他覚的耳鳴検査の開発と耳鳴リハビリテーション法の確立

文献情報

文献番号
201317034A
報告書区分
総括
研究課題名
他覚的耳鳴検査の開発と耳鳴リハビリテーション法の確立
課題番号
H24-感覚-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小川 郁(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 神崎 晶(慶應義塾大学 医学部)
  • 満倉 靖恵(慶應義塾大学 理工学部)
  • 大石 直樹(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,606,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人間の感覚器から得られた情報を最終的に思考や判断に導いているのは脳である。耳鳴の発症に関わる脳の機能に対する理解が著しく高まっている。そこで、本研究では耳鳴発症のメカニズムを解明し、さらに患者にしかきこえない耳鳴を第3者にも判定できるよう他覚的に判定するために研究をおこなった。
1)安静時fMRIにて耳鳴患者のfunctional connectivityを明らかにすること、
2)脳波検査にて耳鳴を判定できるかどうか検討する。
3)耳鳴に関連する遺伝子の探索を同時に行う。
以上を目的とする。
研究方法
研究1 安静時fMRIにて耳鳴患者のfunctional connectivityを明らかにし、耳鳴の治療前及び治療
後評価への臨床応用を検討した。
研究2 簡易型脳波計測装置を用いた脳波測定によって、耳鳴に対する不快度と耳鳴のピッチを他覚的に評価する試みについて脳から得られる情報を得る。その“脳波”軸で射影する方法をもとに、現在、耳鳴検査としての有用性を検証している段階である。今回は静寂下で耳鳴患者と耳鳴のない健常人の間で脳波パターンを比較した。
研究3 血液検査にて遺伝子検査を同意のもとで行った。
結果と考察
研究1の結果 正常コントロールに比べて、耳鳴患者では聴覚皮質と苦痛ネットワークである前帯状皮質とに有意な機能的結合を認めた。また、左右の聴覚皮質間の機能的結合の強さが耳鳴患者では正常コントロールに比べて有意に弱くなっていた。これらの結果から、安静時fMRIは耳鳴患者の機能的神経結合を調べるのに有用であり、耳鳴患者では聴覚領域なく非聴覚領域との機能的結合にも変化が起きていることが示唆された。
研究2の結果 耳鳴患者は健常人と比較して、9-11 Hzを中心に極めて特徴的なパターンが認められた。簡易脳波検査の耳鳴判定度は特異度72%、感度94%と算出した。
研究3の結果 遺伝子検査にてうつ関連遺伝子を中心に解析をおこなったが、有意な遺伝子は発見されていない。
結論
以上の結果から
fMRIでは、耳鳴患者において帯状回と聴覚野の機能的結合が強くなり、両側聴覚野の結合が弱い
ことが解明された。補聴器を装用することで、それらの機能的結合が改善することも判明した。
脳波検査では耳鳴ありでも苦痛度が軽症の場合は、健常者に近い脳波が出現していた。つまり耳鳴の苦痛度を客観的評価を行うことが可能になってきた。治療効果の判定も可能になるかどうかは今度の検討課題である。治療評価として患者の症状、脳波測定の有効性を検証したい。
耳鳴患者は多様であり、遺伝子検査の結果は母集団をさらに増やさないといけないかもしれない。今後はここまでのデータを基に全国調査を行っていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201317034Z