次世代視覚障害者支援システムの実践的検証

文献情報

文献番号
201317039A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代視覚障害者支援システムの実践的検証
課題番号
H25-感覚-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 西田 朋美(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 岩波 将輝(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 宮内 哲(独立行政法人 情報通信研究機構)
  • 小川 景子(広島大学大学院 総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、視覚障害者支援のあり方モデルの実践的検証である。これに向けた初年度の目標は、アクティブ視野計の作製、ファーストステップの最適化、ナレッジバンクの強化であった。ここでいう視覚障害者支援のあり方モデルとは、平成22-24年度研究にて提唱したファーストステップと中間型アウトリーチ支援を中軸とする視覚障害者に対する次世代支援モデルのことである。また、ファーストステップとは、インターネットで約30の質問で支援ジャンルとナレッジバンク関連ページへのリンクが提示され、同時に利用者のマクロな実態とニーズが調査可能なソフトのことで、ナレッジバンクとは、インターネット上の視覚障害者支援関連用語解説および相談窓口連絡先リストのことである。そして、中間型アウトリーチ支援とは、通所型と訪問型(アウトリーチ型)の中間的方法で、当事者が日常通う施設に視覚障害専門家が訪問し支援を行うことであり、これらはいずれも視覚障害者支援のあり方モデルの中で重要なシステム要素となっている。本システムの要であるファーストステップの活用を促進するには、啓発活動を行うだけでなくファーストステップ自体の正答率を上げる必要がある。今回、そのための新たな評価視点を確立するために、今回、視線移動の観測データを分析し、視野を推定する原理に基づく、眼球運動に伴う総合的な視覚の有効範囲(アクティブ視野)を測定する装置であるアクティブ視野計の開発を優先的に推進した。
研究方法
本年度は、以下の三点について予定取り研究を進めた。
1) アクティブ視野計の作製:市販の視線観測装置と必要なソフトウェアの開発により視線計測を基にした視野解析システムを構築する。
2) ファーストステップの改良:対象を稼働期と老年期を分けたアルゴリズムに変更し、アンケート文内の表現を適正化し、一般の使用に適するようにフロントページの注意書きなどを整える。
3) ナレッジバンク強化:項目の加減、文言修正のみならず、外部リンクの多用と音声パソコン用のスクリーンリーダーへの対応を含むホームページの改変を行う。
結果と考察
 その結果、1) アクティブ視野解析システムのための視覚刺激生成、視線計測機操作および視野解析のための3種のソフトウェアを開発し、健常者に対して実験を行い、800ms程度が指摘刺激提示時間であることを決定した。また、実際に視野狭窄患者についての計測を試行した。2) ファーストステップの改良によって、入力変数の数を約30から20へ減少させてもほぼ同等の正答率が得られるものになった。このため、それに要する時間の短縮がはかられた。3) ナレッジバンクの内容改訂と啓発活動により、アクセス数が1年間で倍増した。そして今後は、1) アクティブ視野の定位精度の向上、選択的な刺激特性の同定および定量性について検討するとともにアクティブ視野の生理学的基礎を探ること、2) 視野狭窄患者のアクティブ視野と日常生活動作に関するデータを蓄積することで、これらの相関からファーストステップの新たな質問項目を見いだすこと、3) 今後もナレッジバンクにおける外部リンクのさらなる充実と定期的な内容更新のできるシステム作りについての研究を進め、次年度はアクティブ視野のファーストステップへの活用と所沢モデル(視覚障害者支援のあり方モデルの地域限定版)の実践に加え、視野狭窄リハ訓練法開発とあり方モデルシステム総経費推定についても実行し、視覚障害者支援のあり方モデルを実践的に検証する予定である。そして、それらに付随して、視野障害に対するより正しい理解、視野狭窄リハビリテーション訓練法確立に伴う視野狭窄患者の社会参加促進、あり方モデル実現による効果(a. 視覚障害の専門家の技術・知識の担保 b. 一次支援者の教育 c. 視覚に障害をもつ者のマクロニーズの把握 d. 様々な職域の一次支援者から二次支援者への連携促進 e. 視覚障害者支援サービスの地域格差の減少)が期待できる。
結論
 アクティブ視野計の作製とナレッジバンクの強化を達成することができた。しかし、ファーストステップの最適化については、データ収集が不十分となり、実現は部分的にとどまった。当初、3年計画の1年目として計画されていたが、2年計画に短縮されたことから、今後はゴールである視覚障害者支援のあり方モデルの実践的検証にむけて、研究を加速させる必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317039Z