特定健診・保健指導における健診項目等の見直しに関する研究

文献情報

文献番号
201315052A
報告書区分
総括
研究課題名
特定健診・保健指導における健診項目等の見直しに関する研究
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
永井 良三(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 尾形 裕也(東京大学 政策ビジョン研究センター)
  • 磯  博康(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 津下 一代(公益財団法人愛知県健康づくり振興事業団 あいち健康の森健康科学総合センター)
  • 苅尾 七臣(自治医科大学 内科学講座循環器内科学)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学 医学部)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター 予防健診部/研究開発基盤センター予防医学)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部衛生学公衆衛生学)
  • 古井 祐司(東京大学 政策ビジョン研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、循環器疾患の発症リスクを軽減させる予防介入のあり方を最新のエビデンスや国際動向、技術動向を踏まえて検討する。
研究方法
研究を進めるうえで協力が必要な医療保険者、経済団体、関連学会、関連研究班の関係者に本研究の趣旨および概要を周知し、研究への参加・協力を得ることとした。また、本研究班では、「健診項目等の検討」、「施策実効性の検討」の課題に応じて、2つの分科会を設けた。 健診項目等の検討では、循環器疾患の発症リスク軽減の視点から、予防介入が可能であることや若年層のリスク評価なども考慮し、健診項目、対象、頻度などを検討する。施策実効性の検討では、健診受診率を集団単位で向上させる施策を検討する。「健診項目等の検討」WGでは、将来の健診において追加健診項目の候補となる検査指標の意義を検証する計画を作成した。
結果と考察
各研究分担者が関わるコホート研究で、今年度は尿酸とクレアチニン(eGFR)について検討した。対象地域は、全国の国保被保険者3万人および愛知県の企業健保被保険者 10万人である。この集団を対象に後ろ向き前向き研究の手法で、1)ソフトエンドポイント(メタボリックシンドローム等の発症をアウトカムとする)、または2)ハードエンドポイント(脳卒中、冠動脈疾患の発症)に対する尿酸等のリスクを検証した。各コホートでこの目的に沿ってデータベースの整備が行われた。クレアチニンによる慢性腎臓病(CKD)の有病率は、国保の男性で12~22%、女性で7~14%、企業健保の男性で4~5%、女性で2~4%であり、年齢構成が異なるため保険者種別で大きな差を認めた。一方、高尿酸血症(7.0mg/dl以上)の有病率は男性で19~22%、女性で0.6~2%であり、保険者間の差は小さく、男女間の差が明瞭であった。現在、CKDや高尿酸血症と各エンドポイントの関連を検証中だが、ハードエンドポイントに関する予備解析では、CKDは明らかに脳・心血管疾患のリスクを上昇させるが、高尿酸血症は交絡要因を調整すると明瞭なリスクの上昇を認めないコホートもあり、慎重な分析が必要と考える。次年度以降、隠れ内臓脂肪蓄積の有病率やそのリスク評価を行うため、インピーダンス法の内臓脂肪測定機を各コホートで導入する準備も実施した。特定健診の有効性評価では、がん検診とは異なり、項目とアウトカムが1:1で結びつかず、健診を構成する個々の危険因子への介入が有効であることが重要である。したがって、健診の設計にあたって、以下の視点を留意する。ア)脳・心血管疾患の発症可能性が高いハイリスク者(層)をスクリーニングする。イ)ハイリスク状態は危険因子のレベルや数で決まるが、複数の場合が多く、全危険因子の原因となり得るような共通の要因はない。ウ)当該項目を加えることで、①脳・心血管疾患の発症予測ができる、②その危険因子への介入の有効性が臨床試験で評価されている、③危険因子管理のアドヒアランス。「施策実効性の検討」WGでは、33の地域保険21万人のフィールドにおいて、H20-23年度の特定健診データの確保および名寄せを行った。そのうえで経年分析を実施した結果、単年度受診率と継続受診率の相関は高く、受診率が低い集団では被保険者が継続して受診しない構造が示された。今後、実施率向上施策を検討するには、市町村ごとに経年受診率を把握し、他市町村との比較のもと構造的な特徴を捉えることが不可欠になる。また、受診率が同レベルの集団相互で、継続受診者の健康状況の経年推移を分析したところ、継続受診率が高い集団の被保険者で健康状況の悪化率が17%程度低いことや、行動変容および健康行動の継続(健診の継続受診など)が健康維持・増進に寄与している可能性が示された。したがって、被保険者への意識づけを保健事業の基盤とすべきであり、次年度の健診受診を促す方策として、保険者団体(国保連合会)などが集約された健診データに基づき意識づけを行う仕組みを市町村(国保)に提供するスキームが考えられた。
結論
健診の評価に関してソフトエンドポイント(高血圧や糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病などの脳・心血管疾患の危険因子)とハードエンドポイント(脳・心血管疾患そのもの)を設定することで、それぞれの段階で予防介入の目的を明確にすることに加え、健診制度の時間軸に沿った有効性評価を可能とした。項目追加の検討に際しては、検査項目については脳・心血管疾患発症の予測能が向上する視点で評価し、生活習慣を把握する問診についてはソフトエンドポイントの予測能が向上する視点で評価することとした。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201315052Z