文献情報
文献番号
201317010A
報告書区分
総括
研究課題名
移植治療後の慢性期完全脊髄損傷患者のリハビリテーションと脳機能再構成および脊髄再生との関連性についての評価法の開発
課題番号
H24-身体-知的-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岩月 幸一(国立大学法人大阪大学 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,530,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
慢性期脊髄損傷に対する有効な神経再生療法は未だ無く、完全脊髄損傷患者においては残存機能の強化リハビリテーションが唯一の治療法となっている。当グループは損傷後1年以上経過した慢性期完全脊髄損傷患者に対して自家嗅粘膜移植を行い、一定の機能回復を見ているが、慢性期では下肢筋肉の萎縮による神経栄養因子の枯渇から脊髄前角細胞の変性•下位運動神経の不全がおこり、上位の脊髄軸索再生のみでは十分な機能回復は得られないことが示唆される。また効果的なリハビリテーションプログラム開発には、脊髄の軸索再生や脳の神経活動の機能的回復を経時的に評価する必要がある。
本申請では慢性期完全脊髄損傷患者に自家嗅粘膜移植を行い、その術前術後に積極的リハビリテーションを導入し、より効率的な下肢機能回復を目指すことを目的とする。
本申請では慢性期完全脊髄損傷患者に自家嗅粘膜移植を行い、その術前術後に積極的リハビリテーションを導入し、より効率的な下肢機能回復を目指すことを目的とする。
研究方法
本研究では機能保存的リハビリテーション•脊髄神経再生•脳神経機能の変化の観点から、下記6つの工程を設ける。
○1術前に廃用下肢筋のリハビリテーションにより、筋肉由来神経栄養因子の産生と下位運動神経の維持を図る。○2自家嗅粘膜移植による脊髄神経軸索の再生。○3術後のバイオフィードバックを用いた随意的筋放電の誘発。○4長下肢装具装着による積極的歩行訓練。さらに、これら機能回復のプロセスの客観的指標として、下肢運動指標に加えて、新たに○5DTI(diffusion tensor imaging)で損傷脊髄移植部位の軸索再生を可視化する。○6脳fMRIで脳神経活動の再構築を解明する。
(倫理面への配慮)
本研究は【ヘルシンキ宣言】【臨床研究に関する倫理指針】ならびに本臨床研究実施計画書および同意説明文書を尊守して実施している。
○1同意説明と同意取得
研究責任医師等は治療に先立ち、未来医療臨床研究審査•評価委員会の承認を得た同意説明文書を用いて文書による同意を得る。同意取得のため研究責任医師等は、治療への参加に関し、被験者に強制するなど不当な影響を及ぼすことのないよう留意する。
本臨床研究への参加は被験者本人の自由意志による同意を、同意書に署名または記名•捺印し、日付を自ら記入することにより取得する。同意取得後、同意書の写し及び同意説明文書を同意者本人に交付する。
○2同意の撤回
一旦書面による同意を行った被験者であっても、嗅粘膜移植術実施前であればいつでも撤回できる。
○3臨床研究内容の開示
同意説明を行った患者、または被験者に本臨床研究実施計画書の開示を要求されれば、それに応じるものとする。
○4同意書及び同意説明文書の改訂
研究責任医師等は、研究に継続して参加するか否かについて被験者の意思に影響を与える可能性のある情報や、被験者の同意に関連しうる新たな情報を入手した場合には、当該情報を直ちに口頭で被験者に伝える。また、情報提供した旨を診療録に記録し、被験者が研究に継続して参加するか否かを確認する。被験者が未成年の場合は、同時に法定代理人に対してもこれを行う。
○1術前に廃用下肢筋のリハビリテーションにより、筋肉由来神経栄養因子の産生と下位運動神経の維持を図る。○2自家嗅粘膜移植による脊髄神経軸索の再生。○3術後のバイオフィードバックを用いた随意的筋放電の誘発。○4長下肢装具装着による積極的歩行訓練。さらに、これら機能回復のプロセスの客観的指標として、下肢運動指標に加えて、新たに○5DTI(diffusion tensor imaging)で損傷脊髄移植部位の軸索再生を可視化する。○6脳fMRIで脳神経活動の再構築を解明する。
(倫理面への配慮)
本研究は【ヘルシンキ宣言】【臨床研究に関する倫理指針】ならびに本臨床研究実施計画書および同意説明文書を尊守して実施している。
○1同意説明と同意取得
研究責任医師等は治療に先立ち、未来医療臨床研究審査•評価委員会の承認を得た同意説明文書を用いて文書による同意を得る。同意取得のため研究責任医師等は、治療への参加に関し、被験者に強制するなど不当な影響を及ぼすことのないよう留意する。
本臨床研究への参加は被験者本人の自由意志による同意を、同意書に署名または記名•捺印し、日付を自ら記入することにより取得する。同意取得後、同意書の写し及び同意説明文書を同意者本人に交付する。
○2同意の撤回
一旦書面による同意を行った被験者であっても、嗅粘膜移植術実施前であればいつでも撤回できる。
○3臨床研究内容の開示
同意説明を行った患者、または被験者に本臨床研究実施計画書の開示を要求されれば、それに応じるものとする。
○4同意書及び同意説明文書の改訂
研究責任医師等は、研究に継続して参加するか否かについて被験者の意思に影響を与える可能性のある情報や、被験者の同意に関連しうる新たな情報を入手した場合には、当該情報を直ちに口頭で被験者に伝える。また、情報提供した旨を診療録に記録し、被験者が研究に継続して参加するか否かを確認する。被験者が未成年の場合は、同時に法定代理人に対してもこれを行う。
結果と考察
2014年4月30日までに6例の自家嗅粘膜移植術を実施した。うち3例に術後リハビリテーション6ヶ月後から、下肢筋群に随意性の筋電図の発現を認め、運動機能の回復を認めている。うち1名は杖及び短下肢装具使用ながら、500m以上の歩行が可能となっている。また本症例においては、MEP(motor evoked potential)の発現を下肢筋に認めており、これは神経経路の接続を電気生理学的に証明し得たものである。慢性期完全脊髄損傷において、これを確認し得たことは、国際的にも脊髄損傷の医学史上初めてのことである。また本症例においては、脳の運動領野の下肢相当領域の拡大が認められた。他の2例においては未だ実用的ではない。その他の症例においては、体幹の支持性向上によるADLの改善が見られている。全例において、感覚および膀胱直腸障害の回復は認めていない。
回復が得られなかった1例目は術後半年でリハビリを休止、また2例目は随意性筋電図を確認できたものの、規定されていた術後1年でリハビリを中止している。3例目は損傷部位が腰膨大にあり、他症例で認められた腱反射の亢進や不随意運動は認められなかった。4症例目はリハビリテーションの継続とともに回復が得られている。5、6症例目はまだ術後半年であるが、6症例目からは随意性の筋電図が得られている。
回復が得られなかった1例目は術後半年でリハビリを休止、また2例目は随意性筋電図を確認できたものの、規定されていた術後1年でリハビリを中止している。3例目は損傷部位が腰膨大にあり、他症例で認められた腱反射の亢進や不随意運動は認められなかった。4症例目はリハビリテーションの継続とともに回復が得られている。5、6症例目はまだ術後半年であるが、6症例目からは随意性の筋電図が得られている。
結論
自家嗅粘膜移植法による慢性期脊髄完全損傷患者に、一定の回復が得られつつある。同時に本移植療法の適応症が徐々に明らかになっており、リハビリテーションの継続の重要性も明らかとなっている。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
-