障害者虐待の防止及び養護者・被虐待障害者の支援の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201317020A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者虐待の防止及び養護者・被虐待障害者の支援の在り方に関する研究
課題番号
H25-身体-知的-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
志賀 利一(独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 大塚 晃(上智大学総合人間科学部社会福祉学科)
  • 佐藤 彰一(國學院大學法科大学院)
  • 井上 雅彦(鳥取大学大学院医学系研究科)
  • 小川 浩(大妻女子大学人間関係学部人間福祉学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,129,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、障害者虐待防止法の趣旨に従い、①虐待の予防と早期発見の方策、②虐待発生や疑いの通報・届出の適切な対応方法、③養護者への適切な支援、④障害者福祉施設等や企業等への対応・立ち直りに向けての取り組み等、以上の①~④に関する全国での実施状況について、広範囲に事例収集し、法律上・運用上の課題を分析する。さらにモデル事例を作成し、虐待防止法の運用に関する総合的対応策と具体的な提言を最終的な目的とする。
研究方法
1.障害者虐待に関する実態の把握
(1)相談機関における認知状況及び業務実態調査
  〔目的〕相談機関における障害者虐待の認知状況の実態把握
  〔方法〕全国の相談支援事業所(一般相談)3,066ヶ所及び障害者就業・生活支援センター317ヶ所への調査票郵送による悉皆調査
(2)障害者虐待に関する事例調査
  〔目的〕障害者虐待の事例収集及び実態の把握
  〔方法〕調査①において、「虐待(疑い含む)事例の認知あり」もしくは「通報・届出あり」と回答した467ヶ所(相談支援事業所406ヶ所、障害者就業・生活支援センター61ヶ所)
2.多領域の専門家による先行研究および課題の整理
(1)検討委員会の開催
〔方法〕法律、養護者(心理・発達)、福祉施設・サービス事業所、使用者(障害者雇用)、地方自治体といった領域の専門家が参加する検討委員会を3回開催。
(2)障害者虐待防止に関する研究会の開催
  〔方法〕実践経験及び課題意識の高い自治体や有識者、先行して虐待防止法等が実施されている児童・高齢等の他分野での取り組み状況及び課題をうかがう研究会を3回開催。
(3)障害者虐待防止を考える研究セミナーの開催
  〔方法〕上記(1)、(2)の成果を発表する研究セミナーを開催した(参加者112人)。
結果と考察
業務実態調査の結果から、障害者虐待防止法が施行された平成24年度下半期では過年度及び上半期に比べ相談機関における虐待認知件数が顕著に増加していることから、障害者虐待防止法の施行による一定の効果が窺われる。また、234事例の探索的な分析からは障害者に特徴的と思われる様々な虐待の態様が示された。以下に、虐待の種類ごとに結果と考察を示す。
養護者による虐待については、自治体に対する支援として虐待の判断や対応に資するような情報が提供される必要、及び継続的な支援及びケースマネジメントの重要性が指摘できる。障害者福祉施設従事者等による虐待については、事業所の種類により虐待の態様が異なることや障害者からの搾取を意図的に行うような明らかに悪意のある法人の存在を踏まえた虐待への対応とともに虐待が発見されづらい障害者支援施設における効果的な虐待防止の在り方の検討が求められる。使用者による虐待については、給与の未払いを中心とした経済的虐待と、上司や同僚からの身体的虐待や心理的虐待が事例調査で特徴的であったが、虐待防止の体制整備にあたっては国調査による虐待事案は労働局の指導・監督の結果として把握された労働関係法規違反が大半であることを踏まえる必要がある。
結論
障害者虐待防止は予防-介入-事後対応という3つの場面から成り立っていることを理解した上で対応する必要がある。その中で、養護者虐待にはソーシャルワーク的対応、障害者福祉施設従事者等による虐待は事業種類によって虐待の態様が異なることを理解した上での対応の必要性がうかがえた。また、事例収集より虐待リスクの高い世帯の特徴や障害者福祉施設従事者等による虐待は発見されづらいこと、使用者による虐待は賃金の不払いや不当な労働条件など、経済的虐待の事例の多いこと等の特異性が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201317020Z