生活習慣病対策が医療費・介護保険給付費に及ぼす効果に関する研究

文献情報

文献番号
201315065A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣病対策が医療費・介護保険給付費に及ぼす効果に関する研究
課題番号
H23-循環器等(生習)-若手-015
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
柿崎 真沙子(東北大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、「生活習慣を改善することで、どのくらい医療費は減らせるか?」「中年期の生活習慣病対策は、高齢期の医療費・介護給付費を減らせるか?」という疑問に回答することである。そのため、中年期以降における歩行時間の変化と要介護認定リスクとの関連、痛みと要介護認定リスクとの関連について、前向きコホート研究により検討した。
研究方法
中年期以降における歩行時間の変化と要介護認定リスクとの関連に関する研究では、宮城県大崎市に居住する介護保険非該当の65歳以上の者で1994年と2006年の双方で生活習慣アンケート調査に回答した男女7,177名を対象とした。1994年と2006年との間で1日あたり歩行時間の変化により対象者を以下の4群に分けた。不活動を維持(1994年も2006年も30分未満)、不活動に変化(前者で30分以上、後者で30分未満)、活動に変化(前者で30分未満、後者で30分以上)、活動を維持(両者とも30分以上)。
痛みと要介護認定リスクとの関連に関する研究では、宮城県大崎市に居住する介護保険非該当の65歳以上男女14,053名を対象に2006年アンケート調査で痛みの強さに関する回答をもとに、痛みなし群、弱い痛み群、中等度の痛み群、強い痛み群の4つに分類した。
上記の両研究とも、2006年11月から5年間、介護保険の要介護認定状況と死亡・転居を追跡し、多変量Cox比例ハザードモデルにより歩行時間の変化・痛みの強さと要介護認定リスクとの関係を分析した。
本調査研究は、東北大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認のもとに行われている。
結果と考察
不活動を維持した者に比べ、活動に変化した者では要介護認定リスクが31%低く、活動を維持した群では要介護認定リスクが36%低かった。不活動に変化した群の要介護認定リスクは、不活動を維持した被験者と同等であった。
痛みなし群に比べ、中等度の痛み群では要介護認定リスクが14%高く、強い痛み群では要介護認定リスクが32%高かった。弱い痛み群の要介護認定リスクは、痛みなし群の被験者と同等であった。
結論
中年期以降に生活習慣を改善することで要介護認定リスクが低下することが示唆された。中年期に痛みを訴える者は高齢期の要介護ハイリスク群であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201315065B
報告書区分
総合
研究課題名
生活習慣病対策が医療費・介護保険給付費に及ぼす効果に関する研究
課題番号
H23-循環器等(生習)-若手-015
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
柿崎 真沙子(東北大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「生活習慣を改善することで、どのくらい医療費は減らせるか?」「中年期の生活習慣病対策は、高齢期の医療費・介護保険給付費を減らせるか?」という疑問に回答することが本研究の目的である。そのため、地域住民を対象に生活習慣・基本健康診査(健診)成績と医療費・介護保険認定状況を長期追跡しているコホートをもとに、以下の研究を行った。
研究方法
本研究では、宮城県の大崎保健所管内に在住する40歳から79歳の国民健康保険加入者全員約5万人を対象に1994年にベースライン調査を行い、1995年1月以降の死亡および医療利用状況を追跡している「大崎国保コホート研究」、および宮城県大崎市に在住する40歳以上の全住民約7万7千人を対象に死亡情報と要介護認定に関する追跡を行っている「大崎市民コホート2006」のデータを用いた。前者の有効回答者は52,029人、後者の有効回答者は49,603人、両コホートの回答者は16,982人である。
結果と考察
第1に中年期の良好な生活習慣の蓄積はその後の循環器疾患死亡リスクに影響した。この結果より、中年期の生活習慣が高齢期の生活習慣病リスクと関連することがわかった。第2に中年期の健康診査(健診)受診はその後の高額医療費発生リスクを有意に低下させた。これにより、中年期の健診受診により医療費が削減し得ることが示唆された。第3に中年期から高齢期にわたる生活習慣が要介護認定リスクと関連することが示された。特に、良好であった生活習慣が悪化することで要介護認定リスクが上昇する可能性が示唆された。第4に中年期以降に歩行時間が増加した者ではその後の要介護認定リスクが有意に低下した。それは、年齢や運動機能に関わらず、歩行時間を増やす上で手遅れとなる年齢や機能レベルはないことが示唆された。
結論
以上の結果は、中年期の生活習慣は高齢期の健康レベルに大きな影響をおよぼすこと、中年期の健診受診は医療費に影響をおよぼすこと、中年期の生活習慣そのものが高齢期の生活習慣の変化に関わらず要介護認定リスクに影響することを示唆するものである。これらのエビデンスに基づいて生活習慣の改善に重点をおいた保険医療制度を構築することで、医療費・介護保険給付費の適正化を目指すことが求められる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201315065C

成果

専門的・学術的観点からの成果
20歳時から中年期にかけての体重変化は循環器疾患死亡リスクを有意に高めること、中年期に健診を受診していた者では(受診しなかった者に比べて)10年後の医療費が低いこと、中高年期で歩行時間が増えた者では要介護発生リスクを有意に下げることなどを解明し、国内学会で9回発表し、6編の英文原著論文を発表した。
臨床的観点からの成果
中高年期における生活習慣改善が疾病リスク・医療費や介護保険認定リスクを下げる可能性があることを本研究は示した。従来、この種のエビデンスは多くなかったが、本研究で実証的なエビデンスが得られたことにより、患者やハイリスク者に対する保健指導がより円滑に行われるようになると思われる。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
中高年期における生活習慣改善が疾病リスク・医療費や介護保険認定リスクを下げる可能性があることを本研究は示したものであり、厚生労働省の進めている「健康日本21計画(第2次)」や「データヘルス計画」などを進めるうえでのエビデンスを提供した。その意味で行政上の意義も大きかったものと思われる。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nagai M, Kakizaki M et al.
Effect of age on the association between body mass index and all-cause mortality: the Ohsaki cohort study.
Journal of Epidemiology , 20 (5) , 398-407  (2010)
原著論文2
Hozawa A, Kakizaki M et al.
Participation in health check-ups and mortality using propensity score matched cohort analyses.
Preventive Medicine , 51 (5) , 397-402  (2010)
原著論文3
Nagai M, Kakizaki M et al.
Impact of walking on life expectancy and life-time medical expenditure: the Ohsaki Cohort Study.
BMJ Open , 1 (2) , e000240-  (2011)
原著論文4
Chou WT, Kakizaki M et al.
Impact of Weight Change Since Age 20 and Cardiovascular Disease Mortality Risk.
Circulation Journal , 77 (3) , 679-686  (2013)
原著論文5
Nagai M, Kakizaki M et al.
Association between sleep duration, weight gain, and obesity for long period.
Sleep Medicine , 14 (2) , 206-210  (2013)
原著論文6
Chou WT, Kakizaki M et al.
Relationships between changes in time spent walking since middle age and incident functional disability.
Preventive Medicine , 59 , 68-72  (2014)

公開日・更新日

公開日
2015-04-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201315065Z