簡便な新規心血管イベント予知マーカーによる効率的なハイリスク患者抽出方法の確立

文献情報

文献番号
201315056A
報告書区分
総括
研究課題名
簡便な新規心血管イベント予知マーカーによる効率的なハイリスク患者抽出方法の確立
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-017
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
和田 啓道(国立病院機構京都医療センター 展開医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川  浩二(国立病院機構京都医療センター 展開医療研究部 )
  • 佐藤 哲子(国立病院機構京都医療センター 糖尿病研究部 )
  • 赤尾 昌治(国立病院機構京都医療センター 展開医療研究部 )
  • 阿部 充(国立病院機構京都医療センター 展開医療研究部 )
  • 岡本  洋(国立病院機構北海道医療センター 循環器内科)
  • 松田 守弘(国立病院機構呉医療センター 予防医学研究室)
  • 舩田 淳一(国立病院機構愛媛医療センター 循環器科)
  • 藤本 和輝(国立病院機構熊本医療センター 循環器内科)
  • 鈴木 雅裕(国立病院機構埼玉病院 臨床研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 慢性腎臓病(CKD)は心血管疾患のハイリスク病態であり、本邦の約1300万人、成人の8人に一人が罹患する21世紀の新たな国民病である。心血管疾患の危険因子である高血圧、糖尿病、脂質異常、喫煙はCKDの原因かつ増悪因子であり、CKDにおいてはより厳格な管理が求められる。しかしながら、限りある医療資源を有効活用するためには膨大な数のCKD患者(および危険因子を有する患者)全体ではなく真のハイリスク群のみを抽出して先制医療を行う必要がある。近年、アルブミン尿がCKDのリスク層別化に取り入れられるようになったが、アルブミン尿よりも心血管イベント予知において優れている脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)は、CKDの日常臨床における適正な使用法が確立されていない。
 最近、CKDにおいて血管新生の中心分子である血管内皮増殖因子(VEGF)の可溶性受容体のひとつ、sFlt-1の血中レベルが血管内皮機能障害と密接に関連していることが報告された。内皮機能障害は危険因子と密接に関連し、さらに将来の心血管イベントとも関連することから、sFlt-1レベルがCKD(および危険因子を有する)患者の将来の心血管イベントと関連している可能性がある。我々は安定した外来患者490名を対象とした前向きコホート研究を実施し、CKD患者においてsFlt-1がNT-proBNPよりも優れた強力な心血管イベント予知マーカーである可能性を見出した(投稿中)。
 本研究は、sFlt-1(およびその他の有力なバイオマーカー)がCKD(あるいは、危険因子である高血圧、糖尿病、脂質異常、喫煙)を有する患者における心血管イベント予知マーカーになりうるかどうかを国立病院機構のネットワークを生かした多施設共同前向きコホート研究で確認し、これらの患者から真のハイリスク患者を最も効率よく抽出する方法を確立することを目的とする。
研究方法
研究仮説:血清sFlt-1レベル測定によりCKDや危険因子を有する患者の心血管イベントを予知しうる。
研究デザイン:多施設共同前向きコホート研究
調査を行う場所:国立病院機構循環器ネットワークグループの研究参加施設
対象患者:研究参加施設で冠動脈疾患(疑い)のため、待機的に冠動脈造影を受ける患者(ただし、冠動脈形成術後もしくはバイパス術後の予定された再検査は除く)
除外基準:悪性腫瘍、炎症性疾患、ヘパリン投与など
目標症例数:3,280症例
主要評価項目:空腹時静脈採血の血清sFlt-1レベル
一次エンドポイント:複合心血管イベント
二次エンドポイント:全死亡
副次評価項目:尿中アルブミン/クレアチニン比、NT-proBNP、高感度トロポニンI
一般臨床データ(年齢、性別、BMI、血圧、脂質、血糖、HbA1c、内服薬)など
追跡期間:最大3年間
結果と考察
 平成25年度は4月から6月までに試験計画書を確定、研究体制を構築し、7月より各施設の倫理委員会に申請を開始した。年度内に全16参加施設で承認された。平成25年11月より患者登録を開始、平成26年3月末までに418例を登録した。
 本研究は5年計画の多施設共同前向きコホート研究であり、平成27年度中に患者登録を終了し、平成29年度まで患者を追跡する予定である。
 初年度である平成25年度は、試験計画書を完成させ、速やかに研究体制を構築することが出来た。国立病院機構循環器グループでは毎年3回のミーティングを開催するなど、緊密に連携をとりながら様々な共同研究を進めている。この国立病院機構循環器ネットワークの存在が速やかな研究体制構築に寄与したと考える。
結論
 本年度は当初の予定通り、速やかに研究体制を構築して患者登録を開始した。患者登録ペースも順調に増加している。本研究を最後まで実施して成果を上げることが出来れば、膨大な数のCKD(あるいは危険因子)を有する患者を真のハイリスク患者と低リスク患者に分別することが可能になる。その結果、ハイリスク患者に先制医療を集中させ、低リスク患者には不要な医療資源投入を回避することが出来るようになり、心血管イベント発症・心血管死亡の減少、患者QOLの改善、大幅な医療費の抑制につながることが期待され、医療と福祉への貢献は多大と考える。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-02-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201315056Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,000,000円
(2)補助金確定額
20,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,798,057円
人件費・謝金 3,221,207円
旅費 176,420円
その他 2,189,400円
間接経費 4,615,000円
合計 20,000,084円

備考

備考
利息84円

公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
-