)
  • 中島 聡美(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部)
  • 鈴木 友理子(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部)
  • 石郷岡 純(東京女子医科大学 医学部 精神医学教室)
  • 渡 路子(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 災害時こころの情報支援センター)
  • 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学)
  • 飯島 祥彦(名古屋大学大学院医学系研究科倫理委員会)
  • 栗山 健一(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
20,091,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災と宮崎県口蹄疫後の精神保健の実態解明と、調査の方法論と倫理的課題の検討。平常時の医療におけるDV被害、虐待被害、犯罪被害への対応体制の整備。トラウマ関連障害を発症した場合の検討。災害時のガイドラインの検討、DV被害親子に対するこころのケアハンドブックの開発に関する研究
研究方法
ストレスを反映する生理指標に関する文献展望。司法解剖に付された人の遺族や、被災した自治体職員の自記式健康調査。各種ガイドライン・パンフレット・マニュアルの整備及び運用。口蹄疫対策における専門職従事者についての分析、被災農家の縦断研究、地域精神保健活動マニュアルの作成。エジンバラ産後抑うつ自己評価票の施行。倫理審査の現状についてのアンケート調査。高照度光による恐怖条件づけ消去促進効果の評価。既存の災害時こころの情報支援センターの項目別の検討、県の児童相談センター全心理職員に対し、PCITに関するイニシャルワークショップの効果検証。
結果と考察
唾液コルチゾール測定によるPTSD症状評価の検討では、その利点と注意点が示された。司法解剖遺族の長期にわたる精神健康不良の持続、また遺族の精神健康状態と警察官や法医学者の対応には関連があることが明らかになった。東日本大震災後の宮城県職員のバーンアウトとその関連要因の検討では、バーンアウトに関連する/しないと思われる要因が明らかになった。虐待対応マニュアルと虐待防止教育用テキストの開発に関しては、マニュアル運用開始までにとどまった。口蹄疫被災に関する健康調査では、IES-R値の上昇には感染拡大の危険性やその判断を必要とする専門性の高い作業が関連していることがわかった。また、被災農家の縦断研究では経年で改善する傾向を認めた。東日本大震災に伴う産後うつ病の実態把握調査では、大規模災害時においては、直接被災していない地域の母親においても不安症状が強まる可能性が示唆された。災害時の調査研究の倫理審査研究では、事後審査に対する消極性が明らかになった。高照度光を持続曝露療法の併用療法として用いることにより,治療効果を増強し治療期間を短縮しうる可能性が示唆された。災害時のガイドラインのあり方についての検討課題が抽出された。PCITはライブケース体験やコンサルテーションの在り方などに改良すべき点があった
結論
コルチゾール測定の有用性を活かしたさらなる検討が期待される。被災地住民、遺族、自治体職員の精神健康とその関連要因 が実態に即して明らかとなった。それを受け、今後の対応の向上が窺知される。作成された各種マニュアルの普及と発展が望まれる。災害時における調査の研究倫理に関して体制整備の必要性が明確となった。PTSD補助療法としての高照度光照射の有用性が示唆された。現行の災害時地域精神保健医療活動ガイドライン(2003)に関して、現在の国際水準に照らしても評価すべき点が多々ある一方で、更なる改善点が明らかとなった。今後のPCITについての系統的訓練体制が必要である。口蹄疫対策マニュアル、犯罪被害者遺族対応マニュアルの今後の活用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201317042B
報告書区分
総合
研究課題名
大規模災害や犯罪被害等による精神疾患の実態把握と対応ガイドラインの作成・評価に関する研究
課題番号
H23-精神-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
金 吉晴(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健所 成人精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加茂 登志子(東京女子医科大学付属女性生涯健康センター)
  • 中島 聡美(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部 )
  • 鈴木 友理子(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部 )
  • 石郷岡 純(東京女子医科大学 医学部 精神医学教室)
  • 秋山 剛(NTT東日本病院精神神経科)
  • 鈴木 満(岩手医科大学神経精神科学講座客員)
  • 渡 路子(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 災害時こころの情報支援センター)
  • 富田 博秋(東北大学災害科学国際研究所 災害精神医学分野)
  • 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科精神医学)
  • 飯島 祥彦(名古屋大学大学院医学系研究科倫理委員会)
  • 山田 幸恵(岩手県立大学社会福祉学部)
  • 栗山 健一(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災と宮崎県口蹄疫後の精神保健の実態解明と、調査の方法論と倫理的課題の検討。平常時の医療におけるDV被害、虐待被害、犯罪被害への対応体制の整備。トラウマ関連障害を発症した場合の検討。災害時のガイドラインの検討、DV被害親子に対するこころのケアハンドブックの開発に関する研究。
研究方法
地域住民、行政職員の調査。自記式うつ病尺度の検証、倫理的課題の文献的整理。総合病院におけるDV被害、虐待被害の体制の検討。犯罪被害対応のエキスパートの意見集約と司法解剖遺族の調査指針の整備。PTSD薬物療法のエビデンスの検討。ストレスを反映する生理指標に関する文献展望。司法解剖に付された人の遺族や、被災した自治体職員の自記式健康調査。災害時、虐待、遺族などに関する各種ガイドライン・パンフレット・マニュアルの検証、整備及び運用。口蹄疫対策における専門職従事者についての分析、被災農家の縦断研究、地域精神保健活動マニュアルの作成。エジンバラ産後抑うつ自己評価票の施行。倫理審査の現状についてのアンケート調査。トラウマの指標としての唾液コルチゾルの有用性の検討。高照度光による恐怖条件づけ消去促進効果の評価。被災地における、母子相互療法(PCIT)の有用性の検証。
結果と考察
宮城県職員調査では、遺体関連業務や苦情相談対応といった震災下の特殊な業務や惨事ストレスで報告されている要因の影響は見られなかった。七ヶ浜調査では単回の問診票調査でのスクリーニングによって健康状態に問題を抱える被災者を支援に結びつけることには一定の限界があるものの、コミュニティーへの働きかけを継続して行うことで、被災者を支援に結びつけることが可能となると考えられた。口蹄疫では、被災農家は改善傾向に、地域住民では被災後2年の時点でほぼ平時のレベルに回復していた。遺族対応に有効と思われる要因が示唆された。DV被害母子、総合病院における虐待症例の発見と対応、診断治療の取り組みが示され、標準的な総合病院におけるfeasibilityが示された。災害後に多発すると考えられるPTSD薬物治療に向けてガイドラインが完成した。司法解剖遺族の長期にわたる精神健康不良の持続、また遺族の精神健康状態と警察官や法医学者の対応には関連があることが明らかになった。東日本大震災後の宮城県職員のバーンアウトとその関連要因の検討では、バーンアウトに関連する要因が明らかになった。虐待対応マニュアルと虐待防止教育用テキストの開発に関しては、マニュアル運用開始までにとどまった。口蹄疫被災に関する健康調査では、IES-R値の上昇には感染拡大の危険性やその判断を必要とする専門性の高い作業が関連していることがわかった。また、被災農家の縦断研究では経年で改善する傾向を認めた。東日本大震災に伴う産後うつ病の実態把握調査では、大規模災害時においては、直接被災していない地域の母親においても不安症状が強まる可能性が示唆された。災害時の調査研究の倫理審査研究では、事後審査に対する消極性が明らかになった。唾液コルチゾル測定によるPTSD症状評価の検討では、その利点と注意点が示された。高照度光を持続曝露療法の併用療法として用いることにより,治療効果を増強し治療期間を短縮しうる可能性が示唆された。災害時のガイドラインのあり方についての検討課題が抽出された。PCITはライブケース体験やコンサルテーションの在り方などに改良すべき点があった。
結論
被災地住民、遺族、自治体職員の精神健康とその関連要因 が実態に即して明らかとなった。それを受け、今後の対応の向上が窺知される。作成された各種マニュアルの普及と発展が望まれる。災害時における調査の研究倫理に関して体制整備の必要性が明確となった。またコルチゾール測定などの生物学的検査の有用性が示唆された。PTSD補助療法としての高照度光照射の有用性が示唆された。現行の災害時地域精神保健医療活動ガイドライン(2003)に関して、現在の国際水準に照らしても評価すべき点が多々ある一方で、更なる改善点が明らかとなった。今後のPCITについての系統的訓練体制が必要である。PTSD薬物療法ガイドライン、口蹄疫対策マニュアル、犯罪被害者遺族対応マニュアルの今後の活用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201317042C

成果

専門的・学術的観点からの成果
エジンバラ産後抑うつ自己評価票(Edinburgh Postpartum Depression Scale:EPDS)を施行し、因子構造を解析した。災害時における調査研究の倫理審査の現状に関する調査を行った。PTSD補助療法としての高照度光照射の有用性の検討を行った。ストレスを反映する生理指標の唾液コルチゾールの基本特性とストレスによる影響を検討した。
臨床的観点からの成果
親子相互療法PCIT)による専門的治療に関する トレーニングのストラテジーについて検討し、今後、PCITやこれに類するエビデンスに基づいた心理療法の均てん化を推進した。司法解剖に付された人の遺族の精神健康の状態と、司法解剖時の警察官や法医学者などとの関係について遺族の精神健康状態と警察官や法医学の十分な説明や配慮ある対応には関連があることを見出した。
ガイドライン等の開発
災害時地域精神保健医療活動ガイドライン(2003)の再検討に向けて、同ガイドラインの意義と限界を検討し、新たに追加すべき項目を抽出した。今後の改訂のためには、DPATによる派遣、DMHISの使用、DMAT等との連携、研究倫理、精神医療システム支援、情報不安などへの対応が求められることを見出した。
その他行政的観点からの成果
宮崎県における口蹄疫感染事例について、口蹄疫被災における畜産農家・地域住民・防疫従事者の継続的健康調査を発災当初より2年後まで行い、平成25年度版「口蹄疫対策における地域精神保健活動マニュアル」を作成した。災害時こころの情報支援センターやDPATの発足、PTSD研修のプログラムに寄与した。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
20件
その他論文(和文)
14件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hayakawa N, Koide T, etc, Ozaki N
The postpartum depressive state in relation to perceived rearing: a prospective cohort study.
PLoS One , 7 (11) , e50220-  (2012)
DOI=10.1371/journal.pone.0050220
原著論文2
Furumura K, Koide T, etc, Ozaki N
Prospective Study on the Association between Harm Avoidance and Postpartum Depressive State in a Maternal Cohort of Japanese Women.
PLoS One , 7 (4) , e34725-  (2012)
DOI=10.1371/journal.pone.0034725
原著論文3
飯島祥彦
災害時の調査研究の倫理
生命倫理 , 25 , 52-59  (2014)
原著論文4
飯島祥彦
日本における災害時の調査研究の倫理審査の現状に関する調査
生命倫 理 , 26 , 30-37  (2015)
原著論文5
飯島祥彦
災害時における調査研究の実施体制
医学哲学医学倫理 ,  (34) , 43-48  (2016)
原著論文6
Suzuki Y, Fukasawa M, Obara A, Kim Y.
Burnout among public servants after the Great East Japan Earthquake: decomposing the construct aftermath of disaster.
J Occup Health. , 59 (2) , 156-164  (2017)
doi:10.1539/joh.16-0263-OA. Epub 2017 Jan 11.
原著論文7
Fukasawa M, Suzuki Y, Obara A, Kim Y.
Relationships Between Mental Health Distress and Work-Related Factors Among Prefectural Public Servants Two Months After the Great East Japan Earthquake.
Int J Behav Med. , 22 (1) , 1-10  (2015)
doi: 10.1007/s12529-014-9392-8.
原著論文8
Suzuki Y, Fukasawa M, Obara A, Kim Y.
Mental health distress and related factors among prefectural public servants seven months after the great East Japan Earthquake.
J Epidemiol. , 24 (4) , 287-294  (2014)
doi:10.2188/jea.JE20130138. Epub 2014 May 24.
原著論文9
Ohara M, Okada T, Kubota C, Nakamura Y, Shiino T, Aleksic B, Morikawa M, Yamauchi A, esc., Ozaki N
Validation and factor analysis of mother-infant bonding questionnaire in pregnant and postpartum women in Japan
BMC Psychiatry , 16 (212)  (2016)
doi:10.1186/s12888-016-0933-3.
原著論文10
Ohara M, Okada T, Kubota C, Nakamura Y, Shiino T, Aleksic B, Morikawa M, Yamauchi A, & etc, Ozaki N
Relationship between maternal depression and bonding failure: A prospective cohort study of pregnant women
Psychiatry Clin Neurosci , 71 , 733-741  (2017)
10.1111/pcn.12541
原著論文11
Ohara M, Okada T, Aleksic B, Morikawa M, Kubota C, Nakamura Y, Shiino T, Yamauchi A, & etc. Ozaki N
Social support helps protect against perinatal bonding failure and depression among mothers: a prospective cohort study
Sci Rep , 7 (9546)  (2017)
10.1038/s41598-017-08768-3
原著論文12
Morikawa M, Okada T, Ando M, Aleksic B, Kunimoto S, Nakamura Y, Kubota C, Uno Y, & etc. Ozaki N
Relationship between social support during pregnancy and postpartum depressive state: a prospective cohort study
Sci Rep , 5 (10520)  (2015)
10.1038/srep10520
原著論文13
Ohoka H, Koide T, Goto S, Murase S, Kanai A, Masuda T, Aleksic B, Ishikawa N, Furumura K, Ozaki N
Effects of maternal depressive symptomatology during pregnancy and the postpartum period on infant-mother attachment
Psychiatry Clin Neurosci , 68 (631-9)  (2014)
10.1111/pcn.12171
原著論文14
Kubota C, Okada T, Aleksic B, Nakamura Y, Kunimoto S, Morikawa M, Shiino T, Tamaji A, & etc. Ozaki N
Factor structure of the Japanese version of the edinburgh postnatal depression scale in the postpartum period
PLoS One , 9 (e103941)  (2014)
10.1371/journal.pone.0103941

公開日・更新日

公開日
2016-07-08
更新日
2019-08-09

収支報告書

文献番号
201317042Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,759,000円
(2)補助金確定額
24,759,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,115,837円
人件費・謝金 9,501,600円
旅費 3,461,495円
その他 5,012,409円
間接経費 4,668,000円
合計 24,759,341円

備考

備考
補助金確定額を超えた341円は自己資金より支出したため

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-