障害者のスポーツにおける障害と種目特性に関連した競技力向上等に関わる研究

文献情報

文献番号
201317007A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者のスポーツにおける障害と種目特性に関連した競技力向上等に関わる研究
課題番号
H24-身体-知的-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
飛松 好子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 緒方 徹(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 冨安 幸志(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 樋口 幸治(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 岩渕 典仁(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 山下 文弥(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 徳井 亜加根(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 中村 隆(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 星野 元訓(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 中村 喜彦(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 中澤 公孝(東京大学)
  • 木下 裕光(筑波技術大学)
  • 石塚 和重(筑波技術大学)
  • 香田 泰子(筑波技術大学)
  • 福永 克己(筑波技術大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
8,270,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、総合的メディカルチェック等によるスポーツ競技者の競技力向上に関する実態調査を競技別に検討し、障害や種目特性に配慮した競技力向上を検討することを目的とした。
研究方法
①各競技種目を行っている選手のメディカルチェック
一定レベル以上の競技力を有する障害者スポーツ選手に、総合的メディカルチェック等による競技力向上に関する実態調査を実施した。
②トレーニング・コンディショニングへの試行
データ還元方法を試行し、合わせて、頸髄損傷ランナー4名について、トレーニングやコンディショニングに関する選手強化プログラムの試行も行った。
③種目特性に特化したスポーツ障害・運動機能・テスト方法の試行
視覚障害者5人制サッカー日本代表選手に調査を行った。
④種目特性に基づいたスポーツ用具の開発
・C7頚髄損傷者1名を対象に、チェアスキー用バケットシートの適合を身体の支持性に関して定量的手法を用いて検討を行った。
・日本代表女子ゴールボール選手に、プロテクター装着の実態調査から専用プロテクターの開発コンセプトを決定し試作、評価を行った。
・褥瘡既往歴を持つ脊髄損傷完全麻痺者と既往歴のない脊髄損傷不全麻痺者を対象として、車椅子バスケットボール用車椅子クッションの適合について褥瘡予防の観点から接触圧力分布と座位身体形状の定量的評価手法の検討を行った。
結果と考察
①メディカルチェックでは、障害や種目に加えて、性別による特性が認められた。
②トレーニング・コンディショニング場面では、選手の練習環境や外的環境の変化が大きく影響していた。
③アンケート調査では、競技歴が短く、競技環境が不十分で、メディカルサポートも十分であった。スポーツ傷害では、健常者サッカーやフットサルと同様に下肢の傷害が多かったが、B1クラスでは、頭部・顔面部、上肢におけるスポーツ傷害の割合も高かった。メディカルチェックでは、大部分の選手が障害原因である眼疾患以外は健康であった。運動機能は、Vo2max、下肢筋力などトップアスリートのレベルに達している選手は少なく、関節可動域の低下なども見られ、セルフケアの指導や競技力向上の支援を行う必要がある。また、健常者の同様なスポーツ種目とは、要因が異なる外傷が発生し、スポーツ競技歴、競技環境の未整備が現状であった。一方で、種目特性に関する動作解析やフィールドテストでは、より効率の良い測定方法を導入し、十分な解析が今後の課題である。
④スポーツ用具開発では、種目特性に基づいたプロテクター開発で、力学的、生理学的、主観的評価を実施し、従来使用のプロテクターに比べ、衝撃吸収性、低反発性、快適性について優れていた。その反面、障害への配慮を要する課題もあり、今後の改善とした。ゴールボール専用プロテクターに求められる機能の実現に適した衝撃吸収材はスチレンビーズであることが明らかとなったため、スチレンビーズを用いて試作プロテクターを製作し評価を実施した。その結果、力学的、生理学的評価では選手が現在使用しているプロテクターに比べ、衝撃吸収性、低反発性に優れていることが明らかで、快適性も優れていることが示唆された。しかし主観的評価では、選手が現在使用しているプロテクターと試作プロテクターに差はなく、全盲の選手では、操作性に課題があり試作プロテクターを装着できなかった。
運動機能を加味したバケットシートの適合では、前後方向の運動性に関して検討を行い、背シート高と体幹可動域との関係を明らかにした。その結果、前後方向の運動に関して、①体幹屈曲に伴う胸部パッドの前方回転と下方シフトを抑制することにより身体の支持性が向上した。加えて②それらの運動を抑制する新たな胸部パッドの構造を提案した。左右方向の支持性に関して、③背シート高と体幹可動域との関係を明らかにした。また④障害の程度に依存しない背シート高の上限値を提案すると共に、解剖学的特徴と併せて考察を行った。
接触圧力分布計測からは、両者共に静止座位と模擬的動作下で坐骨、及び大転子への圧力集中から既製クッションの適合性を評価し、不適合であることを確認した。また、骨盤大腿部の座位形状測定から、軟部組織の萎縮による坐骨の突出を表象する指標を検討し、形状の特徴を可視化と定量化により有用な評価指標を得た。更に、障害特有の合併症の影響をクッションから検討し、特定の部位への圧力集中が確認でき、障害に起因する身体形状の特徴を可視化と定量化により有用な評価指標を得た。
結論
このように競技力向上には、トレーニングやコンディショニングの支援環境および競技環境に加え、スポーツ用具とのバランスが競技力に深く関連していることが考えられた。
これらのことから、総合的な医科学支援システムの早急な構築と各専門分野の連携が必須であることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201317007Z