かかりつけ医/非腎臓専門医と腎臓専門医の協力を促進する慢性腎臓病患者の重症化予防のための診療システムの有用性を検討する研究

文献情報

文献番号
201316008A
報告書区分
総括
研究課題名
かかりつけ医/非腎臓専門医と腎臓専門医の協力を促進する慢性腎臓病患者の重症化予防のための診療システムの有用性を検討する研究
課題番号
H24-難治等(腎)-指定-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
山縣 邦弘(筑波大学 医学医療系臨床医学域腎臓内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 井関 邦敏(琉球大学 医学部附属病院)
  • 北村 健一郎(熊本大学 大学院生命科学研究部)
  • 木村 健二郎(聖マリアンナ医科大学)
  • 草野 英二(宇都宮社会保険病院)
  • 佐藤 博(東北大学 大学院薬学研究科)
  • 柴田 孝則(昭和大学 医学部)
  • 成田 一衛(新潟大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 西野 友哉(長崎大学病院)
  • 槇野 博史(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 松尾 清一(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 御手洗 哲也(埼玉医科大学 総合医療センター)
  • 安田 日出夫(浜松医科大学)
  • 渡辺 毅(福島県立医科大学 医学部)
  • 和田 隆志(金沢大学 大学院医薬保健学総合研究科)
  • 中村 丁次(公益社団法人 日本栄養士会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(腎疾患対策研究経費)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
18,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腎疾患重症化予防にはかかりつけ医と腎臓専門医の間の診療協力体制、コメディカルの活用などが喫緊の課題であり、本研究の目的は腎疾患重症化予防のための戦略研究で得られた成果の科学的分析とその成果を活用推進することにある。
研究方法
平成19~23年度 CKD患者を対象に戦略研究(腎疾患重症化予防のための戦略研究)として日本全国の559人のかかりつけ医のもとで診療を受ける2,417人の患者を対象に弱介入群としてCKD診療ガイドに従って参加者を診療するA群と、強介入群として、診療目標達成支援ITシステム・受診促進支援に加え、コメディカルから生活食事指導をうけるB群での各地区医師会医会をクラスターとするクラスターランダム化比較研究が平成24年3月まで3.5年間行われた。
本研究は、戦略研究により得られた成果をより具体的にわが国の医療、施策に反映させるために、主要評価項目、副次評価項目についての、研究終了時点での状況を確認調査すると同時に、本研究に協力いただいた腎専門医、かかりつけ医、管理栄養士からの情報収集と分析、生活食事指導方法の検証、医療経済分析を交えた介入の効果についての検討を行った。
結果と考察
1.かかりつけ医や腎専門医への働きかけを中心とした戦略研究参加地域への調査の補填と精査
戦略研究期間内に把握することが困難であった一部の情報(透析導入・心血管イベント・受診中断理由など)をかかりつけ医や腎専門医へ働きかけ、これまで明らかでなかった事象を含めてデータの補填を行った。その結果戦略研究介入開始から3.5年の解析を行うことが可能となった。研究結果からは、介入A群、介入B群間にて、受診継続率(介入A群83.2%、介入B群88.45%(p=0.0121))、連携達成率(介入A群16.0%、介入B群34.3%(p<0.0001))、併診率(介入A群9.2%、介入B群20.4%(p<0.0001))に有意差が認められ、かかりつけ医/非腎臓専門医に対する診療支援により、かかりつけ医/非腎臓専門医と腎臓専門医の協力を促進することができた。さらには介入B群において血清Cre2倍化到達率(介入A群6.7%、介入B群4.4%(p=0.018))や50%eGFR低下率(介入A群8.1%、介入B群5.6% (p=0.014))に低下を認められ、とくにCKDステージ3ではより効果を認められたことから、腎疾患の重症化予防という側面からも、今回の研究で行ったCKD対策が有意義である可能性が示唆された。
2.かかりつけ医、腎臓専門医、コメディカルを対象としたCKD講演会などの促進
参加かかりつけ医、腎臓専門医、コメディカルが各地域単位でCKD重症化予防に向けた最新の知見を得る講演会の開催と、討論する場である地域連携ミーティングの開催を促進した。
3.生活・食事指導の客観的な評価
チェックリストによる評価の信頼性と妥当性の調査を行った。生活習慣・食事の聞き取り調査の信頼性についての評価と、より正確な評価の一致度を測定した。食塩摂取量は一致率97.1%、タンパク摂取量は一致率87.5%、エネルギー摂取量は一致率59.2%であり、食塩やタンパク摂取に関しては聞き取り調査ではおおむね正確であると考えられるが、200kcalごとのエネルギー調査では難しい面があると示唆された。
4.生活・食事指導方法への管理栄養士からの意見集約
戦略研究の参加管理栄養士へ、指導方法へのアンケート調査を行い、244名の回答(回収率72.2%)を得た。結果としては、指導で用いられたチェックリストは概ね高い評価を得られた。
5.CKDステージ進行と医療経済やQOLとの関連の調査
戦略研究期間内にすでに明らかにしたCKD患者に対するQOL調査 (Tajima R et al, 2010,Clin Exp Nephrol)を用いて、戦略研究参加者における介入の費用対効果を算出するため、データの補填と精査を行った。
6.各地域での取り組みが直接的にアウトカムに表れるような指標の確立
各地域における独自のCKDに対する取り組みや、戦略研究に対する二次研究の募集を行った。
7.拠点施設会議の開催
進捗状況報告会を開催し、本研究の結果や今後の展望について意見交換を行った。
結論
戦略研究「腎疾患重症化予防のための戦略研究」により得られた成果をより具体的にわが国の医療、施策に反映させるために、データの精度を上げ、指導方法の検証と、医療経済分析に関する情報収集を行った。今後は得られたアウトカムを施策に反映し、国内外に情報発信していく。

公開日・更新日

公開日
2018-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201316008B
報告書区分
総合
研究課題名
かかりつけ医/非腎臓専門医と腎臓専門医の協力を促進する慢性腎臓病患者の重症化予防のための診療システムの有用性を検討する研究
課題番号
H24-難治等(腎)-指定-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
山縣 邦弘(筑波大学 医学医療系臨床医学域腎臓内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 井関 邦敏(琉球大学医学部附属病院)
  • 北村 健一郎(熊本大学大学院生命科学研究部)
  • 木村 健二郎(聖マリアンナ医科大学)
  • 草野 英二(宇都宮社会保険病院)
  • 佐藤 博(東北大学 大学院薬学研究科)
  • 柴田 孝則(昭和大学 医学部)
  • 成田 一衛(新潟大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 西野 友哉(長崎大学病院)
  • 槇野 博史(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 松尾 清一(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 御手洗 哲也(埼玉医科大学 総合医療センター)
  • 安田 日出夫(浜松医科大学)
  • 渡辺 毅(福島県立医科大学 医学部)
  • 和田 隆志(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科)
  • 中村 丁次(公益社団法人日本栄養士会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(腎疾患対策研究経費)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腎疾患重症化予防にはかかりつけ医と腎臓専門医の間の診療協力体制、コメディカルの活用などが喫緊の課題である。本研究の目的は戦略研究(腎疾患重症化予防のための戦略研究)で得られた成果の科学的分析とその成果を活用推進することにある。
研究方法
平成19~23年度 CKD患者を対象に戦略研究として日本全国の559人のかかりつけ医のもとで診療を受ける2,417人の患者を対象に弱介入群としてCKD診療ガイドに従って参加者を診療するA群と、強介入群として、診療目標達成支援ITシステム・受診促進支援に加え、コメディカルから生活食事指導をうけるB群での各地区医師会医会をクラスターとするクラスターランダム化比較研究が平成24年3月まで3.5年間行われた。参加地区医師会・医会は49、目標参加者数2,500名に対し2,417名が本登録され、介入A群に23医師会、参加者1,211名、介入B群に26医師会、参加者1,206名が割り付けられた。
本研究は戦略研究により得られた成果をより具体的にわが国の医療、施策に反映させるために、主要評価項目、副次評価項目についての研究終了時点での状況を確認調査すると同時に、情報収集と分析、生活食事指導方法の検証、医療経済分析を交えた介入の効果についての検討を行った。
結果と考察
1.かかりつけ医や腎専門医への働きかけを中心とした戦略研究参加地域への調査の補填と精査 戦略研究期間内に把握することが困難であった一部の情報(透析導入・心血管イベント・受診中断理由など)をかかりつけ医や腎専門医へ働きかけ、これまで明らかでなかった事象を含めてデータの補填を行った。その結果戦略研究介入開始から3.5年の解析を行うことが可能となった。主要評価項目は、受診継続率(介入A群83.2%、介入B群88.45%(p=0.0121))、連携達成率(介入A群16.0%、介入B群34.3% (p<0.0001))、併診率(介入A群9.2%、介入B群20.4%(p<0.0001))で有意差を認めた。CKDステージ別では、ステージ1+2,4,5では両群で有意差はないものの、ステージ3では介入A群(- 2.42±5.93ml/min/1.73m2)、介入B群(-1.92±4.41ml/min/1.73m2)でP=0.026でB群が有意に腎機能悪化スピードを改善させていた。3.5年間における腎機能の悪化スピードは介入A群(-2.6±5.8ml/min/1.73m2)、介入B群(-2.4±5.1ml/min/1.73m2)で、介入B群で悪化スピードが緩徐になる傾向(P=0.067)がみられた。副次評価項目は、血清Cre2倍化到達率(介入A群6.7%、介入B群4.4%(p=0.018))、50%eGFR低下率(介入A群8.1%、介入B群5.6%(p=0.014))に有意差を認めた。禁煙実施率、BMI変化率、血圧変化率、血圧測定実施率、HbA1c変化率、LDL-C変化率、心血管病発症率、新規透析導入率は介入B群で目標達成率は高かったものの、有意差はなかった。
2.かかりつけ医、腎臓専門医、コメディカルの連携促進
各地域単位でCKD重症化予防に向けた最新の知見を得る講演会や討論する場である地域連携ミーティングの開催を促進した。
3.生活・食事指導の客観的な評価と管理栄養士からの意見集約
チェックリストによる評価の信頼性と妥当性の調査では食塩やタンパク摂取に関しては聞き取り調査では概ね正確であるが、200kcalごとのエネルギー調査は難しい面があると示唆された。また、指導方法へのアンケート調査を行い244名の回答(回収率72.2%)よりチェックリストは概ね高い評価を得られた。
4.CKDステージ進行と医療経済やQOLとの関連調査
戦略研究期間内に報告したQOL調査 (Tajima R et al, 2010,Clin Exp Nephrol)を用いて、戦略研究参加者における介入の費用対効果を算出するためデータの補填と精査を行った。
結論
戦略研究により得られた成果をより具体的にわが国の医療、施策に反映させるために、データの精度を上げ、指導方法の検証と、医療経済分析に関する情報収集を行った。今後は得られたアウトカムを施策に反映し、国内外に情報発信していく。

公開日・更新日

公開日
2018-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201316008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
かかりつけ医に通院する2,417名のCKD患者が属する49医師会を「通常診療連携群」(介入A群)と「診療連携支援群」(介入B群)の2群に割り付けクラスター・ランダム化試験を実施した。3.5年間の介入の結果、受診中断率は介入B群で有意に低く、腎専門医の紹介・逆紹介率は介入B群で有意に高く、eGFRの悪化速度はCKDステージ3で介入B群が有意に抑制された。本研究の調査の補填と精査により戦略研究の成果が得られ、その成果は2016年にPloS Oneに掲載された。
臨床的観点からの成果
戦略研究による介入が、CKDステージ3において腎機能悪化抑制効果を認めたことは、教育介入が今後のかかりつけ医におけるCKD診療の有効性を示唆しており、戦略研究のエビデンスを正確に得ることの意義は非常に大きい。本研究の受診促進支援は男性にのみ有効であり、女性の受診継続維持法には更なる検討が必要である。今後、教育介入が長期予後に与える影響を評価するため、参加者の長期フォローアップを検討している。
ガイドライン等の開発
生活・食事指導の標準化法:戦略研究で生活・食事指導に用いたチェックリストによる評価の信頼性と妥当性の調査を行い、食塩やタンパク摂取に関しては聞き取り調査ではおおむね正確であると考えられた。生活食事指導で使用されたマニュアルは「医師・コメディカルのための慢性腎臓病生活・食事指導マニュアル」「慢性腎臓病生活・食事指導マニュアル~栄養指導実践編~」と広い職種に使いやすい内容に刷新し、Webで無料ダウンロード可能である。
その他行政的観点からの成果
かかりつけ医が診療の中心を担うCKDステージ3患者の腎機能悪化を抑制する診療法の確立を進めることが可能となった。さらに外来でのかかりつけ医に加え、コメディカルの指導の有効性を示したことから、CKD療養指導が可能な人材を育成することで医療の適正配置の実現が可能となる。
2017年より日本腎臓学会腎臓病療養指導士が創設され、参考テキストとして前述の「医師・コメディカルのための慢性腎臓病生活・食事指導マニュアル」が使用された。
その他のインパクト
これまでに引き続き、参加かかりつけ医、腎臓専門医、コメディカルが各地域単位でCKD重症化予防に向けた最新の知見を得る講演会の開催や、顔の見える形でCKD重症化予防を討論する場である地域連携ミーティングを開催し、連携を促進した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kunihiro Yamagata, Hirofumi Makino, Tdao Akizawa, et al.
Design and methods of a strategic outcome study for chronic kidney disease:Frontier of Renal Outcome Modifications in Japan
Clinical Exp Nephrology , 14 (2) , 144-151  (2010)
原著論文2
Reiko Tajima, Masahide Kondo, Kunihiro Yamagata, et al.
Measurement of health-related quality of life in patients with chronic kidney disease in Japan with EuroQol(EQ-5D)
Clinical Exp Nephrology , 14 (4) , 340-348  (2010)
原著論文3
Kondo M, Yamagata K, Watanabe T, et al.
Cost-effectiveness of chronic kidney disease mass screening test in Japan.
Clinical Exp Nephrology , 16 (2) , 279-291  (2012)
原著論文4
Kei Nagai, Chie Saito, Kunihiro Yamagata, et al.
Annual incidence of persistent proteinuria in the general population from Ibaraki annual urinalysis study.
Clinical Exp Nephrology , 17 (2) , 255-260  (2013)
原著論文5
Hirayasu Kai, Mariko Doi, Masafumi Okada, et al.
Evaluation of the Validity of a Novel CKD Assessment Checklist Used in the Frontier of Renal Outcome Modifications in Japan Study.
Journal of Renal Nutrition  (2016)
doi:10.1053/j.jrn.2016.02.010
原著論文6
Kunihiro Yamagata, Hirofumi Makino, Kunitoshi Iseki,et al.
Effect of Behavior Modification on Outcome in Early- to Moderate-Stage Chronic Kidney Disease: A Cluster-Randomized Trial.
PloS One  (2016)
doi:10.1371/journal. pone.0151422

公開日・更新日

公開日
2014-06-09
更新日
2018-06-26

収支報告書

文献番号
201316008Z