患者データベースに基づく糖尿病の新規合併症マーカーの探索と均てん化に関する研究―合併症予防と受診中断抑止の視点から

文献情報

文献番号
201315055A
報告書区分
総括
研究課題名
患者データベースに基づく糖尿病の新規合併症マーカーの探索と均てん化に関する研究―合併症予防と受診中断抑止の視点から
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-016
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
野田 光彦(国立国際医療研究センター 糖尿病研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 谷澤 幸生(山口大学大学院医学系研究科 応用医工学系学域 病態制御内科学)
  • 相澤 徹(社会医療法人財団慈泉会相澤病院 糖尿病センター)
  • 吉岡 成人(北海道大学医学研究科 免疫代謝内科学)
  • 植木 浩二郎(東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科)
  • 稲垣 暢也(京都大学大学院医学研究科 糖尿病・栄養内科学)
  • 大江 和彦(東京大学医学部附属病院 企画情報運営部)
  • 津金 昌一郎(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター)
  • 岩坪 威(東京大学大学院医学系研究科 脳神経医学専攻 基礎神経医学講座 神経病理学)
  • 古川 壽亮(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 健康増進・行動学分野)
  • 竹内 靖博(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 内分泌代謝科内分泌部門)
  • 小林 宏明(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 生体支持組織学講座 歯周病学分野)
  • 山縣 邦弘(筑波大学大学院医学医療系臨床医学域 腎臓内科学)
  • 寺内 康夫(横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学)
  • 曽根 博仁(新潟大学大学院医歯学総合研究科 血液・内分泌・代謝内科学講座)
  • 横手 幸太郎(千葉大学大学院医学研究院 細胞治療内科学)
  • 鏑木 康志(国立国際医療研究センター 臓器障害研究部)
  • 能登 洋(国立国際医療研究センター 糖尿病研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、糖尿病診療の標準化による合併症予防と受診中断抑止のために、
(1) 現時点でのエビデンスを収集して病期・病態別の糖尿病診療マニュアルを作成し(1-a)、これを更新・維持し、また、その有効性の検証を行い(1-b)、
(2) エビデンスが不足する部分についてこれを補完・整備するための診療データ収集・蓄積システムを構築する。
 (1)では糖尿病診療マニュアルの作成を、臨床エビデンスのシステマティックレビューにより行うことが重要である(1-c)。
(3) かつ、糖尿病の新規合併症(がん、認知症、うつ、骨粗鬆症、歯周病等)を含む合併症の新たなマーカーを探索し、それらへの対応策を可能な限り標準化する。
(4) また、J-DOIT2の成果を用いて受診中断減少のためのマニュアルを作成する(4-a)。そのための調査として、未治療者減少に関して実を挙げているわが国の自治体等の事例を収集する(4-b)。
以上により、最終的に糖尿病患者の受診中断を減少させる。
研究方法
(1-a、1-b) マニュアルの作成と維持:糖尿病診療に関するエビデンスを重視し、検査の頻度や選択薬剤の優先度を明記し、診療効果の確実性と安全性を評価した。
(1-c) エビデンスの収集とレビュー:MEDLINE、EMBASEとコクランライブラリーの検索を行い、日本と全世界の研究原著についてシステマティクレビューとメタアナリシスを行った。
(2) 診療データの収集・蓄積:国立国際医療研究センターの糖尿病情報データベースに患者情報を登録し、その現状に関して集計・解析を行った。
(3) World Mental Health Survey Japan 2002-2004により、糖尿病との関係を解析した。
(4-a) 糖尿病予防のための戦略研究 課題2(J-DOIT2-LT(Japan Diabetes Outcome Intervention Trial 2 Large Trial))のデータにより、糖尿病患者の受診中断の要因解析を行った。
(4-b) 未治療者減少に関して実を挙げているわが国の自治体の事例を収集し、J-DOIT2の結果と、既存文献のシステマティックレビューにより、受診中断対策に関するガイドラインを作成した。
結果と考察
(1-a)糖尿病診療マニュアル作成
 エビデンスに立脚した「糖尿病標準診療マニュアル」を作成し一般公開中である。本マニュアルは各年度、二度の改訂を行っている(今年度は第8、9版を作成)。専門外来・拠点病院(入院)向けの「応用編」も分野別論文紹介の形で作成し随時改訂・拡充している。
(1-b) 診療マニュアルの有効性を検証するパイロット研究
 上記マニュアルの検証を全国6地域(3医師会と3地域)の42名のかかりつけ医の協力で施行した。通院中の416名の2型糖尿病患者を登録し、介入期間を終えデータ収集を進めた。
(1-c) システマティックレビューとメタアナリシス
 (1-b)に関連して、システマティックレビュー・メタアナリシスに関する英文論文を今年度3編発表した。
(2) 多様な診療施設グループによる糖尿病患者データベースの構築
 国立国際医療研究センターを中心とする病院・クリニック群で既存の糖尿病患者診療情報を網羅的に登録したデータベースを用い、平成17~22年に通院歴のある8,130名のデータを集計した。それらの情報を論文発表した。
(3) 既存データの解析-World Mental Health Survey Japan 2002-2004での糖尿病の解析
 日本人の精神疾患に関する代表的な疫学調査である World Mental Health Survey Japan 2002-2004から、薬物乱用・依存、双極II型障害、気分変調性障害が糖尿病のリスクファクターであることを示した。一方、糖尿病がある者は双極II型障害を併存していることが判明した。
(4-a) J-DOIT2-LTのデータによる糖尿病患者の受診中断要因の検討
 受診中断に関連する要因は、個人内要因と環境要因の2因子に分類することが可能で、高い内的整合性を有していることを明らかにした。
(4-b) 未治療者減少のためのマニュアル作成
 未治療者減少に関して実を挙げているわが国の自治体の事例を収集した。
 J-DOIT2の結果と、これまでの文献のシステマティックレビューにより、「糖尿病受診中断対策マニュアル」と「糖尿病受診中断対策包括ガイド」を作成し、公表した。

考察:登録された患者データのデータベースを活用し、また、上述の糖尿病診療マニュアル等として提供し、その広報、流布、検証につとめる。「糖尿病受診中断対策マニュアル」の広報に努める。
結論
上記のように、当初計画どおりに本年度の研究を遂行した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201315055Z