腎臓機能障害者の高齢化に伴う支援のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201317017A
報告書区分
総括
研究課題名
腎臓機能障害者の高齢化に伴う支援のあり方に関する研究
課題番号
H25-身体-知的-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
日ノ下 文彦((独)国立国際医療研究センター 腎臓内科)
研究分担者(所属機関)
  • 戸村 成男(浦和大学 総合福祉学部)
  • 秋葉 隆(東京女子医科大学 血液浄化センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 患者の高齢化に伴い、認知症や様々な障害を有する透析患者が著増しているため、血液透析 (hemodialysis, 以下HD)、腹膜透析 (peritoneal dialysis, 以下 PD) に携わるすべての医療施設を対象に高齢 HD、PD 患者の透析管理の実態、HD施設における送迎、長期入院 HD、介護保険制度の活用、PD 患者の実態、社会的問題に関する調査を行い、障害/高齢透析患者の支援のあり方を議論する足掛かりとすることにした。
研究方法
 2013年末、「障害透析患者の透析実態に関するアンケート調査」を全国3,805の透析施設に実施し、アンケートの回答を分析することにした。アンケートは、匿名で①各透析施設の基本情報と背景、②HD 施設における送迎の問題、③長期留置型カテーテルの問題、④長期入院 HD の問題、⑤介護保険や介護サービスの問題、⑥PD における注排液の問題、⑦在宅PD患者に対する訪問診療・支援、⑧長期入院 PD の問題等々に付、多肢選択式と自由記載により回答してもらった。アンケートの分析は、単純集計と必要に応じてクロス集計も加味して実施した。
結果と考察
 結局、全国1,530 の透析施設から回答を得た(回収率40.2%)。アンケートを集計・分析した主要な結果は以下の通りである。
①HD 施設の54.6%が患者の送迎を行っており、医療機関種別に送迎実施比率を確認したところ、無床・有床の診療所の約3/4が送迎を実施し、200床未満の比較的小規模病院の57.0%が送迎を実施していた。しかし、200床以上の中大規模病院では14.9%しか送迎を実施しておらず、地域医療に密着した中規模以上の維持 HD 施設(サテライト)や私立の小規模病院が送迎サービスに注力していると言える。一方、大規模病院や大学病院などは HD 導入や急性期の疾病を抱えた HD 患者を中心に診ているものと考えられた。送迎を実施している施設に負担感を尋ねたところ、約3/4の施設が送迎に負担を感じていた。
②HD 施設の送迎に頼らず、施設以外の送迎介助を受けている患者数は17,269人に上ったが、アンケートの回収率からするとその総数は3万人に達する可能性があり、施設による送迎と合わせ HD 患者の送迎は大きな社会的課題であると言える。
③約1/3の HD 施設で長期留置型カテーテルを使用している患者を抱えており、その数は500施設だけで計1,174人であった。長期留置型カテーテル使用患者は大規模施設ほど多い傾向が認められた。
④長期入院 HD 患者がいる施設は550施設あり(36.1%)、回答した522施設だけで5,275人もいたので、全国には実際に長期入院HD患者が1万人前後いる可能性がある。経営形態別では、私立病院や私立総合病院での長期入院HD患者の受入れが多く、医療機関種別では、200床未満の病院や有床診療所における受入れが多かった。2014年度の診療報酬改定で慢性維持透析管理加算が1日に付 100点認められたのは、長期入院 HD を継続せざるをえない患者やそうした患者を取扱う HD 施設にとって朗報であるが、今後は、人口分布に見合った長期入院 HD 施設の適切な配置を考えていかねばならない。
⑤介護保険認定を受けている患者がいる施設は、回答が得られた1,446施設の91.5%に達し、介護保険認定HD患者数は回答のあった1,323施設だけで21,550人に上っており、維持HDは実質的に介護・介助と日々直面する医療であると言える。
⑥PD の注排液を本人だけで実施していない患者数は474人と本コホートの約10%であったが、注排液の補助者は主として配偶者と親族であった。配偶者の高齢化に伴い所謂老々介助となるケースも増加するであろうし、単身家庭の増加や核家族化の進行により、高齢 PD 患者が自分だけで注排液できなくなった時に頼れる近親者が自宅近くにいないケースの増加も予想される。ヘルパーによる支援や介護スタッフの活用も、今後は検討すべき課題かと思われる。
⑦急性期疾患がないのに3ヶ月以上入院しているPD患者がいるPD施設は、全体の18.5%に及んだ。また、自宅・職場以外で PD を行っている患者を診ている PD 施設は全体の13.5%あり、注排液の場所としては病院/診療所が多かったが、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム等ではほとんど PD は実施されていなかった。今後、障害を抱えた高齢PD患者に対し、どこでどういう形で PD を継続していくのか議論していく必要がある。
結論
 透析患者の高齢化に伴う医療現場の問題点が明らかになったので、次年度以降は制度改革や医療改革も含め支援のあり方に関し様々な観点から議論を尽くし、具体的な対策を打ち出していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201317017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
3,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 692,608円
人件費・謝金 574,762円
旅費 0円
その他 1,432,630円
間接経費 300,000円
合計 3,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
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