未成年者、特に幼児、小・中学生の糖尿病等の生活習慣病予防のための総合検診のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201315034A
報告書区分
総括
研究課題名
未成年者、特に幼児、小・中学生の糖尿病等の生活習慣病予防のための総合検診のあり方に関する研究
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-014
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
吉永 正夫(国立病院機構鹿児島医療センター 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀米 仁志(筑波大学附属病院茨城県小児地域医療教育ステーション 茨城県立こども病院医療教育局)
  • 高橋 秀人(筑波大学医学医療系・生物統計学 筑波大学次世代医療研究開発・教育統合センター)
  • 長嶋 正實(あいち小児保健医療総合センター 小児循環器学)
  • 篠宮 正樹(医療法人社団西船内科・内科学(糖尿病学))
  • 宮崎 あゆみ(社会保険高岡病院小児科学)
  • 緒方 裕光(国立保健医療科学院、疫学・生物統計学・公衆衛生学)
  • 伊藤 善也(日本赤十字北海道看護大学臨床医学領域・小児科学)
  • 徳田 正邦(徳田こどもクリニック 小児科学)
  • 久保 俊英(国立病院機構岡山医療センター小児科成育医療推進室 小児科学)
  • 青木 真智子(青木内科循環器科小児科クリニック・小児科)
  • 立川 倶子(鹿児島県栄養士会 栄養学)
  • 郡山 暢之(国立病院機構鹿児島医療センター 糖尿病・内分泌内科)
  • 濱島 崇(あいち小児保健医療総合センター 内分泌代謝科)
  • 原 光彦(東京都立広尾病院 小児生活習慣病 小児循環器 小児スポーツ)
  • 坂元 恵子(鹿児島市中央保健センター)
  • 岩本 眞理(横浜市立大学附属病院・小児科学(小児循環器))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
15,091,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成24~26年度の3年間で幼児、小・中学生 (5歳~14歳) の各年齢300人、計3,000人を対象に包括的なデータ収集を行い、糖尿病を含めた生活習慣病予防を目的にした総合検診のあり方に関するエビデンスを蓄積する。最終年度に小学生300名を対象にエビデンスに基づいた介入試験を行う。これらのデータ及び前回のデータ (高校生1,306名分) から、生活習慣病の診断基準、総合検診を行うべき年齢及びあり方を決定し、糖尿病を含めた生活習慣病の一次・二次予防ガイドラインを作成する。市民公開講座の開催、研究者の所属機関、学会HP等を通じて成果の公開・普及を行う。
研究方法
全国各地で生活習慣病検診を行い、次のデータは参加者全員から収集する;(1)計測値(身長、体重、腹囲、血圧), (2)血液データ{一般生化学(ALT, 総-, HDL-, LDL-コレステロール, 尿酸)、糖代謝関連項目 (空腹時血糖, インスリン, HbA1c)、アディポカイン等 (レプチン、アディポネクチン、高感度CRP)}、(3)内臓脂肪量(オムロン社製, HDS-2000、生体インピーダンス法による直接測定)、(4)1週間の歩数、(5)出生時から現在までの縦断的身長/体重値、(6) 母親の妊娠中データ、(7)食習慣・生活習慣データ、(8)血管硬化度指標、(9)(平成25年度から)睡眠時間、TV視聴時間は実測値。最終年度に、日本で肥満頻度の増加が続いている小学生300名を対象に、エビデンスに基づいた介入試験を行う。本研究と前回の研究(H18-循環器等(生習)-一般-049、高校生1,306名のデータ)を組み合わせた大規模かつ連続的する包括的データから、エビデンスにもとづいた、かつ内臓脂肪量を考慮した生活習慣病の診断基準、総合検診を行うべき年齢及びあり方を決定し、糖尿病を含めた生活習慣病の一次・二次予防ガイドラインを作成する。
結果と考察
平成24、25年度で総計1,843名(男子907名、女子936名;幼児254名、小学生1,114名、中学生475名)が参加した。(1) 小児期・思春期の心血管危険因子の基準値作成に関する研究;メタボリックシンドロームの構成項目について幼児、小学1~2年生、3~4年生、5~6年生、中学生の平均値のtrendを分散分析で検討すると、腹囲、収縮期/拡張期血圧、中性脂肪、空腹時血糖は男女とも有意であった。他に、空腹時インスリン、HOMA-IR、HbA1c、ALT、尿酸、レプチン、アディポネクチン、高感度CRPは男女とも、女子ではHDL-コレステロールも有意であった。中学生で内臓脂肪量との関係をみると、男女ともインスリン、HOMA-IRと有意な相関を示していた。動脈硬化の指標である脈波伝搬速度は男女ともインスリン、HOMA-IR、HbA1c値と、男子においては空腹時血糖と強い相関を示した。小児期、特に健常小児集団のデータが皆無に近く、エンドポイントとしての生活習慣病を持つ小児が肥満以外には稀なため、適切な介入時期、介入項目の設定が困難である。本研究結果をみると、小学生は1~2年生、3~4年生、5~6年生に3区分し、男女別の検討が必要と考えられた。(2) 心血管危険因子に与える生活習慣の影響に関する研究;① 男子:小学校1~2年生は父および母のBMI両者が、小学校3年~6年は父のBMIのみが有意な関連を示していた。中学生になると、再び両親のBMIと強い関連を有していた。長いScreen timeは小学生全学年で何らかの心血管危険因子高値と有意な関連を有していた。小学生1~4年までは短い睡眠時間はインスリン抵抗性と有意な関係を示していた。中学生では体育系部活動への参加がほとんどすべての心血管危険因子を軽快させる独立した因子となっていた。② 女子:小学生、中学生ともに両親のBMI高値と心血管危険因子値高値が強い関連を示していた。小学3~4年生では短い睡眠時間は肥満関連指標、インスリン抵抗性と強い関連を示していた。小学生においては、短い運動時間、長いScreen timeは何らかの心血管危険因子値高値と有意な関係を示していた。
結論
幼児から中学生を対象として心血管危険因子値の基準値を設定する場合、年齢、性を考慮に入れた基準値設定が重要と考えられた。内臓脂肪量、脈波伝搬速度はインスリン抵抗性、慢性高血糖を評価可能な簡易な検査であり、小児においても生活習慣病検診に取り入れていい方法と考えられた。小児の心血管危険因子に与える本人、保護者の生活習慣の影響は、性、年齢により大きく変化していた。小児期の生活習慣病予防のための介入時には性、年齢を考慮したstrategyが大事であり、保護者への介入も必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201315034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,600,000円
(2)補助金確定額
16,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,832,130円
人件費・謝金 1,894,480円
旅費 1,331,195円
その他 5,034,164円
間接経費 1,509,000円
合計 16,600,969円

備考

備考
利息が969円

公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
-