社会的要因を含む生活習慣病リスク要因の解明を目指した国民代表集団の大規模コホート研究:NIPPON DATA80/90/2010

文献情報

文献番号
201315063A
報告書区分
総括
研究課題名
社会的要因を含む生活習慣病リスク要因の解明を目指した国民代表集団の大規模コホート研究:NIPPON DATA80/90/2010
課題番号
H25-循環器等(生習)-指定-022
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 克之(滋賀医科大学 社会医学講座公衆衛生学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 上島 弘嗣(滋賀医科大学 アジア疫学研究センター)
  • 岡山 明(結核予防会 第一健康相談所)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部衛生学公衆衛生学)
  • 大久保 孝義(帝京大学 医学部衛生学公衆衛生学講座)
  • 奥田 奈賀子(国立健康・栄養研究所 栄養疫学研究部国民健康・栄養調査研究室)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学 医学部健康社会医学講座)
  • 門田 文(大阪教育大学 養護教育講座)
  • 喜多 義邦(滋賀医科大学 社会医学講座公衆衛生学部門)
  • 清原 裕(九州大学大学院 医学研究院環境医学分野)
  • 斎藤 重幸(札幌医科大学 保健医療学部看護学科基礎臨床講座内科学分野)
  • 坂田 清美(岩手医科大学 医学部衛生学公衆衛生学講座)
  • 中川 秀昭(金沢医科大学 医学部公衆衛生学講座)
  • 中村 保幸(京都女子大学 家政学部生活福祉学科)
  • 中村 好一(自治医科大学 地域医療学センター公衆衛生学部門)
  • 西 信雄(国立健康・栄養研究所 国際産学連携センター)
  • 早川 岳人(福島県立医科大学 衛生学・予防医学講座)
  • 寳澤 篤(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門)
  • 宮松 直美(滋賀医科大学 看護学科臨床看護学講座)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター 予防健診部)
  • 由田 克士(大阪市立大学 大学院生活科学研究科 食・健康科学講座公衆栄養学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
47,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、2010年国民健康・栄養調査約3,000人のコホート研究であるNIPPON DATA2010、1980、1990年の循環器疾患基礎調査、国民栄養調査約18,000人のコホート研究であるNIPPON DATA80/90を継続するとともに、対象者における国民生活基礎調査結果も活用して、社会的要因、生活習慣、危険因子と生活習慣病発症・死亡リスク、健康寿命との関連を明らかにすること、さらに1980年以後30年間にわたる国民の生活習慣病リスク要因および生活習慣の推移を明らかにすることである。
研究方法
・循環器病の予防に関する調査 (NIPPON DATA2010)と、対象者の健康追跡調査を行う。
・NIPPON DATA2010ベースラインデータの整備および循環器疾患基礎調査・国民(健康・)栄養調査の長期推移に関する解析に着手する。
 NIPPON DATA80(昭和55年循環器疾患基礎調査および国民栄養調査)、NIPPON DATA90(平成2年循環器疾患基礎調査および国民栄養調査)、平成12年循環器疾患基礎調査および国民栄養調査、NIPPON DATA2010および平成22年国民健康・栄養調査の各データを用い、1980, 1990, 2000, 2010年の各種生活習慣病関連要因の推移の解析を開始する。
・NIPPON DATA80/90は5年ごとに追跡期間の延長を行っている。本年度、NIPPON DATA90対象者の20年目追跡データベースを完成し分析を開始する。
・NIPPON DATA80の29年間追跡データ、NIPPON DATA90の20年追跡データを用いて、死因別死亡リスクに関連する要因についての解析を進める。
結果と考察
 本研究班は5年計画であり、平成25年度はその1年目であった。脳卒中、冠動脈疾患、心不全、糖尿病の新規発症を中心に3年間の発症状況が明らかになってきた。2年目の追跡率は99%を達成しており、100%に近い追跡率を継続するよう努めてゆく。
 まず、今後5年間でNIPPON DATA2010の横断解析、および、NIPPON DATA80から2010に至る30年間の生活習慣病危険因子の推移解析をどのように進めるかについて、班員が一同に会し1泊2日の合宿にて徹底的な討議を行った。討議の結果、多数の解析・執筆グループが形成され、着実に国民に資するエビデンスが創出できるよう計画を作成した。
 次に「循環器病の予防に関する調査 (NIPPON DATA2010)」で収集した問診調査票項目や検査値のデータベースと平成22年国民健康・栄養調査データの突合を行い、約3000名の突合データを得た。これを基に、1980年(循環器疾患基礎調査・国民栄養調査またはNIPPON DATA80)から2010年(NIPPON DATA2010)に至る過去30年間の推移解析を進めた。例えば、血清脂質値の推移解析では、過去30年間における総コレステロール平均値は全体として微増傾向、HDLコレステロール値は男女とも全年齢階級において増加傾向、non-HDLコレステロール値は男女とも全年齢階級で2000年より男性は横ばい、女性は減少傾向、高コレステロール血症は男女とも中年期においては増加傾向などの結果が得られた。1980年代末に脂質異常に対する効果的な治療薬であるスタチンが登場し、男女とも治療率が1980年代に比較して2010年には4倍程度になった。その一方で、中年期から前期高齢期の高コレステロール血症の有病率は微増傾向にあり、今後の推移が注目される。
 一方、NIPPON DATA80は29年、NIPPON DATA90は20年の生死及び死因に関する追跡データベースが完成し分析を進めた。本年度、魚介類に多く含まれるEPA、DHAなどの長鎖n-3脂肪酸摂取量と24年間の循環器疾患死亡リスクとの負の関連を論文発表し、NHKなど全国へのマスコミ報道がなされた。日本人はもともと国際的に見て魚介類摂取が多い国民だが、その中でも高いn-3脂肪酸摂取が循環器疾患に予防的に働く可能性が示され、和食における1つの大きな特徴である魚介類摂取の重要性を国民に広く伝える契機となった。
結論
 本年度の行政効果としては、厚生労働省健康局「標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】」における血圧高値及び脂質異常の結果フィードバック文例への活用、厚生労働省「日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会」における資料として活用された。このように、全国から抽出された国民の代表集団であるNIPPON DATA80/90およびNIPPONDATA2010を最大限に活用し、引き続きわが国の行政施策に資するエビデンスを創出していく。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201315063Z