文献情報
文献番号
201316003A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病性腎症の糖鎖プロファイリングによる新規バイオマーカーの同定
課題番号
H24-難治等(腎)-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
和田 淳(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 槇野 博史(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学)
- 江口 潤(岡山大学病院 腎臓・糖尿病・内分泌内科)
- 中司 敦子(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 腎症治療学講座)
- 勅使川原 早苗(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 地域医療人材育成講座)
- 肥田 和之(独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター 糖尿病・代謝内科)
- 宮下 雄博(岡山赤十字病院 糖尿病センター)
- 松岡 孝(倉敷中央病院 糖尿病内科)
- 安藤 晋一郎(岡山市立市民病院 糖尿病科 糖尿病センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(腎疾患対策研究経費)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ヒトゲノムの配列が決定され、ポストゲノム研究が注目を集めるなか、糖尿病および糖尿病合併症の発症や進展に糖鎖異常が関与していることが報告されている。これらの糖鎖異常が明らかになれば、予後を推測するバイオマーカーとして有用であるのみならず、その糖鎖異常をターゲットとした治療戦略へと研究が展開する可能性がある。そこで糖尿病性腎症患者尿の糖鎖プロファイルを網羅的に解析した。
研究方法
健常人と糖尿病性腎症患者のセントリコンにより濃縮した尿サンプルをAgilentマルチプルアフィニティ除去システムで6種の主要蛋白を除去した後、透析膜を用いてPBSにバッファー交換した。健常人(n=12)、糖尿病性腎症正常アルブミン尿期(n=7)、微量アルブミン尿期(n=5)、顕性蛋白尿期(n=5)の尿サンプルを用いて、糖尿病性腎症の病期別にレクチンアレイ解析を行った。蛋白質濃度を測定し、Cy3標識したサンプルを濃度調製しGlycostationにより45種のレクチンへの結合性を測定した。
結果と考察
腎症病期の進行にしたがって、シグナルが上昇していたのはα2-6結合シアル酸関連レクチン(SNA,SSA,TJA-1)であった。さらにSSAレクチンカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製したサンプルをLC-MS/MSによるショットガン解析を施行したところ28種類の糖蛋白質を同定した。これらの糖蛋白質のうち8種類がELISA法で測定が可能であり、そのうち測定感度以下とならず安定して測定できたのは、α1-microglobulin, orosomucoid, fetuin-Aであった。α1-microglobulin, orosomucoid, fetuin-Aは既報でシアル酸蛋白質であることが報告されているため、糖尿病性腎症正常アルブミン尿期(n=36)、微量アルブミン尿期(n=25)、顕性蛋白尿期(n=24)の尿サンプルで測定した。尿中fetuin-A排泄量は、尿中アルブミン排泄量と正の相関を、eGFRと負の相関を示した。さらに尿中α1-microglobulin, orosomucoid, fetuin-A排泄量を用いて、ステップワイズロジスティック解析を施行した結果、微量アルブミン尿陽性あるいはeGFR 60 ml/min未満に対するリスク因子として尿中fetuin-A排泄量のみが採択された。
結論
α1-microglobulinは腎臓間質マーカーとして、またorosomuoidは糖尿病性腎症の尿中マーカーとして報告されているが、尿中fetuin-A排泄量についてはELISAによる尿中濃度の検討はまだ報告がなく、新たな糖尿病性腎症の尿中バイオマーカーであると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2014-07-28
更新日
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