肥満および関連疾患に対する政策に関する国際比較研究-日本における肥満施策のための基礎分析-

文献情報

文献番号
201315066A
報告書区分
総括
研究課題名
肥満および関連疾患に対する政策に関する国際比較研究-日本における肥満施策のための基礎分析-
課題番号
H24-循環器等(生習)-若手-021
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
田中 佐智子(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 薬剤疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 上嶋 健治(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター EBM推進部)
  • 笠原 正登(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター EBM推進部)
  • 保野 慎治(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター EBM推進部)
  • 藤本 明(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター EBM推進部)
  • 中尾 一和(京都大学大学院医学研究科 メディカルイノベーションセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,308,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究代表者 田中佐智子

研究報告書(概要版)

研究目的
近年食生活の変化に伴い、肥満者数は増加しており、それに伴う糖尿病など肥満関連疾患の増加が問題となっている。我が国でも、加齢と疾病により国民医療費は年々増加しているが、肥満および関連する生活習慣病は、国民医療費の約3割、死亡者数の約6割を占めている。1生活習慣病の発症は生活習慣の改善により回避可能であり、国全体の施策として予防を図ることが重要と考えられる。そこで、本研究の目的は、我が国と諸外国における肥満及び関連疾患予防政策に対する基礎分析を行い、日本における政策提言を行うための基盤研究を行うことである。
研究方法
肥満政策俯瞰のため、肥満政策の根拠となる研究として、これまでのコホート研究等から得られた肥満やメタボリック症候群および関連疾患に関する知見について情報収集を行った。また、我が国および諸外国の肥満・関連疾患予防に対する、実施された政策の具体的事例、提案された政策、政策の評価に関する情報をそれぞれ収集した。検索データベースは、MEDLINE、Cochrane library、Web of Science、医中誌Webを用い、肥満と生活習慣病発症の関連を検討した研究を抽出した。対象言語は英語と日本語とした。関連するレビューとその参考文献や学会などでも情報収集を行った。
また、調査の中で、我が国の政策及び政策評価研究に関しては、厚生労働科学研究補助金により包括的に実施されていることが多く、その詳細な報告の多くは総合研究報告書として発表されていることが判明し、厚生労働科学研究成果データベースより、論文として未発表の知見も含めた検索を実施した。このデータベースにある総合研究報告書は平成16年以降のものであり、その点を考慮し、検索語は「特定健診」「保健指導」「健康日本21」「食事バランスガイド」「食生活改善普及運動」「運動指針」「エクササイズガイド」とした。対象は、すでに研究が終了し「総合研究報告書」が提出されているものとした(検索項目、報告書区分「総合」)。
結果と考察
我が国では主に効果の検証や目標設定の妥当性に関する検討が行われ、地域・ライフステージ別の健康課題を抽出し、次の施策へ応用されていた。一方、政策の包括的評価、制度運営、経済分析、政策目標設定に関する研究なども行われているが、英語論文として国際的に公表されているものは一部であった。
 肥満の蔓延が深刻な欧米諸国の肥満政策は、国レベルのものとしては税規制等が実施されているが、期待された効果が得られず、また継続困難と判断され、中止された国もあった。一方、我が国では、平成20年度から生活習慣病発症の予防と医療費適正化を目指して、特定健診・保健指導制度がはじまっており、保健指導の長期的効果などに、一定の効果を得ていると考えられた。
 昨年の我々の研究において、非肥満者であっても、内臓脂肪蓄積を認めれば将来の生活習慣病リスクとなることが示されたが、現在非肥満者の高血圧患者に対するモデル事業が開始されており、非肥満者の生活指導に対する効果検証が開始されている。
なお、本調査の限界として、厚生労働省研究成果データベースに登録されている総合研究報告書は、平成16年度以降のものであり、それ以前の報告書にて有用性が報告されている可能性がある。
結論
本研究を通じて、諸外国と我が国の肥満および関連疾患の予防に対する政策やその成果が明らかとなった。日本では肥満および生活習慣病に関する課題に先駆的に取り組んでおり、一定の成果を上げている。これに関してさらに深く検証するためには、特定健診や特定保健指導のデータに基づく解析が必要と考え、現在われわれは、ナショナルデータを用いた研究プロジェクト(メタボリック症候群・肥満症の臨床疫学研究-ナショナルデータベースを用いた横断・縦断解析、申出者:上嶋健治)を遂行中である。また、社会環境的・医療経済的な視点を含めた政策が必要と考えられ、その成果などについて国際的な発信も求められていると考え、同プロジェクト内でも検討する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201315066B
報告書区分
総合
研究課題名
肥満および関連疾患に対する政策に関する国際比較研究-日本における肥満施策のための基礎分析-
課題番号
H24-循環器等(生習)-若手-021
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
田中 佐智子(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 薬剤疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 上嶋 健治(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター EBM推進部)
  • 笠原 正登(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター EBM推進部)
  • 保野 慎治(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター EBM推進部)
  • 藤本 明(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター EBM推進部)
  • 中尾 一和(京都大学大学院医学研究科 メディカルイノベーションセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、我が国と諸外国における肥満及び関連疾患予防政策に対する基礎分析を行い、日本における政策提言を行うための基盤研究を行うことである。
研究方法
(平成24年度)
 肥満政策俯瞰のため、まず肥満政策の根拠となる研究として、これまでのコホート研究等から得られた肥満やメタボリック症候群に関する知見について情報収集を行った。また、我が国および諸外国の肥満・関連疾患予防に対する、①実施された政策の具体的事例、②提案された政策、③政策の評価に関する情報を、それぞれ収集した。検索データベースはMEDLINE, Cochrane, Web of Scienceを用い、肥満と生活習慣病発症の関連を検討した研究を抽出した。
(平成25年度)
 おもに我が国の肥満政策俯瞰のため、肥満政策の根拠となる研究として、これまでのコホート研究等から得られた肥満やメタボリック症候群および関連疾患に関する知見について情報収集を行った。また、我が国および諸外国の肥満・関連疾患予防に対する、実施された政策の具体的事例、提案された政策、政策の評価に関する情報をそれぞれ収集した。また、厚生労働科学研究成果データベースより、論文として未発表の知見も含めた検索を実施した。
結果と考察
人の行動は、古典的には2つのシステム”reflective, goal oriented system”と ”automatic, affective system ” によって形成されている。これまでの行動変容に対するヘルスプロモーションは、前者に働きかけるものが主流であった。不健康な行動へつながるきっかけをなくし、特定の選択肢を選ばせようとするナッジは、その効果が期待されている。しかし、現時点でナッジ単独で人々の健康を向上させるというエビデンスは弱乏しく、ナッジの有効性と忍容性の検証のため、一次調査および現存するエビデンスの統合が必要と考えられている。特定の栄養成分の含有制限や課税は比較的高いエビデンスレベルが報告されているが、持続的な介入と実際の効果、またその評価は非常に多くの問題を含んでいる。有効性が認められる介入政策であっても、効果はすぐには実感しにくく、また一方で経済的な状況から「増税」に対する一般市民の理解が得られにくい中、持続的な介入が難しいことも示唆された。さらに、すでに米国や欧州のいくつかの国では加糖飲料に課税する制度が実施されており、さらに加工食品の塩分に対して課税する塩分税への検討が行われている。一方で、特定の栄養素など原因の1つにだけ介入を行っても解決にならないとの批判や、課税よりも食品メーカーの自発的な減塩のほうが費用対効果がより高いことも報告されており、課税による強制的な減塩戦略よりも食品メーカーとの連携もより重要となると考えられている。我が国で、糖尿病等の生活習慣病発症予防、医療費適正化を目指して平成20年度からはじまった特定健診・保健指導制度では、保健指導の長期的効果も明らかとなっており、一定の効果を得ていると考えられた。
一方、政策の包括的評価、制度運営、経済分析、政策目標設定に関する研究なども行われているが、英語論文として発表されているものは一部であった。
本研究の限界としては、厚生労働省研究成果データベースに登録されている総合研究報告書は、平成16年度以降のものであり、それ以前の報告書にて有用な報告がある可能性がある。
結論
 本研究を通じて、諸外国と我が国の肥満および関連疾患の予防に対する政策やその成果が明らかとなった。諸外国では肥満および関連疾患への色々な予防策が検討されているが、一定条件のもとでは有効とされている施策であっても、実際実施したところ予測した結果が得られず、継続困難なものも認められた。したがって、有効性のみならず、文化を加味した実施可能性の高い施策が必要であると考えられた。また、日本人は肥満の割合は欧米諸国に比べ少ないものの、内臓脂肪の蓄積が生活習慣病発症に強く関連していることが示された。我が国の肥満政策を考えるうえで、BMIにより分類される肥満者は当然のことながら、内臓脂肪型肥満者も対象とした予防政策を考慮することが必要であると思われた。日本では肥満および生活習慣病に関する課題に先駆的に取り組んでおり、一定の成果を上げている。これに関してさらに深く検証するためには、特定健診や特定保健指導のデータに基づく解析が必要と考え、現在われわれは、ナショナルデータを用いた研究プロジェクト(メタボリック症候群・肥満症の臨床疫学研究-ナショナルデータベースを用いた横断・縦断解析、申出者:上嶋健治)を遂行中である。また、社会環境的・医療経済的な視点を含めた政策が必要と考えられ、その成果などについて国際的な発信も求められていると考え、同プロジェクト内でも検討する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201315066C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究を通じて、諸外国と我が国の肥満および関連疾患の予防に対する政策やその成果が明らかとなった。諸外国では肥満および関連疾患への色々な予防策が検討されているが、一定条件のもとでは有効とされている施策であっても、実際実施したところ予測した結果が得られず、継続困難なものも認められた。したがって、有効性のみならず、文化を加味した実施可能性の高い施策が必要であると考えられた。
臨床的観点からの成果
日本では肥満および生活習慣病に関する課題に先駆的に取り組んでおり、一定の成果を上げている。さらに深く検証するためには、特定健診や特定保健指導のデータに基づく解析が必要と考え、現在、ナショナルデータを用いた研究プロジェクト(メタボリック症候群・肥満症の臨床疫学研究-ナショナルデータベースを用いた横断・縦断解析、申出者:上嶋健治)を遂行中である。社会環境的・医療経済的な視点を含めた政策が必要と考えられ、その成果などについて国際的な発信も求められていると考え、同プロジェクト内でも検討する予定である。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201315066Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
3,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 264,497円
人件費・謝金 536,604円
旅費 1,290,920円
その他 215,979円
間接経費 692,000円
合計 3,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
-