末梢血のAGEsを含む代謝産物をバイオマーカーとする統合失調症の早期診断法の確立

文献情報

文献番号
201317040A
報告書区分
総括
研究課題名
末梢血のAGEsを含む代謝産物をバイオマーカーとする統合失調症の早期診断法の確立
課題番号
H23-精神-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
糸川 昌成(公益財団法人東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田寿美子(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、末梢血の終末糖化産物(AGEs;Advanced Glycation End-products)を含む代謝物質の異常を客観的指標として、統合失調症の早期診断法を確立することである。
研究方法
(I)GLO1/ホモシステイン/葉酸代謝関連物質の測定(糸川昌成担当)
 統合失調症の末梢血、髄液、尿中のAGEs, GLO1活性、ホモシステイン、葉酸、ビタミンなどをHPLCおよびELISA法を用いて計測する。
(II) 統合失調症の末梢血、尿および臨床情報の収集(新里和弘担当)
 統合失調症の末梢血、尿およびPANSS、投薬内容、DSM-IV、年齢、性別、発症年齢、家族歴など臨床情報を収集する。
(III) 統合失調症の髄液、末梢血、尿の収集(吉田寿美子担当)
臨床検査使用後の余剰検体として廃棄予定の髄液、末梢血、尿を収集する。
結果と考察
最初に報告した被験者(統合失調症45例、健常対照61例 Arch Gen Psychiat 2010)とは独立に都立松沢病院にて分担研究者の新里和弘医師が新たな被験者を収集した。対象はDSM-IVで統合失調と診断され18歳以上、65歳未満でAGEsを増加させる炎症性疾患、悪性腫瘍、糖尿病、腎機能障害を持たない被験者とした。健常対照として都立松沢病院に勤務する職員で上記除外基準に該当しない成人とした。AGEsはペントシジンをHPLCを用いて計測し、ビタミンB6についてはELISA法を用いて測定した。これらの被験者156例の統合失調症と年齢、性別の一致した221例の対照を用いて最初の報告を追試したところ、統合失調症で有意なAGEsの蓄積とビタミンB6の低下を再現した(Miyashita et al. Psychiat Clin Neurosci2014)。年齢と性別をマッチさせた統合失調症患者8名と健常対象者6名、大うつ病性障害患者2名のCSFのAGE計測を行ったところ、いずれも平均20ng/ml前後と各群に有意差はなかった。
結論
末梢血のAGEsを含む代謝産物がバイオマーカーとして妥当である可能性が示唆された。治療抵抗性統合失調症のバイオマーカーの開発と治療法に道を開いたことは、長期の入院患者の改善において医療費抑制の可能性を示唆しており行政的意義があると考える。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201317040B
報告書区分
総合
研究課題名
末梢血のAGEsを含む代謝産物をバイオマーカーとする統合失調症の早期診断法の確立
課題番号
H23-精神-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
糸川 昌成(公益財団法人東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田寿美子(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院)
  • 岡崎祐士(公益財団法人東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、末梢血の終末糖化産物を含む代謝物質の異常を客観的指標として、統合失調症の早期診断法を確立することである。統合失調症の末梢血、髄液、尿中のAGEs, ホモシステインや葉酸を含む代謝産物を計測し、PANSS、服薬歴、家族歴など臨床情報との関連を検討し、縦断研究によって症状推移とこれら代謝物質の関連を明らかにして、統合失調症のバイオマーカーを確立することをめざす。 
研究方法
(I)GLO1/ホモシステイン/葉酸代謝関連物質の測定(糸川昌成担当)
 統合失調症の末梢血、髄液、尿中のAGEs, GLO1活性、ホモシステイン、葉酸、ビタミンなどをHPLCおよびELISA法を用いて計測する。
(II) 統合失調症の末梢血、尿および臨床情報の収集(岡崎祐士、新里和弘担当)
 統合失調症の末梢血、尿およびPANSS、投薬内容、DSM-IV、年齢、性別、発症年齢、家族歴など臨床情報を収集する。
(III) 統合失調症の髄液、末梢血、尿の収集(吉田寿美子担当)
 臨床検査使用後の余剰検体として廃棄予定の髄液、末梢血、尿を収集する。
(IV)医師主導治験 (糸川昌成担当)
活性型ビタミンB6を用いた臨床試験を行い、AGEsとビタミンB6の変化と症状の改善度を解析し、バイオマーカーとしての妥当性を検討した。
結果と考察
最初に報告した被験者(統合失調症45例、健常対照61例 Arch Gen Psychiat 2010)とは独立に都立松沢病院にて分担研究者の岡崎祐士名誉院長と新里和弘医師が新たな被験者を収集した。対象はDSM-IVで統合失調と診断され18歳以上、65歳未満の被験者とした。健常対照として都立松沢病院に勤務する職員で上記除外基準に該当しない成人とした。AGEsはペントシジンをHPLCを用いて計測し、ビタミンB6についてはELISA法を用いて測定した。これらの被験者156例の統合失調症と年齢、性別の一致した221例の対照を用いて最初の報告を追試したところ、統合失調症で有意なAGEsの蓄積とビタミンB6の低下を再現した(Miyashita et al. Psychiat Clin Neurosci2014)。
 また、糖尿病と腎機能障害を持たない157例の統合失調症と6例の統合失調感情障害を用いて臨床情報を検討したところ、カルボニルストレスがない67例と比較してカルボニルストレスを伴った26例では、有意に入院症例が多く、入院期間が長く、抗精神病薬の投与量が多い、治療抵抗性の特徴を示した(Miyashita et al. Schizphr Bull in press)。骨折とカルボニルストレスの関連が報告されている。そこで、骨折の履歴のある統合失調症でpentosidineを測定し、骨折歴のない統合失調症より骨折歴のある症例で高い傾向が示唆された。Pentosidineの高い症例には骨折のリスクを評価するバイオマーカーとして活用できる可能性が示唆された。
 (独)国立精神・神経医療研究センター病院において、分担研究者の吉田寿美子医師が既存保存髄液の実態を調査し再検査の必要がなく廃棄予定であった2002 年-2010年の検体延べ数1860検体のうち、90%以上が神経内科関連疾患または脳外疾患であった。統合失調症は22検体、感情障害は9検体であった。髄液中のpentosidineを統合失調症3例、双極性気分障害2例、アルコール依存症1例、てんかん性精神病1例、うつ病1例で計測した。血清と髄液を同時計測出来た統合失調症では髄液中のpentosidine濃度は血清の100 分の1であった(9.2VS 0.086 ng/ml)。年齢と性別をマッチさせた統合失調症患者8名と健常対象者6名、大うつ病性障害患者2名のCSFのAGE計測を行ったところ、いずれも平均20ng/ml前後と各群に有意差はなかった。
 平成24年10月9日に活性型ビタミンB6を用いた精神科で初めてとなる医師主導治験を、松沢病院の入院患者10例を対象に終了した(臨床試験登録UMIN000006398 )。
結論
末梢血のAGEsを含む代謝産物がバイオマーカーとして妥当である可能性が示唆された。治療抵抗性統合失調症のバイオマーカーの開発と治療法に道を開いたことは、長期の入院患者の改善において医療費抑制の可能性を示唆しており行政的意義があると考える。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201317040C

成果

専門的・学術的観点からの成果
最初に報告した被験者とは独立に都立松沢病院にて新たな被験者を収集した。対象はDSM-IVで統合失調と診断され18歳以上、65歳未 満でAGEsを増加させる炎症性疾患、悪性腫瘍、糖尿病、腎機能障害を持たない被験者とした。健常対照として都立松沢病院に勤務する職員で上記除外基準に 該当しない成人とした。これらの被験者156例 の統合失調症と年齢、性別の一致した221例の対照を用いて最初の報告を追試したところ、統合失調症で有意なAGEsの蓄積とビタミンB6の低下を再現した。
臨床的観点からの成果
年齢と性別をマッチさせた統合失調症患者8名と健常対象者6名、大うつ病性障害患者2名のCSFのAGE計測を行ったとこ ろ、いずれも平均20ng/ml前後と各群に有意差はなかった。
ガイドライン等の開発
ガイドラインなどの開発はない。
その他行政的観点からの成果
末梢血のAGEsを含む代謝産物がバイオマーカーとして妥当である可能性が示唆された。治療抵抗性統合失調症のバイオマーカーの開発と治療法に道を開いたことは、長期の入院患者の改善において医療費抑制の可能性を示唆しており行政的意義があると考える。
その他のインパクト
マスコミに取り上げられたことはない。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
2017-06-26

収支報告書

文献番号
201317040Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,800,000円
(2)補助金確定額
13,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 927,641円
人件費・謝金 9,513,519円
旅費 445,420円
その他 1,113,420円
間接経費 1,800,000円
合計 13,800,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-