COPDに関する啓発と早期発見のための方策に関する研究

文献情報

文献番号
201315048A
報告書区分
総括
研究課題名
COPDに関する啓発と早期発見のための方策に関する研究
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
井上 博雅(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 福田 敬(国立保健医療科学院)
  • 清原 裕(九州大学大学院医学研究院)
  • 岩永 知秋(国立病院機構福岡病院)
  • 松元 幸一郎(九州大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することにより生じる肺の炎症性疾患である。COPDの有病率を検討した2000年の大規模疫学調査“NICE study”では40歳以上の10.9% に呼吸機能検査による気流閉塞が認められ、日本人のCOPD有病率は8.6%、患者数は530万人を推定された。高齢化が進むわが国では、COPD患者数がさらに増加するとともに、治療や管理に関わる医療費の増大が懸念される。
COPDの診断には呼吸機能検査が不可欠であるが、国民全員にスパイロメトリーを実施することは困難なため、簡易問診票によりスクリーニングを行い、COPDが疑われる場合に呼吸機能検査をすすめることが有用と考えられる。
従来のCOPDスクリーニング質問票は複雑であり普及するには問題点も多い。近年海外で開発されたCOPD-PS は、簡単で非常に分かりやすい質問票で、米国での研究ではcut-off値が設定され、簡便で有用なスクリーニングツールと報告されている。しかし、日本語版COPD-PSを用いた日本人cut-off値は不明であり、日本人のcut-off値を設定する必要がある。さらに、日本人を対象に新規のCOPDスクリーニング質問票を開発することも重要である。
以上を背景として、本研究では、COPDの実態の把握、簡便なCOPDスクリーニング質問票の開発とcut-off値の設定、さらにCOPDに関連した医療機関利用状況と医療費調査を行うことを目的とする。
研究方法
1.福岡県久山町住民を対象とした住民健診での呼吸機能検査結果にもとづいたCOPD有病率の推定と二次精密検診による正確な実態調査を、平成24年度までに二次精密医療機関を受診した住民の二次精密検診データに基づき行う。
2.久山町の住民健診受診者を対象とし、日本人における日本語COPD-PS質問票のcut-off値を設定する。本邦独自のCOPDスクリーニング質問票を開発する。COPDの早期発見のためのマーカー探索を行う。
3.平成23年度厚生労働省患者調査および社会医療診療行為別調査の集計を用いて、COPDの治療にかかる年間医療費を推計する。COPD増悪時の医療機関利用状況の実態を明らかにするため、COPD症例を登録し、増悪が身体活動性に及ぼす影響を観察するとともに、身体活動性と入院に至らない軽度の増悪頻度との関連を解析する。
結果と考察
1.久山町住民を対象とした住民健診で呼吸機能検査結果に基づき、平成24年度末までに二次精査を190名が受診した。そのうち174名の診療録を確認し、喘息16名、COPDが67名、気流閉塞変動の大きいCOPDは7名と診断判定した。これらの結果から中高年住民における喘息、COPD、気流閉塞変動の大きいCOPDの有病率は各々、2.0%, 8.4%, 0.9%でありCOPD有病率を9.3%と推計した。本研究の調査結果はCOPD有病率9.3%であり、高齢化の進行によりCOPDの有病率がさらに上昇していることを示唆しているものと考えることができる。
久山町住民で本研究の同意の得られた2357名の質問票COPD-PS日本語版に対する回答と呼吸機能検査データを解析した。日本語版COPD-PSのcut-off値を4点とすると感度67.1%、特異度72.9%となり最も鑑別に有用であった。新たなCOPDスクリーニング質問票の開発のためのワーキンググループを設置し、COPDスクリーニング質問票原案を作成した。COPD患者では呼気中一酸化窒素濃度が健常者と比較し有意に上昇すること、25-hydroxycholesterolレベルがCOPD気道における好中球炎症と関連することを報告した。
COPDの年間医療費推計値は入院で男性447.2億円、女性239.0億円、外来で男性521.2億円、女性285.0億円であった。受療による労働損失は男性149.5億円、女性38.7億円、受療日以外の労働損失は男性271.1億円、女性75.5億円であった。これら総費用の推計は2746.6億円であった。COPDに関連した医療機関利用状況と医療費調査の研究体制を整備した。
結論
久山町住民を対象とした二次精密検診の結果では、COPDの有病率は9.3%であった。質問票COPD-PS日本語版における日本人cut-off値設定は4点を選択した。また、独自の新COPDスクリーニング質問票の作成を開始した。最新の平成23年度厚生労働省患者調査データをもとにしたCOPD年間医療費は、医療費が1492.5億円、労働損失が534.8億円と算出された。
COPDスクリーニング質問票の普及は、COPDの早期発見と同時にCOPDの認知度を高める可能性があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201315048Z