障害者のQOL評価に基づくケアマネジメント手法開発の研究

文献情報

文献番号
201317003A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者のQOL評価に基づくケアマネジメント手法開発の研究
課題番号
H23-身体-知的-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
白澤 政和(桜美林大学 自然科学系)
研究分担者(所属機関)
  • 小澤 温(筑波大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
1,608,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、障害者のQOLを高めるという観点から、障害者ケアマネジメントの手法を開発すること、さらに、そうしたケアマネジメントの能力を有しているケアマネジメント従事者(制度では、障害者に関わる相談支援専門員)のケアマネジメント実践の評価基準を提示することを目的とした。
研究方法
平成25年度は平成24年度に明らかにした構成要素を踏まえて、平成24年度と同様の対象者に対してマッチングデザインのパネル調査を行った。この調査に加えて、質問紙調査の対象となったケアマネジメント従事者(相談支援専門員)(相談支援事業所5箇所、相談支援専門員6人)に対して、調査対象となったケースの経年的な変化に関する項目をまとめたインタビューガイドを用いた半構造化面接を行い、対象ケースの変化要因の分析と障害者ケアマネジメントの評価視点の妥当性について検討した。
結果と考察
パネル調査の結果としては、利用者調査では地域で暮らす自信が高くなる傾向があり、入所を検討することが減少する傾向があった。但し、相談支援に対する満足度は低下していた。相談支援専門員調査からは、1年間の変化では、利用者の状況変化は見られず、一部のサービスで増加する傾向がみられた。質的調査の結果としては、相談支援を受けることにより、利用者は状態、気持ち、環境の変化を示し、その要因として、相談支援専門員側での傾聴、エンパワメント、対話、環境調整、家族支援が、利用者側の話すこと、自ら気づくこと、納得すること、目標設定、安心感が、両者以外の要因としては、居宅介護、通所施設、医療、仲間、家族、近隣住民が示された。
結論
3年間の研究結果として、ケアマネジメントを介して利用者のQOLを評価していく上では、利用者と相談支援専門員の関係や、他のフォーマル・インフォーマルケアのサービス提供状況も含めて検討していく必要が明らかになった。同時に、1年間で相談支援に対する評価にはさほど変化がなく、維持している傾向にあることが分かった。これは、ケアマネジメント利用時からの6か月間での利用者側の変化が大きかったが、その後の1年間ではケアマネジメント自体が安定期に入っているとも言える。それを高く評価することも可能であるが、同時に、モニタリングでの頻度や使用時間により、再アセスメントの深みが十分実施できているのかどうかを、制度面からと実践面から検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201317003B
報告書区分
総合
研究課題名
障害者のQOL評価に基づくケアマネジメント手法開発の研究
課題番号
H23-身体-知的-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
白澤 政和(桜美林大学 自然科学系)
研究分担者(所属機関)
  • 小澤 温(筑波大学 人間系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、障害者のQOLを高めるという観点から、障害者ケアマネジメントの手法を開発すること、さらに、そうしたケアマネジメントの能力を有しているケアマネジメント従事者(制度では、障害者に関わる相談支援専門員)のケアマネジメント実践の評価基準を提示することを目的とした。
特に、障害者の生活の質(以下、QOLとする)の向上に主眼をおいたケアマネジメント手法の開発と障害種別を超えた当事者の意思に基づいた評価をふまえた相談支援専門員の評価基準の開発が必要であると考えた。先行研究として行われた高齢者分野でのQOLをベースにしたケアマネジメントの評価プロセスを障害者分野に援用し、保健・医療・福祉・就労・介護サービス利用を効果的に支援し、QOLを高めるケアマネジメント手法の開発に資することを目的とした。
研究方法
平成23年度は、身体、知的、精神の3障害別の相談支援専門員の関わった事例研究により、障害者のQOLを高めるうえでの構成要素を仮説的に抽出した。その結果、身体機能面、健康管理面、経済生活、心理・精神面、人間関係・社会関係面、家族関係面、移動・交通・住宅環境面、の7側面の構成要素に整理した。10か所の相談支援事業所に対して、調査員の訪問によるインタビューガイドを用いた面接調査を実施した。インタビュー項目は、QOL構成要素の妥当性の評価、事例の支援において重視している側面、重視している理由、エンパワメントの評価視点などである。障害者のQOLの構成要素に関して相談支援専門員の面接調査から、身体機能面、健康管理面、経済生活、心理・精神面、人間関係・社会関係面、家族関係面、移動・交通・住宅環境面、の7側面の構成要素に整理できた。
平成24年度は、平成23年度で得られた知見をもとに、相談支援専門員と障害者本人を対象にしたマッチングデザインの量的調査を行い、障害者の身体・心理・社会面での客観的評価と、障害者の主観的評価を基にして、障害者のQOLを左右する構成要素を分析した。その際に、障害種別を超えた障害者全体に共通するQOL構成要素を中心に検討した。相談支援専門員と担当する障害者を対象にしたマッチングデザインの量的調査を行い、身体障害者では健康管理面と家族関係面が、知的障害者および精神障害者では、人間関係・社会関係面、家族関係面の側面が支援と深く関係していた。相談支援専門員では、障害種別よりもエンパワメント支援を中心に据えており、その強化に関連する側面を重視する傾向が強かった。
平成25年度は平成24年度に明らかにした構成要素を踏まえて、平成24年度と同様の対象者に対してマッチングデザインのパネル調査を行った。この調査に加えて、質問紙調査の対象となったケアマネジメント従事者に対して、調査対象となったケースの経年的な変化に関する項目をまとめたインタビューガイドを用いた半構造化面接を行い、対象ケースの変化要因の分析と障害者ケアマネジメントの評価視点の妥当性について検討した。パネル調査の結果としては、利用者調査では地域で暮らす自信が高くなる傾向があり、入所を検討することが減少する傾向があった。相談支援専門員調査からは、1年間の変化では、利用者の状況変化は見られず、一部のサービスで増加する傾向がみられた。質的調査の結果としては、相談支援を受けることにより、利用者は状態、気持ち、環境の変化を示した。
結果と考察
ケアマネジメントを介して利用者のQOLを評価していく上では、利用者と相談支援専門員の関係や、他のフォーマル・インフォーマルケアのサービス提供状況も含めて検討していく必要が明らかになった。同時に、1年間で相談支援に対する評価にはさほど変化がなく、維持している傾向にあることが分かった。これは、ケアマネジメント利用時からの6か月間での利用者側の変化が大きかったが、その後の1年間ではケアマネジメント自体が安定期に入っているとも言える。それを高く評価することも可能であるが、同時に、モニタリングでの頻度や使用時間により、再アセスメントの深みが十分実施できているのかどうかを、制度面からと実践面から検討する必要がある。
結論
ケアマネジメントの手法開発においては直接的な相談支援と間接的なサービス調整が必要となることが示唆された。そして、特にサービス調整において連携が必要となることが示された。また、ケアマネジメント従事者のケアマネジメント実践の評価基準においても、サービス調整が評価の視点として示される必要性が示唆された。そして、その際に利用者に最も影響を及ぼす心理・精神面や周囲との関係面の支援に目を向ける重要性も示唆された。それらのことを意識することによって、ケアマネジメントによって利用者の状態の安定、気持ちの変化、利用者を取り巻く環境の変化が図られる傾向にあることがうかがわれた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-05-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201317003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
相談支援専門員及び利用者とも、ケアマネジメントにおける直接的な支援と間接的な支援の必要性が示された。これは、利用者支援において、利用者をしっかりと受け止め、適切なサービスコーディネートを行うことが必要であることを示している。また、支援における連携や調整の必要性も相談支援専門員より指摘されており、それらの点を踏まえたケアマネジメントの展開が今後不可欠になる。相談支援専門員による精神面や周囲との関係面への支援が利用者の評価に影響しており、これらの側面での支援が重要である。
臨床的観点からの成果
障害者に関わる相談支援専門員がケアマネジメントでアセスメントとして着目しているQOLの構成要素は、①身体機能面、②健康管理面、③経済生活、④心理・精神面、⑤人間関係・社会関係面、⑥家族関係面、⑦移動・交通・住宅環境面の7側面である。このうち特に、④心理・精神面、⑤人間関係・社会関係面、⑥家族関係面の3側面に焦点をあてた働きかけを通して、他の4側面への波及効果のある支援計画づくりを含んだケアマネジメント実践を行うことの重要性が示唆された。
ガイドライン等の開発
障害者総合支援法で義務づけられているサービス等利用計画の作成に関しても、中心となる3側面とその他の4側面を意識したアセスメントと支援計画の策定が必要であり、そのことのできる相談支援専門員の養成に必要なガイドラインの作成のための基礎資料を提起することができた。また、都道府県において実施されている相談支援従事者のための初任研修、現任研修に必要とされるアセスメント能力、支援計画の質の評価に関しても基礎的な知見を提供することができた。
その他行政的観点からの成果
障害者総合支援法で義務づけられているサービス等利用計画の作成が本格実施されていくが、そのことのできる相談支援専門員の養成に必要なガイドライン作成の基礎資料を示すことができた。同時に、都道府県において実施されている相談支援従事者研修でのアセスメント能力、支援計画の質の評価に関しても基礎的な知見を提供することができた。
その他のインパクト
今後、いくつかの論文や学会発表により、さらには相談支援専門員への講演・研修活動を通じて、明らかになったエビデンスについて公表し、普及してきたが、今後も継続して実施していきたい。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201317003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,608,000円
(2)補助金確定額
1,608,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 217,202円
人件費・謝金 514,260円
旅費 69,410円
その他 807,259円
間接経費 0円
合計 1,608,131円

備考

備考
預金利息

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-