血中自己抗体検出と新規炎症マーカーを用いた急性冠症候群予知因子および治療標的の探索

文献情報

文献番号
201315069A
報告書区分
総括
研究課題名
血中自己抗体検出と新規炎症マーカーを用いた急性冠症候群予知因子および治療標的の探索
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-026
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
西 英一郎(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 剛(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学 )
  • 日和佐 隆樹(千葉大学大学院医学研究院 遺伝子生化学)
  • 尾野 亘(京都大学大学院医学研究科 循環器内科学 )
  • 妹尾 浩(京都大学大学院医学研究科 消化器内科学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
46,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急性冠症候群(ACS)による死亡の約半数を占める発症早期の院外死をいかに抑制するかは喫緊の課題である。我々は、1) ACS発症の予知が可能で、かつ2) 病因論的にも重要で治療標的になり得る新たなACSマーカーの同定を目指す。ACS発症後早期に上昇している自己抗体は発症前から出現していること、我々が見出した新規炎症マーカー:ナルディライジン(NRDc)が慢性炎症の病態をよく反映していることから、予知マーカーの探索に関して、血中自己抗体検出および血清NRDc濃度に注目した。本研究では、1) ACS患者血清の自己抗体発現パターンの解析、2) NRDc濃度の解析、を行いACS予知マーカーの同定を行う。さらにNRDcの炎症における役割、マーカー、治療標的としての有用性を明らかにするため、遺伝子改変マウスを用いて3) ACSや非アルコール性脂肪性肝炎などにおけるNRDcの役割の解明を行い、将来的には治療薬の開発を目指す。
研究方法
1) ACS患者血清の自己抗体発現パターンの解析:プロテインアレイを用いた自己抗体スクリーニング: ACS患者血清(発症6時間以内)、コントロール血清それぞれ6例分を用いて、血清中の自己抗体出現パターンを解析し、ACS症例で特異的上昇を呈する抗原候補タンパク質を抽出する。一方、すでに施行した脳梗塞症例のスクリーニングで同定し、測定系(AlphaLISA)を確立できた約100種類の抗原候補タンパク質に対する自己抗体価を、ACS症例血清を用いて検討する。
2) ACS患者血清NRDc濃度の解析:独自に開発したヒト血清NRDc高感度ELISAを(測定感度50pg/ml)を用いて、ACS入院症例の血清NRDcを測定する。ACS発症後時間採血により血清NRDc値の時間経過の検討も行う。
3) ACS・NASHにおけるNRDcの病態生理学的意義の解明:野生型とNRDc欠損マウスを、1) 冠動脈結紮によるACSモデル、2) コリン欠乏食によるNASHモデルに供し、NRDcの疾患における役割を検討する。全身性NRDc-KOマウスでは神経、内分泌系表現型による影響が除外できないため、心筋細胞、肝細胞特異的NRDc-KOマウスを作製する。さらに、NRDcの酵素活性の疾患における意義を明らかにするため、非活性型NRDcノックイン(KI)マウスを作製する。
結果と考察
1) ACS患者血清の自己抗体発現パターンの解析:プロテインアレイによる血中自己抗体のスクリーニング(ACS患者および健常ボランティア)の結果、ACS症例で有意に上昇している自己抗体(抗原タンパク質)を約30種類抽出した。一方、同様の手法ですでに同定した脳梗塞マーカーをACSおよび対照症例で検討したところ、115種類のマーカーのうち76種類ものマーカーがACSで有意に上昇していた。
2) ACS患者血清NRDc濃度の解析:当院入院のACS症例について、引き続き血清NRDcの測定を行っている。安定労作性狭心症患者では血清NRDcの有意な上昇を認めないが、心筋壊死に至らない不安定狭心症群では高値を認めたことから、NRDcが心筋壊死量だけを反映しているのではないことが示唆された。
3) ACS・NASHにおけるNRDcの病態生理学的意義の解明:マウスACSモデル(冠動脈結紮)における免疫染色法を用いた検討から、虚血にさらされた心筋は壊死に至る前の非常に早い段階からNRDcを細胞外に放出することが示唆された。一方マウスNASHモデル(コリン欠乏食、高脂肪食)において、NRDc欠損マウスは野生型と比較して、脂肪肝、肝機能障害の程度は軽度であることが明らかになった。
結論
平成25年度に得られた臨床および基礎研究の結果は、NRDcが有効なACS予知マーカーとしての可能性を有することを示唆した。新たなACS予知マーカーの網羅的スクリーニングでは、約30種類の候補タンパク質同定に成功した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201315069Z