医療的ニーズのある在宅重度障害者に対する喀痰吸引等提供事業所の拡大支援のための重層的医療支援モデルの開発  

文献情報

文献番号
201317008A
報告書区分
総括
研究課題名
医療的ニーズのある在宅重度障害者に対する喀痰吸引等提供事業所の拡大支援のための重層的医療支援モデルの開発  
課題番号
H24-身体-知的-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
松葉佐 正(国立大学法人熊本大学 医学部附属病院 重症心身障がい学寄附講座)
研究分担者(所属機関)
  • 小薗真知子(熊本保健科学大学保健科学部リハビリテーション学科)
  • 生田まちよ(熊本大学大学院生命科学研究部環境社会医学部門看護学講座小児看護学領域)
  • 三渕 浩(熊本大学医学部附属病院 新生児学寄附講座)
  • 口分田政夫(重症心身障害児施設 びわこ学園医療福祉センター草津)
  • 澤野邦彦(広島県立障害者リハビリテーションセンター)
  • 末光 茂(川崎医療福祉大学、社会福祉法人旭川荘、全国重症心身障害日中活動支援協議会)
  • 木実谷哲史(島田療育センター)
  • 三田勝己(星城大学大学院健康支援学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,024,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 平成24年度からの、介護職員等による喀痰吸引等の実施のための制度が発足したことは、在宅重度障害児者と家族にとって大きな前進であったが、研修を受講する介護職員等は増えても、実際に喀痰吸引業務に従事する者は少数である。本研究は、昨年度に続き、在宅等での喀痰吸引を重層的医療支援によって拡大させることを目的とした。
研究方法
 熊本地域では、重層的支援の具体例と問題点を報告した。全国各地の研究者は、喀痰吸引を含めた在宅重症児者の各地での支援の現状を報告し、対策の立案を試みた。先進国での吸引の現状についても調査した。
結果と考察
1.熊本地区
(1) 三渕らは、大学NICUでの3年間の入院症例の中で、気管切開を施行された9名の在宅移行の現状を調査した。9名全員が気管内吸引を必要とし、4名が人工呼吸器を必要とした。9名全員が訪問看護ステーションを利用していた。
(2) 緒方は、小児科クリニックで、気管切開した在宅超重症児に対して呼吸理学療法を行うセラピストと看護師、医師間で情報共有のための専用アプリケーションの使用を試みた。2名の児で適切な支援につながった。
(3) 田島は、熊本在宅ドクターネット事務局長として、在宅重度障害児者の訪問診療について検討した。脳卒中や大腿骨頸部骨折に関する連携パスをヒントに、地域の小児科医が在宅療養支援診療医と連携することが、問題への対処に有効と思われた。
(4) 小薗は、熊本県内の言語聴覚士301名にアンケート調査を行った。172名(57%)のうち56名が小児に対応しており、そのうちの22名が嚥下リハを行っていた。小児の嚥下リハのニーズはあるものの、嚥下造影や内視鏡的嚥下検査などの支援体制に地域差があった。
(5) 鍬田は、NICUコーディネーターとして在宅移行を支援した22例の経験から、コーディネートの方略をまとめた。家族の持つ力を引き出すこと、社会資源の開発も含めた支援チーを構築することが必要であった。
(6) 福島・川添は、重心施設における医療連携コーディネーターとしての活動について報告した。全国的に求められている「障害児ケアマネージャー」として,大きなニーズがあることが判明した。
(7) 野本は、訪問介護ステーションにおける在宅超重症児に対する喀痰吸引業務の実際を報告した。研修のための手続きの煩雑さが判明した。医療と福祉の連携が必須と思われた。
(8) 松葉佐(研究代表)、澤野(広島)、汐田(鳥取)、三渕(熊本)による、市町村からの在宅支援についてのアンケート調査から、喀痰吸引を要する児者のほとんどが吸引器の助成を受けていること、近くの老人施設での在宅支援の希望があることが明らかになった。
2.全国地区
(1)末光らによる岡山県内のヘルパー事業所へのアンケート調査から、痰吸引に積極的に取り組んでいる事業所が少ないこと、重症児(者)が利用しやすい支援のネットワークが重要であることが判明した。
(2)木実谷らは、東京都内25カ所の重症心身障害児・者通所事業所(旧称)での医療的ケアの実態調査で、超・準超重症児が各々約100名、それ以外が約250名であること、23施設中14施設で介護職員の医療的ケア実施施設登録済みであること、非医療職による吸引と胃瘻ケアが、24年度の制度改正後で増えていることが判明した。研修後の安全管理フォローアップ体制や、緊急時の医療機関との連携も半数以上でとれていた。
(3)口分田らによる、滋賀県内の研修修了者へのアンケート調査で、半数が吸引を業務としていることが判明した。3割が医師との連携・情報共有に課題を持っていた。看護師との連携は良好であった。
(4)三田・平元は、ICTを用いた喀痰吸引の支援システムの要件を確認し、それに基づいてICT機器システムを開発した。次年度実証運用を行う予定である。
(5)曽根による、ヨーロッパ6か国とオーストラリア、台湾における重度重複障害児者への医療的ケアの実態調査で、両親以外の医療的ケアの担い手(他の家族、介護士、保育士、教師)は国によって異なることが判明した。また、ライセンスの要否は国によって分かれた。
(6)汐田は、インターネットを介したテレビ電話(iPadⓇ)を用いて2名の重症児の地域生活支援を行った。病棟側での受信のための人員確保、安定した通信環境、診療報酬などが課題として挙げられた。
結論
 在宅重度障害児者に対する非医療職の吸引等は24年の制度改正以後、徐々に進展していることが明らかとなった。医療、看護、コーディネーターによる支援も進みつつあり、ICTを応用した遠隔見守りも有効であった。医療と福祉の連携、特に医療側の認識の遅れが課題と思われた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201317008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,531,000円
(2)補助金確定額
6,531,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,036,081円
人件費・謝金 2,375,676円
旅費 1,081,500円
その他 530,743円
間接経費 1,507,000円
合計 6,531,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
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