IgA腎症新規バイオマーカーを用いた血尿の2次スクリーニングの試み

文献情報

文献番号
201316002A
報告書区分
総括
研究課題名
IgA腎症新規バイオマーカーを用いた血尿の2次スクリーニングの試み
課題番号
H24-難治等(腎)-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 祐介(順天堂大学 医学部腎臓内科)
研究分担者(所属機関)
  • 川村 哲也(東京慈恵会医科大学 臨床研修センター 腎臓・高血圧内科)
  • 藤元 昭一(宮崎大学 腎臓内科)
  • 井関 邦敏(琉球大学医学部付属病院)
  • 今田 恒夫(山形大学 内科学第一(循環・呼吸・腎臓内科学)講座)
  • 坂本 なほ子(順天堂大学 公衆衛生学)
  • 松崎 慶一(京都大学 環境安全保健機構 健康科学センター)
  • 鈴木 仁(順天堂大学 医学部腎臓内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(腎疾患対策研究経費)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
IgA腎症は、世界で最も頻度の高い原発性糸球体腎炎であり、本邦でも極めて多い腎疾患である。初発症状は血尿が主体で、本邦での発見機転は健診時の血尿が大半を占める。本邦では年間約6500万人が健診を受け、その大部分に検尿が施行されている。本邦の検尿における血尿の頻度は約3~5%とされ、1 次スクリーニングで年間250~300万人程度に尿潜血陽性者がいる可能性がある。続く2 次スクリーニングで陽性を呈しても、その大部分が経過観察にとどまり、腎症が進行し尿蛋白も陽性になった時点で初めて専門医に紹介される場合が多い。検尿システムが発達している本邦でさえ、診断・治療時期を逸したIgA 腎症患者が多いことが推測される。
我々は糖鎖異常IgA、特にヒンジ部のGalactose が欠損したIgA1およびその糖鎖異常部位を認識する自己抗体との免疫複合体が病因と深く関わり、疾患活動性ともよく相関することを見出した。さらに、それらバイオマーカーを用いた高い診断率を有する診断方法を確立した。
この背景をふまえ、複数の健診センターの協力を得て健診・人間ドック受診者を対象に、上記診断方法を用いて1 次スクリーニングでの尿潜血陽性者における潜在的IgA 腎症患者の割合を明らかにし、IgA 腎症の早期診断・治療介入の礎とすることを、本研究の目的とした。なお、平成25年度は、都内と宮崎県の1年目の登録者から得られた昨年度の中間解析結果を、沖縄、山形の新規9健診施設で検証を開始した。一方で、判定が確定した研究参加者の臨床的転帰を追跡することで、本スコア法による2次スクリーニングの臨床的意義を検討する今後の研究の基礎とする。
研究方法
東京都の健診施設、宮崎県内の健診施設にて、1年間で健診および人間ドックを受診し、検尿検査が施行され尿潜血陽性を示し同意の得られた15~50歳を対象者とし、1次スクリーニング施設での健診・人間ドック時の血清5mlを、匿名符号化したうえで、順天堂大学医学部腎臓内科に送付・解析する。平成25年度からは、沖縄県および山形県の9健診施設での同様に登録・解析を開始した。
結果と考察
都内および宮崎県の8健診施設から、平成24年度から1年間の登録期間に1400例以上の登録が得られた。平成25年度から参加した沖縄県、山形県の新規施設でも、開始約半年間で550名を超える登録が進み、平成26年度1月までに1500以上の結果報告を完了させた。
本研究では、糖鎖異常IgAの測定値などを基にしたスコアリングによりIgA腎症の疑いが強い(B判定)、IgA腎症の可能性が低い(A判定)、またその中間のスコア(C判定)の基本3判定に、サブグループとして、蛋白尿陰性かつsCr正常を1群、蛋白尿陽性を2群、蛋白尿陰性かつsCr上昇を3群とし、A1~3, B, C1~3の7パターンの報告書を作成し、研究協力施設および研究対象者に結果報告した。対象者の血中糖鎖異常IgA1値を比較すると、宮崎県の対象者で平均194.9U/mLであったのに対し、山形県の対象者では平均162.0U/mLと低値であった。これがB判定率に影響した可能性もあるが、今後スコアリングに用いる他の主成分因子に関してもより詳細に検討し、地域差に影響を及ぼしている背景を分析する必要がある。
都内の一部健診施設では、本年度より新規契約した健保組合や学校法人があるため、今年度開始の新規登録者が含まれる。一方、宮崎県では1年間の登録を終了し、フォローアップ研究に移行している。宮崎県では、1115検体の解析から推定された潜在的IgA腎症の母集団比率は0.8%であり、昨年の中間解析の結果に類似した結果となった。
本研究中にフォローアップ研究の登録数も増やし、各判定者の臨床的転帰を可能な限り追跡することで、将来的には本スコアを用い2次スクリーニングでどういった血尿陽性者に積極的に介入をしていくかを検討する次研究のための基礎作りも必要と考えられた。

結論
適切な研究体制が整備・運営され都内、宮崎県の8協力施設に加え、本年度から沖縄、山形県の9協力施設からも登録が順調に進み、これまでに1900名以上の登録が完了し、そのうち1500以上の結果を参加者にフィードバックした。都内、宮崎県の施設ではフォローアップ研究が開始され、既に325名の追跡解析が進んでいる。尿潜血陽性1554例を用いた中間解析では、IgA腎症の可能性の高いB判定者と、可能性の低いA判定者はそれぞれ12.1%と41.7%であった。一方、1年目の登録が完了し同意率の高かった宮崎県の3施設1426名の解析上、尿潜血陽性率は7.6%、スコア法による潜在的IgA腎症陽性者の母比率は0.8%と推定され、昨年とほぼ同様な結果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201316002Z