先天性サイトメガロウイルス感染症による難聴のマス・スクリーニングおよび治療法に関する研究 

文献情報

文献番号
201317031A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性サイトメガロウイルス感染症による難聴のマス・スクリーニングおよび治療法に関する研究 
課題番号
H24-感覚-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岩崎 聡(国立大学法人信州大学 医学部人工聴覚器学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座 )
  • 小池 健一(国立大学法人信州大学 医学部小児科学講座)
  • 小川 洋(福島県立医科大学附属会津医療センター)
  • 工 穣(国立大学法人信州大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
  • 塩沢 丹里(国立大学法人信州大学 医学部産科婦人科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,949,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天サイトメガロウイルス感染は、全出生児の0.5~2.5%に認められる比較的頻度の高い先天ウイルス感染症のひとつであり、感染児のうち10%は神経学的な発育障害、網脈絡膜炎、先天性感音難聴を呈する。残りの約90%は無症候性であり出生時には無症状であるが、その中の35%は遅発性の中等度~高度難聴を発症すると報告されている。特に、遅発性・進行性の種々の症状に関しては、GCVや特異抗体を用いた進行予防が可能であることが報告されており、マス・スクリーニングシステムの構築と予防医療の確立により、症状の重篤化を予防することが可能であると期待される。本研究では先天性サイトメガロウイルス感染を早期発見するためのマス・スクリーニング検査系を確立し、早期発見・早期治療の有効性の検証を目的とした。
研究方法
本年度は前年度までに確立したFTAカードを用いたマス・スクリーニング系を用いて、長野県をモデルにマス・スクリーニングのパイロット研究を行った。マス・スクリーニングとしてDNA検査を行うためには、簡便にサンプル採取が可能で、長期間保存可能なシステムが必要となるため、先天性代謝異常スクリーニングとして実施されるガスリーカードへの採血時に、DNAを高品質で長期間保存可能なFTAカードに同時にスポットする方法を用いて検討を行った。信州大学医学部附属病院、松本市民病院、諏訪赤十字病院、丸の内病院の4施設において、新出生児の両親を対象に説明用パンフレットを用いて十分に説明を行った後に書面で同意を取得しFTAカードに血液検体を採取した。採取されたサンプルを用いてTaqMan法によるCMV DNAの検出を行った。
結果と考察
本年度は前年度までに確立したFTAカードを用いたハイスループットのマス・スクリーニング系の有効性を確認することを目的に長野県内をモデルにパイロット研究として、信州大学医学部附属病院、松本市民病院、諏訪赤十字病院、丸の内病院の4施設の産科、小児科、耳鼻咽喉科の連携によりマス・スクリーニングとその後のフォローアップを開始した。その結果、1422検体の解析を完了しており、うち6例で陽性との結果が得られている(0.4%)。また、実際にFTAカードで陽性と判断された6例のうち保存臍帯サンプルの得られた3例について再検査を行った所、3例で保存臍帯でも陽性であることが確認され、スクリーニング検査として有効であることが確認された。また、CMV陽性であることが診断された児に対するフォローアップ手法に関して、小児科および耳鼻咽喉科を主体に検討を行い、マス・スクリーニング後の介入の流れを定め、プランに従いフォローアップを行っている。
結論
本研究により、定量性およびスループットに優れた定量PCR法による検出システムを構築するとともに、その感度および特異度に関して明らかにした。また、FTAカードを用いたマススクリーニングとして1422名の新生児のスクリーニング検査を実施する事が出来た。さらにまた、難聴患者における先天CMV感染症児の割合が約10%程度であることを見出した。今後更に多数の症例を解析することで、本邦における罹患者頻度が明らかとなることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201317031Z