高齢者での神経ペプチドの役割

文献情報

文献番号
199800224A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者での神経ペプチドの役割
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
満間 照典(愛知医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 矢内原昇(矢内原研究所)
  • 松永宗雄(弘前大学医学部)
  • 橋本浩三(高知医科大学医学部)
  • 永松正明(名古屋大学医学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成8(1996)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の生体機能調節や高齢者に伴う疾患の病態における神経ペプチドの役割を解明し、それら疾患治療への神経ペプチドの応用の可能性を追求することを目的とする。
研究方法
1.神経疾患を有さない例及び筋萎縮性側策硬化症(ALS)の剖検時に得られた組織中のglia cell line-derived neurotrophic factor receptor (GDNFR)の mRNAの発現をRT-PCR法で検討した。2.痴呆老人(D)、地域在住後期老年者(A)の血中CRH,cortisol, を測定した。3.人chromogranin(CgA)の測定法としての RIA法及び EIA法の開発を試みた。4.パーキンソン病モデルラットの線条体からのドーパミンの放出をmicrodialysis法で観察した。5.calcitonin gene-related peptide(CGRP), adrenomedullin(ADM)投与の人発汗活動への影響を検討した。
結果と考察
1.GDNFR-alpha-mRNAの発現は神経系や他の臓器でも認められた。神経疾患を有さない例とALSの脊髄での発現に差が見られず、高齢者でも良く保たれていた。これらの成績は神経成長因子のGDNFの臨床応用の可能性を示唆している。2.血中のCRHは D群でA群に比して有意に低値であったが、cortisolは 両群の間に差がなかった。この成績は痴呆ではCRH分泌が低下していること、加齢による視床下部ー下垂体ー副腎系の変化は人では少ないことを示している。3.人CgAに対する特異的な抗体を作成した。この抗体を用いてRIA法及びEIA法を確立した。この方法で測定した血中CgAは高齢者内分泌腫瘍で高値を示した。唾液中のCgAは精神神経的ストレスで上昇することを認めた。これらの成績はこの測定法がカテコールアミン分泌を評価する上で有用な方法であることを示している。4.パーキンソン病モデルラットの線条体からのドーパミン放出はセロトニンニューロンの破壊で低下することを認めた。この結果はドーパミンの放出にセロトニン系が関与していること示唆している。5.CGRP,ADMは単独では発汗活動に影響を及ぼさなかったが、methacholineによる発汗活動促進を両者は亢進することを認めた。このCGRP, ADMの作用は加齢で低下することを認めた。これらの成績は発汗活動はコリン作動性神経ばかりでなく、ペプチド作動性神経も関与していることを示している。
結論
以上の成績から、神経ペプチドが高齢者の生体機能や高齢者に伴う疾患の病態生理に関与しており、神経ペプチドのこれらの疾患治療への応用の可能性が示唆された。

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